令和6年7月12日、厚生労働省にて第109回 社会保障審議会医療部会が開催され、医療DXの推進に関する議論の中で、電子カルテ情報共有サービスに関する今後の予定について明らかにされた。
なお、医療DXの推進に対する工程表の中で電子カルテ情報共有サービスを含む「電子カルテ情報の標準化等」については、以下のように記載されている。
・2023年度に透析情報及びアレルギーの原因となる物質のコード情報について、2024年度に蘇生処置等の関連情報や歯科・看護等の領域における関連情報について、共有を目指し標準規格化。2024年度中に、特に救急時に有用な情報等の拡充を進めるとともに、救急時に医療機関において患者の必要な医療情報が速やかに閲覧できる仕組みを整備。薬局との情報共有のため、必要な標準規格への対応等を検討
・ 標準型電子カルテについて、2023年度に必要な要件定義等に関する調査研究を行い、2024年度中に開発に着手。電子カルテ未導入の医療機関を含め、電子カルテ情報の共有のために必要な支援策の検討
・遅くとも2030年には、概ねすべての医療機関において、必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指す
〇電子カルテ情報の標準化に関する今後の予定
電子カルテ情報共有サービスについては、以前紹介したように令和7年1月よりモデル事業が開始される(参照:電子カルテ情報共有サービスに関する導入補助金、そしてモデル事業を年明けから開始へ)。そのモデル事業に合わせて現在開発中の標準型電子カルテのα版(無床診療所向け)のモデル事業も併せて令和7年3月より開始される。なお、標準型電子カルテの本格稼働は令和8年度の予定で、無床診療所だけではなく、中小規模病院も対象となる。
導入されている電子カルテ等の病院情報システムのリプレースは一般的に7年間周期といわれている。今回の標準化に向けた取組はこうしたリプレースのタイミングに合わせることが必要になってくるが、2030年までの100%導入を達成するためには、電子カルテ情報共有サービス部分の先行導入ができるような施策も求められることになる。
〇標準型電子カルテの概要と今後の支援策について
電子カルテ情報共有サービスの導入にあたっては、当然ながら電子カルテが必要になる。また、すべてがつながるためにはクラウド上での情報連携が必要になる。そこで、電子カルテが導入されていない施設への支援とすでに電子カルテを導入しているものの標準規格への対応がなされていない施設への支援が必要になる。
前者の電子カルテ未導入施設に対しては、標準型電子カルテでの対応・支援となる。
電子カルテ導入済み施設の標準規格への対応については、病院の場合は医療情報化支援基金(150億円)の利用、診療所の場合はIT導入補助金の利用で支援となる。オンプレミスによる電子カルテ導入施設に対してはクラウド型への移行を促す。なお、医療情報化支援基金(150億円)については、近々申込方法について案内が出る予定とのことだ。
人口減少社会に突入する2030年までの100%導入に向けて、急速に環境整備が進められていく。医療機関個別の事情ではなく、国全体の事情であることを理解して、取り組む意識が必要だ。すべてが対応し、つながることでDXの本来の機能が発揮される。