令和7年2月20日、「『薬局における疾患別対応マニュアル ~患者支援の更なる充実に向けて~』及び『薬剤使用期間中の患者フォローアップ ~適正な薬物治療共同管理計画に向けたフォローを実施するために~』の公表について」と題された通知が発出され、厚生労働省のホームページにおいて「薬局における疾患別対応マニュアル ~患者支援の更なる充実に向けて~」というページで服薬フォローに関する手引きが公表された。

 服薬フォローについては、薬機法や薬剤師法において服薬フォローが求められるようになったものの、その方法や対象患者の選定等については薬剤師の判断に任されていたところ。


 今回公表された手引きでは、服薬フォローの基本的な考え方や対象患者の選定・方法、フォローアップについても記載がある。また、ポイントとしては医療計画における5疾病に対応した個別のマニュアルも整備されている点だろう。地域医療構想や医療計画において、薬局薬剤師が今後本格に役割を発揮していくための重要な指針となる。


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手引きの主な構成

 手引きの名称は「薬剤使用期間中の患者フォローアップ ~適正な薬物治療共同管理計画に向けたフォローを実施するために~」というもの。「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き」(第1.2版:日本薬剤師会)を基に、厚生労働科学研究費補助金「薬剤師の職能のための薬学的知見に基づく継続的な指導等の方策についての調査研究」(令和2~4年度)(研究代表者:益山光一教授)成果を踏まえたものとのことで、処方箋に基づく調剤により薬剤の交付を受けた患者に対して、次回来局時までのフォローアップに関する考え方を中心に解説されている。

 この手引きでは、薬剤使用期間中の患者フォローアップとは、患者の来局時だけではなく、調剤した薬剤の使用期間中に適切な形で薬剤の使用状況、併用薬(一般用医薬品等を含む)、患者の状態や生活環境等を把握するとともに、薬学的知見に基づく分析・評価から必要な対応を実施することにより、薬剤の使用期間中を通じて、患者が安心できる最適な薬物療法を提供することを目的とする薬剤師の行動を指している。 継続的な薬学管理を行うための手段の一つということだ。



 服薬フォローの対象となる患者の選定、患者に合わせた服薬フォローの方法の選定、フォローアップと評価について、具体的に示されている。




 服薬フォローに関する記録(調剤録)についても記載がある。記載にあたっては、的確かつ経時的に整然と記録することは必須であること。またSOAP 形式(POS)だと記載内容が全体として長くなったり、SOAP にこだわるあまり、記録に残しておくべき要点がかえってわかりにくくなったりすることがあるので、必ずしもSOAP形式にこだわることなく、記録しておくべき要点が何かを意識することが大事であるともある。1人の患者には1人のかかりつけ薬剤師が一貫して対応することが理想であるものの、複数の薬剤師が携わる場合があることや医師等への情報提供も考慮して「簡潔に要点を記録する」「記録する内容にメリハリをつけて重要な事項を浮き彫りにする」という工夫をした記録にすべきとも記載があり、他者に見せること、同業者以外に伝わりやすい内容とするための注意が必要であるとされている。連携を拡大し、地域医療構想や医療計画で薬局薬剤師のプレゼンスを高めていくためにも、薬剤師一人ひとりから調剤録のわかりやすさのレベルを高めていくことは重要だ。

医療用医薬品以外の服薬フォローについても

 手引きでは、薬局で処方箋医薬品以外の医療用医薬品、薬局製造販売医薬品、要指導医薬品、一般用医薬品(以下、一般用医薬品等)を販売する場合の販売後フォローアップの考え方についても記されている。基本的には、処方箋に基づく調剤の場合と同様と考えた対応を求めている。すなわち、使用者の背景情報や医薬品・併用薬等から、薬学的知見に基づき総合的に販売後フォローアップを判断することということだ。

 市販類似品に関しては、選定療養の利用も選択肢の一つとした患者自己負担割合の引上げも具体的に検討に入ることが考えられる。薬局においても、一般医薬品や栄養剤を含めた対応が必要になってくるだろう。


 地域医療構想の進展で、病床は減少し、患者の療養する場としての在宅・施設における環境整備が急がれる。今回の手引きの作成・公表は、新たな地域医療構想における薬局薬剤師に求める必要要件のようにも思える。