令和8年6月からの患者側と医療機関側の経済的負担の見直し〜予約に基づく診療のキャンセル料、新型コロナウィスル治療薬等の扱いの見直し〜
令和8年度診療報酬改定が6月より施行される。この施行に合わせて、一般メディアでも取り上げられている。やはりよく目にするのは、患者の負担が上がるという見方。実質賃金の問題、社会保障の世代間格差など大きく扱われるテーマになっていることもあり、注目度は高いといえる。ただ、医療機関においても抗ウィルス剤(新型コロナウィルス治療薬に関するもの)の扱いが一部見直される。
参考
初診190円上げ、6月1日に診療報酬改定 予約キャンセル料を徴収可に(日本経済新聞)
とりわけ、話題になっているのが予約した診療のキャンセル料の徴収について。私も先日とある病院に訪問した際に、院内の掲示板に6月よりキャンセル料:3,300円が発生することが書かれた掲示物を目にした。
【お知らせ】医療政策ニュース解説ブログroute"hckn"および医療政策ニュースのつぶやき、医療政策ニュース解説ラジオの更新情報をBluesky、facebookでお知らせしています。よろしければ、フォローをお願いいたします。
予約診療に関するキャンセル料について。対象となる医療機関、消費税についてなど
今回のキャンセル料について、以下の点を抑えておく必要がある。
・選定療養「予約に基づく診察の実施(変更)報告書」の届出のある医療機関であること
・予約に基づく診療に対するキャンセルで、患者の都合であり、診療日の直前であること
参考
【解説】病院の予約キャンセル料…なぜ誤解が? 厚労省「無料予約では発生せず」【 #みんなのギモン 】(日テレNEWS)
その他、実務上で注意しておきたいこととして、以下のことが考えられる。
・患者にキャンセル料が発生することを事前に説明し、同意書に署名をもらうこと
・院内掲示やウェブサイトに掲示すること
・保険診療分と区別するためにキャンセル料の領収書を発行すること
また、キャンセル料については医療機関が独自に決めることになる。キャンセル料の消費税については基本的には発生しないと考える。事務負担が発生する場合はサービスの一環と考えられるために消費税が発生するが、事業主に逸失利益が発生することに対する損害賠償のような性格のものの場合は消費税は発生しない。今回のキャンセル料は後者の色合いが強いため、消費税は発生しないと個人的に考える。先に紹介した訪問先の病院には、その旨をお伝えし、3,000円としてもらった。
参考:No.6253 キャンセル料(国税庁)
注意しておきたい点としては、キャンセル料が発生するタイミングだろう。診療日の直前となっているが、具体的ではない。医療機関で事前に準備が必要な医薬品・機材やスタッフのスケジュール調整などが必要なケースであれば、理由とともに日数と時間など明確にしたキャンセルポリシーを準備しておく必要があるだろう。
なお、今回は予約診療のキャンセル料だけではなく、オンライン診療等のシステム利用料や院内でのWIFI利用料、多言語に対応する費用なども選定療養として徴収できることになる。患者の負担に関わることなので、丁寧な説明が必要になる。
新型コロナウィルス治療薬等の扱いの見直しを改めて確認
医療機関側でも負担が見直されるものがある。抗ウイルス剤(新型コロナウィルス感染症の効能又は効果を有するものに限る)に係る取扱いについて、令和8年5月31日をもって終了し、以降は包括対象となることになる。すなわち、地域包括医療病棟、地域包括ケア病棟、療養病棟などの入院料に薬剤料が包括される病棟において新型コロナウィルス治療薬は6月1日以降、包括評価されるということになる。その一方で、DPC対象病院においては「新型コロナウィルス感染症」のDPCコードが新設されることとなった。
おそらくDPC対象病院では、医療依存度が高い状態の患者が多くなると思われるため、点滴静注を使用するケースが多くなると考えられる。包括内検査・処置や人件費、薬剤の保管コスト、そして病床稼働率と入院の長期化のリスクも踏まえて考えると、患者の状況に合わせての選択が大前提だが、経口薬という選択肢も重要だ。
ところで令和8年度診療報酬改定では、電子的診療情報連携体制整備加算や在宅療養支援病院・在宅療養支援診療所、機能強化加算、腎代替療法診療体制充実加算においてBCPの策定が必須となったこともあり、薬剤や診療材料等の適正な備蓄と地域内での相互融通などの取組も必要となってきている。本年3月30日に厚生労働省保険局医療介護連携政策課より事務連絡「地域で協働して作成する推奨薬リスト(地域フォーミュラリ)について(周知)」が発出され、地域でフォーミュラリを策定を検討する場作りが求められている。自院だけではなく、地域全体にも目を向けた適正な対応と新型コロナウィルス感染症治療薬の備蓄、廃棄ロスを最小にするために古いものから使っていくなどのレギュレーションと保管コストのバランスも考え、BCPの定期的なチェックと訓連をしておきたい。
参考:医療機関でBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)を策定する
なお、新型コロナウィルスワクチンの接種率が低下していることが伝えられている。ワクチン接種をすることで発症・重症化を防ぐことができ、医療従事者の負担の軽減にもつながる。退院時に新型コロナウィルスワクチン以外のワクチンについても未接種の患者に対する案内と共に地域医療連携の中でワクチン接種勧奨をしていくことを共有し、地域内の医療・介護スタッフや救急隊員、ご家族の負担軽減に貢献したい。
新型コロナウィルス治療薬の扱いが見直される一方で、生物学的製剤・JAK阻害薬(いずれも免疫・アレルギー疾患の維持期で、他の治療薬に代替不能なもの)を使用する患者に対しては出来高算定できることになる。また、精神科の病棟では人工透析患者の受入れも出来高算定が可能となる見直しが行われている。入院対象となる患者の拡充となることから、連携体制について改めて検討をしたい。