令和7年1月31日、第3回 標準型電子カルテ検討ワーキンググループが開催され、本年3月からモデル事業が開始されること、提供される標準型電子カルテα版の概要について公表されている。3月からのモデル事業は電子カルテ情報共有サービスのモデル事業の地域の電子カルテ未導入の無床診療所から開始し、夏ごろからのモデル事業第二弾ではさらに対象を拡大していく予定となる。
参照:電子カルテ情報共有サービスに関する導入補助金、そしてモデル事業を年明けから開始へ
なお、第一弾で提供される標準型電子カルテα版は紙カルテで運用する医師の負担を軽減するために、従来の業務運用ルールから大きな変更がないように、紙カルテと併用するパターンのものを、第二弾では一般的な電子カルテのパターンの提供が開始される予定だ。
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標準型電子カルテの今後の予定、対象医療機関は?
標準型電子カルテは令和8年度からの本格運用を目指すべく、令和7年3月から紙カルテ併用パターンのα版を、令和7年の夏頃からは一般的な電子カルテパターンのα版の提供を開始し、モデル事業を通じて得られた情報を基に、本格版へと仕上げる。なお、α版では無償診療所を対象としているが、本格版では有床診療所・200床未満病院も対象範囲に加える予定だ。
標準型電子カルテα版の機能を確認する
α版は電子カルテ未導入の無床診療所を対象とするため、従来の紙カルテをベースにした運用からの業務の見直しは医師にとっては大きな負担となり、患者の診療にも影響を与えかねない。そこで、医師の負担軽減となるように紙カルテによる運用と併用し利用するパターンが用意され、第一弾のモデル事業から提供される。
なお、紙カルテと電子カルテの併用で気になるのがカルテ原本の取り扱いについてだが、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインを遵守していることで検査記録等を紙カルテに印刷して添付する必要はない。
ところで、標準型電子カルテは次の3つの目的で構築を目指すこととなっている。
① 「切れ目なくより質の高い医療等の効率的な提供」を実現するため、電子カルテ情報共有サービスを始めとした医療DXのシステム群(全国医療情報プラットフォーム)につながり、情報の共有が可能な電子カルテの構築を目指す
② あわせて、「医療機関等の業務効率化」を実現するため、民間サービス(システム)との組み合わせが可能」
医療DX(オンライン資格確認システム・電子カルテ情報共有サービス・電子処方箋)とつながることが主たる目的となっている必要最低限の機能であり、民間事業者のサービスとAPIによる連携(様々なオプション機能の利用)で機能の拡張をしていく、というもの。そのため、クラウドベースになる。
電子カルテには様々な職種がログインすることになるため、ログイン認証の仕組みなども気になるところ。α版では、HPKIカードによる認証は想定されておらず、Gビズのような二段階認証(ID・パスワードでのログイン後、スマホにインストールされた認証で承認)となる。なお、今後検討・設定されるリスクチェックに該当する場合(医師や訪問看護師など?)は二段階認証は不要となる予定となっている。こうした面でも、利用者の負担軽減を図れるようにしている。なお、電子処方箋等の利用ではHPKIカードは必要になることに変わりはない。
医療DXについては、2030年をゴールと設定し、病院情報システムをオンプレ型からクラウド型へと完全移行することを目指していく。クラウド型にするということは、共同利用ともいえ、システム費用の低減やスタッフによる対応不可の軽減につながる。
すでに電子カルテが導入されている医療機関、とりわけ400床以上の大規模病院においても、今後クラウド化・共同利用を前提としたシステムへと対応が求められてくることになることを理解し、既存の導入医療機関においても、連携・共同利用の観点から、標準型電子カルテの動向には注目をしておきたい。