令和8年3月27日、熊本大学病院にて前立腺がんの新たな治療法であるPSMA標的ラジオセラノスティクスが実施されたことが報道された。


参照:前立腺がん 最新の放射線治療「PSMA標的ラジオセラノスティクス」を熊本県内で初実施 熊本大学病院RKK熊本放送


 放射性医薬品を体内に投与しておこなう治療法で、去勢抵抗性前立腺がんに対して昨年11月に保険適用となっている。これまでも本ブログでご紹介してきた、特別措置病室などの環境整備が必要になる治療法だ。

 令和8年度診療報酬改定では、ルテチウムオキソドトレオチドを使用した入院のDPCコードが小幅に見直されているとともに、放射性同位元素内用療法管理料に去勢抵抗性前立腺がんに対するものが追加されるなど、これから訪れる核医学治療の時代に向けた環境整備が着々と進められている。改めて、令和8年度診療報酬改定における見直しのポイントと簡易なシミュレーション結果を紹介しよう。


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令和8年度診療報酬改定での変更点を確認する

 令和8年度診療報酬改定では、前回改定に続いて3つの疾病のにおいて包括評価となるDPCコードが引き続き設定されている。点数に概ね高くなっているが、大きな変化はない。




 放射線治療病室及び特別措置病床室等での管理を評価する放射線治療病室管理加算については前回改定からの変更点はなく、点数(6,370点)も据え置きとなっている。

 一方で、放射性同位元素内用療法管理料については、先述の通り去勢抵抗性前立腺がんに対する新たな区分が新設された。PSMA標的ラジオセラノスティクスが新たに保険適用となったことに伴うものだ。なお、PSMA標的ラジオセラノスティクスはDPC対象病院では光がy区薬剤判定となり出来高算定となる。おそらく、次回改定以降は包括評価となる見通しだ。また、放射線治療病室管理加算と放射性同位元素内用療法管理料はDPC対象病院では出来高算定となる。



 ざっくりとではあるが、令和8年度診療報酬改定で見直されたDPCコードでシミュレーションをしてみる。なお、特別措置病室を利用することを前提としており、導入に当たって必要な物品(2,220,000円)を新規に購入し、費用回収の目安を算出している。必要な物品等の情報は以下の参照にある過去の記事を参考にしていただきたい。


参照:特別措置病室の理解とマネジメントを考える(2025年 改訂版)



 特別措置病室を新たに設置・運用することから、放射線治療病室管理加算と放射性同位元素内用療法管理料で物品購入費を回収することを考えると、一泊二日入院で1人の患者が4回入院するとして、4名の患者が確保できれば物品購入費は回収できると考えられる。ただし、医療機関係数によって差があることには注意が必要だ。

 さらに、特別措置病室を利用した病棟とそうでない病棟を、病床稼働率78%を前提にして1週間単位での収支差を確認してみると以下のようになる。




 特別措置病室は、一般病床としての運用ができる点にある。また、放射性医薬品を利用したケアにおいては、看護師等による頻回な入室もそれほど必要ではなく、スタッフも負担がそれほど大きくなるものではない。ただし、排泄物の処理・管理、退室後の清掃等については一定の負担とコストも発生する。当面は外部委託事業者にお願いをしながら、ノウハウなどを学び、スタッフで対応できるようにしていくことも一つの考え方だ。



PSMA標的ラジオセラノスティクスによる特別措置病室の運用。検査については、拠点的機能を有する病院との連携を。

 先述の通り、PSMA標的ラジオセラノスティクスはDPC対象病院ではおそらく2年間は出来高算定となる。ざっくりとしたシミュレーションを以下に示す。



 PSMA標的ラジオセラノスティクスによる入院は6回程度となる。一泊二日入院を基本に考えると、物品購入費を回収するには3人の受け入れが必要なる。二泊三日の場合は、2人の受け入れが必要になる。
 次いで、特別措置病室を利用した主な場合は以下になる。








 1週間のうちに、一泊二日入院を2人受け入れるという運用もでき、採算は確保できる計算だ。

 しかしながら、検査についてはここでのシミュレーションには含まれていない。新たにPET/CT検査等の導入などを考えると、かなり高額な投資と保守管理費用が必要となり、その回収は複数年にも渡る。ゆえに、検査等については拠点的機能を有する病院や画像検査センターなどの専門医療機関との連携が重要になる。例えば、令和8年度診療報酬改定では新設される急性期病院Aの施設基準には画像診断・検査の24時間体制が盛り込まれている。




 本格的に始まろうとする核医学治療時代においても、競争ではなく、役割分担と連携による地域医療提供体制つくりが必要になってくる。