令和8年度診療報酬改定の特徴の一つとして、BCP(Business Continuity Plan)の策定が様々な要件に設けられたことがあげられる。たとえば、入院の電子的診療情報連携体制加(診療録管理体制加算からBCPに関する記載を削除して、本加算に要件を移行)、機能強化加算および在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院、腎代替療法充実体制加算がそれだ。なお、薬局に関しては令和5年度から薬機法改正に伴い、すでに多くの薬局でBCPの策定が求められている状況になっている。








 BCPの策定にあたっては、災害拠点病院以外の医療機関のBCP策定指針等を参考にすることとなっていることから、サイバー攻撃を受けた際だけではなく、自然災害等発生時のBCPの策定も必要となることがわかる。

 BCPの策定について、私自身も数件かかわってきた。つたない私の経験だが、参考の一つにでもしていただければ幸いだ。


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そもそもBCPとは?

 BCPとは、災害発生後も事業を継続して行っていくための事業継続計画のこと。いわゆる防災マニュアルとは異なるもので、災害発生時に稼働し、早期復旧・速やかに医療を提供できるようにするものだ。基本的な考え方として、大きく3つのカテゴリで対応策を作っておく必要がある。自然災害(地震や台風など)発生時、パンデミック発生時、サイバー被害発生時の3つだ。医療機関の場合は策定にあたっておさえておきたいポイントもあるので、以下の作成ステップを踏みながら確認していこう。





①基本方針と管理・運営方針を策定する

 ポイントとしては、無理に文章化しないことだ。自院の院是をベースに、災害発生時に何を第一に考え、対応していくかを一文で示す。キャッチコピーのイメージでも構わない。3つほどあるとよい。地域住民のこと、職員のこと、地域医療のことをテーマにするなど。




 基本方針を作ったら、BCPを実行する際の災害対策本部を設置する条件や院長不在時の対応方針、災害対策本部の解散条件といった管理・運営方針を策定する。あわせて、平時における教育訓練やBCPのレビューについても整理しておくとよい。BCPのレビューについては、災害拠点病院以外の医療機関のBCP策定指針等にあるチェックリストを自院に合わせてアレンジするとよい。なお、一定の現金を準備しておくことも必要だと感じる。電子決済などは災害時には使えなくなることもある。







②リスクの評価

 想定される災害ごとに起こりうる事象、被害、事前に準備できることはないかを洗い出す。自治体が公表しているハザードマップなどを利用すると、具体的なリスクが思い浮かぶ。想定される被害については、「ヒト、モノ、カネ、情報」の4つの経営資源が、それぞれの災害でどのような影響を受けるかを考え、整理する とよい。例えば、「地震で薬品棚が倒壊するリスクは?」「停電で冷蔵保存の医薬品はどうなるか?」といった具体的な問いを立てて、「ヒト、モノ、カネ、情報」に分類し、整理していく。






③業務継続目標の設定

 災害発生時にどういった優先順位で対応していくかを明確にしておくことが必要だ。災害時には、限られた資源で全ての通常業務をこなすことは不可能だ。平時からの業務と災害時に発生する応急業務を洗い出し、継続すべき業務に優先順位をつけることが極めて重要といえる。



 ここで重要なのは、災害からの復旧目標も合わせて設定することだ。日中であれば、スタッフと患者の安全確保を最優先として、1時間以内を目安に対応できるようにするなど目標にする。大まかでもかまわないので、発災からの復旧時間の目安を作り、どうなったら復旧と判断するかも示しておく。



④対策を検討する

 各優先業務を目標時間内に再開するため、「何を」「どのように」行うかを具体的にする。③で設定した項目ごとに対策をまとめていく。




 また、自院だけではなく、他の医療機関・薬局・医療専門商社(医薬品卸、医療機器卸、ICTベンダーなど)とも連携した対応策を入れておくことをおすすめしたい。専門性の高い領域(人工透析やⅠ型糖尿病など)などでは、自院だけではなく同一地域内で適正在庫・流通を事前に考えておくことが必要だといえる。そこで、年に1回以上の全体訓練など年初に決めておきたい。





⑤付録つくり

 例えば、連絡先リストと報告内容を事前にまとめておく、災害発生時でも冷静に対応できるようにアクションカードを作って、院内に設置しておくなど。






 以上の5つのステップをそのまま章立てして、まとめることでBCPは策定できる。無理に文書化せず、箇条書きで、図表などを利用することで構わない。




 大事なことは、まずは第一版となるBCPを作ることだ。まずは作って、アップデートしていけばよい。機能強化加算等ではBCPの策定は令和9年5月末まで経過措置期間が設定されている。災害はいつ起きるかわからないものなので、まずは策定し、経過措置期間の終了までに第二版を作ることを目標にしたい。