全国医療情報プラットフォームと地域医療情報連携ネットワークの目的と役割を整理・理解して、共存する
「全国医療情報プラットフォームができるのであれば、地域医療情報連携ネットワークシステムはもういらなくなりますよね?」
いろんな地域でこうした話がある。結論から申し上げると、それは間違いだといえる。そぞれぞれの役割から相互の関係性を例えるなら、全国医療情報プラットフォームとは高速道路、地域医療情報連携ネットワークは生活道路といえ、相互補完・共存する関係にあるものと言える。
参照:地域医療情報連携NWと全国医療情報プラットフォームの関係性と併存の必要性
それぞれの役割を整理すると以下のようになる。
全国医療情報プラットフォームは国が主導する全国統一のフォーマットによる高速情報基盤。地域医療情報連携ネットワークは地域コミュニティが主導する地域の生活基盤の一つといえる。
標準化された医療情報は全国医療情報プラットフォームから、地域の実情を反映したうえで患者の個別具体的な情報は地域医療情報連携ネットワークから、ということになる。
もう少し深堀してそれぞれの役割を考えると以下のような機能・違いがある。
全国医療情報プラットフォーム
・医療機関や行政等におけるサービスの効率化と事務作業の負担軽減
・マイナポータルを利用した患者本人の健康管理支援
・医療データの二次利用
・電子カルテを含む医療情報システムの標準化
地域医療情報連携ネットワーク
・円滑な患者紹介と逆紹介
・多職種連携の推進
・地域の医療資源の有効活用
・場所を選ばない診療の継続性の確保
診療報酬で確認をすると、全国医療情報プラットフォームに関連するのは医療DX推進体制整備加算となる。その文字からわかるように、今は環境作りの段階であり、電子カルテ情報共有サービスなどの遅れが生じている状況だ。
参照:標準型電子カルテ、2026年度中の完成を目指す。電子処方箋については、「電子カルテ を整備するすべての医療機関への導入を目指す」ことに
また、「かかりつけ医機能報告制度」においても5年後の見直しに合わせて、全国医療情報プラットフォームへの参画が要件に加えられる可能性が高い。こうしたことからわかるように、全国医療情報プラットフォームは、電話網のようなユニバーサルサービスだと言える。電話料金の明細書を見るとわかるが、一律にユニバーサルサービス料として1電話番号あたり3.3円徴収されているが、医療DX推進体制整備加算は医療版ユニバーサルサービス料とも言えなくはない。
地域医療情報連携ネットワークについてみると、令和6年度診療報酬改定において実際に地域医療情報連携ネットワークを利用して診療等を行うことで評価されることとなった。全国一律のユニバーサルサービスと異なるローカルサービスやニッチサービスといえる。そのため、実際に利用した場合に発生する診療報酬となっているのだと言える。
しかしながら、地域医療情報連携ネットワークの安定した運営には事務局機能が必要であり、ランニングコストも発生するため、住民サービスとして自治体等による支援は必要だ。その前提として、住民の参加と医療機関との積極的な利用を促す取り組みが必要となる。いくら必要とはいえ、積極的に使われていないものへの支援は必然的に削られていく。理解を得るためにも、利用状況の改善に努めることも重要な視点と言える。
全国医療情報プラットフォームと地域医療情報連携ネットワークはそれぞれ目的が異なるもので、相互補完・共存していくものだと現時点では言える。地域医療情報連携ネットワークは住民にとって身近で重要なインフラといえるが、利用実績が少なければ、インフラとは言い切れない。地域の貴重なインフラとするためにも、住民の参加と医療機関や介護事業者による利用実績を高め、自治体等からの理解を得ていくことが必要だ。