令和6年度診療報酬改定がいよいよ実施されたところ。これから、実際の取組状況であったり、運用してみて初めて分かる課題なども明らかになってくる。今回の診療報酬改定を改めて考えると、賃上げ・負担軽減・DXの基盤整備といった具合に医療従事者にとってやさしさを感じる内容であると感じる一方で、経営管理者にとっては投資や社会保険関連の事業主負担、そして診療報酬点数や要件の見直しなどやや厳しくも感じられる内容となった。
ここで改めて昨年12月に公表されている「改革工程表2023」を確認してみると、経営者層に対しては「病院長等に対する労務管理に関するグループワークを含むマネジメント研修の受講者数【2024年度から2026年度の期間に延べ3,000人】 」といったKPIが設定されていることがわかる。
次回の診療報酬改定では、経営管理する側に対しての働き方改革を支援する労務管理に対する学びや姿勢が問われる内容となることが考えられ、経営者自身だけではなく、幹部候補も含めて研修への参加など今のうちから積極的に行っておきたい。
また、ベースアップ評価料の今後についても考えてみたい。おそらく、次回改定以降も継続されると個人的には感じている。その理由としては、介護報酬における処遇改善加算が続いていることだ。ただ、注意しておきたいのは処遇改善加算は徐々にアップデートをしてきていること、キャリアパス要件が設定されていることだ。今後、ベースアップ評価料においても、キャリアパスやキャリア開発に関する要件が設定されていることが考えられる。
昨今の診療報酬では、勤務医の負担軽減の一環としてのチーム医療の評価が拡充し、今後も増えていくことが考えられる。そうしたチーム医療の評価をよく見ると、一定の経験年数や特定の領域の研修を修了すること、資格・認定等があることなど、チーム医療のメンバーに「質の保証」が求められるケースが増えてきている。こうした学びが診療報酬にも影響し、医療機関の収入も左右する。経営管理者層としては、学びの機会の提供はコストや従業員サービスではなく、いづれ診療報酬としてリターンのある投資と考えることが必要だ。学びの補助や環境作りを前に出した採用活動などは中長期的に経営を維持していく上では大切になってくる。教材の購入費、試験前の柔軟な勤務体制、研修修了後の配置に関する相談など、他の職員との大きな差が出ないようになるべく給与等ではなく手当や補助で支援をするようにすることなど検討しておきたい。例えば、資格取得を目指す職員の学びのために他の職員が自身の勤務中の隙間時間を利用してサポートに入ることなどに対して、何らかの評価を与えるなど、それぞれの事情や生き方・働き方を尊重して「差」が大きくつかない配慮が経営管理者層には求められる。
しかしながら、最近よく話題にあがるのが地方都市における看護学校の募集定員割れの問題だ。人口減少・看護大学という選択肢などにその理由が求められる。そこで、そもそも看護師になりたい学生を増やし、看護学校の受験対策、看護実習や試験のサポートまでを支援する自治体や医療機関が出てきている。看護師になる前段階からのアプローチだ。
参考:福祉・医療スキルアップ移住推進事業(大分県企画振興部)
介護処遇改善のこれまでの経緯などから、ベースアップ評価料の今後の展望や経営管理者層に期待されることなどを改めて整理してみたが、もう一つ大事だと感じることとして、学びたい本人が周囲から理解と協力を得られる日ごろの行いが大事だ、ということを言付け加えておきたい。負担軽減・働き方改革は、協力なくして実現しえない。