勤務医の働き方改革に関する評価の整備方針が示される。病院薬剤師による転院先等との連携を評価。小児・周産期医療の要件緩和、療養病棟での医療的ケア児の評価を医療区分2・3へ 等
令和7年11月19日、第628回 中央社会保険医療協議会 総会が開催されている。今回は、特定機能病院の評価と勤務医の働き方改革、病院薬剤師、小児・周産期医療、感染症対策・災害医療についての議論となっている。
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医療政策ニュースのつぶやき
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特定機能病院の入院基本料、新たな区分に応じた見直しへ
「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」において、特定機能病院の指定要件、そして区分が見直される方針が明らかになっている。
従来は、看護配置や病床種によって評価の違いがあったが、今後は、新たな区分に応じた評価となる見通しだ。大学病院の経営危機や医師の確保などの課題解決につながる、機能に応じた評価になることが期待される。
勤務医の働き方改革に資する評価の動向は?
特定機能病院も関連してくる勤務医の働き方改革に関し、厚生労働省から「処置及び手術の休日・時間外・深夜加算1について、チーム制では、診療があった緊急呼び出し当番翌日を休日とすることとされているものの、当該緊急呼び出し当番における診療の有無が予見できないことや、令和6年度以降、医師の働き方改革により、原則、勤務間インターバルが確保されていること等を踏まえ、チーム制において緊急呼び出し当番翌日を休日とすることの必要性をどのように考えるか」といった議論が要請されている。
この点については、勤務医の働き方改革において勤務間インターバルを設けることとなっていることから、義務となっているA水準以外の病院では要件を緩和する方向で議論が進められていきそうだ。
なお、勤務医の負担軽減となる「地域医療体制確保加算」については、休日・時間外労働時間の平均値と最大値が減少傾向にあることから、年度毎の時間外・休日労働時間の上限基準の漸減について検討が進められていくものと考えられる。
勤務医の働き方改革の観点からは、医師事務作業補助者による事務作業等の間接業務の支援は非常に効果が高い。さらに、AIサービスが普及し、医師事務作業補助者の生産性も大きく向上している。そうした実態から、厚生労働省からは「生成AIを活用した文書作成補助システム等が、作業効率の向上や労働時間の削減効果を示していることを踏まえ、生成AI等のICTを活用して医師事務業務の省力化の取組を進めるにあたり、その評価についてどのように考えるか」といった議論が要請されている。
加算そのものの引上げや上位区分の設定、AIサービスの導入による医師事務作業補助者の配置基準を緩和することなど検討されそうだ。
病院薬剤師の評価の拡充と転院先へのポリファーマシー対策の継続を評価へ
医師の確保も課題だが、病院薬剤師の確保もまた大きな課題だ。薬剤師を養成する学部のない都道府県もあり、苦戦を強いられている病院は多い。令和6年度診療報酬改定では、病棟薬剤業務実施加算に対する加算として薬剤業務向上加算が新設され、薬剤師の採用に効果があったことが明らかにされた。
しかしながら、要件は厳しく、届出は特定機能病院がほとんどだ。そこで、要件を緩和し、算定できる病院を拡充する方針で検討されることとなりそうだ。
また、病院薬剤師に関して厚生労働省からは「病院薬剤師による施設間の薬剤情報連携について、診療報酬上の評価をどのように考えるか」といった議論がの要請があった。
現行では、退院時薬剤情報連携加算など薬局との連携を評価する項目はあるが、転院先との連携に関する評価はない。また、包括期入院の病棟では評価は包括されている。
ポリファーマシー対策の効果を転院先でも継続できるように、医療機関間での評価をすること、包括されている点については包括外とすることなど議論されることとなるだろう。
小児・周産期領域について、少子化による実績の見直しと集約化、現状のルールにある不具合の解消を
出生数・出生率の減少傾向を背景に、周産期医療に関する診療報酬に課せられた実績要件が軒並み厳しくなっている現状が明らかにされた。例えば、新生児特定集中治療室管理料(NICU)における出生体重1,000㎏未満児・2,500㎏未満児gは減少傾向にある。
こうした現状を踏まえ、厚生労働省からは「周産期医療体制を適切に維持する観点から、都道府県により総合/地域周産期母子医療センターとして整備されている医療機関を対象に、新生児特定集中治療室管理料等の低出生体重児入院数に関する実績要件を緩和することについてどのように考えるか」という議論が求められ、前向き(要件を緩和する)に検討が進んでいくこととなりそうだ。
ところで、この新生児特定集中治療室管理料の評価についてだが、前回改定では医師の負担軽減の観点から、宿日直医の配置でも算定可能な区分が設定され、実績が多くなっている。その一方で、母体・胎児集中治療室管理料(MFICU)については、前回改定で「 宿日直でない専任の医師が常時治療室内に勤務している」もしくは「 産科医師(宿日直可)が常時医療機関内に2名勤務。1名は治療室専任」のいづれかを満たすことが求められるようになった。その影響なのか、届出が減少し、地域差が生じている。
そこで厚生労働省からは専任医師の配置要件について「「周産期医療の体制構築に係る指針」の「MFICUに求められる事項」に即して見直すこと」を議論することを要請している。緩和に向けた議論が進んでいくことが期待される。なお、算定対象疾患に分娩時異常出血、産科危機的出血、妊産婦の呼吸循環不全を伴うものを加えるとともに、従来の合併症妊娠に精神疾患疾患を有する妊産婦の追加が行われる見通しとなった。
その他、増加傾向にある産科混合病棟化について安心してお産ができるように混合病棟内に参加の特定区域を設け、助産師を配置するといった対応が求めされることとなりそうだ。
医療的ケア児、小児成人期移行期医療に関する見直し
医療技術の進歩委に伴い、救える命が増える一方で、医療的処置などが求められる医療的ケア児も増えている。そうした医療的ケア児が療養病棟にも一定数入院している。 なお、医療区分1が多くなっている。
厚生労働省からは医療区分2・3として評価することについて議論が求められている。
また小児成人期移行期医療に関して、小児科療養指導料を算定していた患者が、成人期へ移行となり小児科以外の医療機関に紹介された場合、その患者が難病外来指導管理料の算定対象でない限り、紹介先医療機関においては同様の管理料を算定することができない状況にあることが課題となっている。そこで、一定の期間、紹介先医療機関においても同様の管理料を算定できることについての議論が求められている。
その他、小児領域では高額な検査(造血器腫瘍又は類縁疾患ゲノムプロファイリング検査)・薬剤(ニルセビマブ)を包括外にすることなどが検討されていく予定だ。
感染対策向上加算1、微生物学的検査室の有無で評価に差を?
感染対策に関する議論では、「マクロライド系等の14日以上の処方を14日分とみなして集計することとなった。当該サーベイランスの評価方法の変更を踏まえ、抗菌薬適正使用体制加算における抗菌薬の使用状況のサーベイランスの評価についても、同様に、14日以上処方を14日とみなして集計する」ことに関する議論の他、感染対策向上加算1においては院内に微生物学的検査室を有することに関する評価の可能性について議論が求められている。
院内に微生物学的検査室があることで薬剤耐性菌の検出割合が低いことがわかっているが、実際に微生物学的検査室を有しているのは全体の60%。感染対策向上加算のさらなる上位区分の設定や加算での評価が検討されるだろう。
また、結果病棟に関する議論も行われている。患者数は減少しているものの、必要とされる病床であるが、病床稼働率を考えると、先の産科のように混合病棟化をしていく傾向にあり、診療報酬上のルールも設定されている。しかしながら、重症度、医療・看護必要度における重症者割合と平均在院日数要件を満たしにくくなるデメリットがある。そこで、結果病床に関しては要件を緩和する議論となりそうだ。
その他、CDI感染症及びESBL産生腸内細菌目細菌感染症を特定感染症入院医療管理加算及び特定感染症患者療養環境特別加算の対象疾患に加えることとなりそうだ。
医療安全対策、「医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会」との整合性を
「医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会」での議論が進められ、報告書案が示されていることから、令和8年度診療報酬改定にも反映していくことになる。
参照:医療安全管理者の配置義務化を検討。医療安全地域連携加算を促進するネットワーク構築について議論される。
厚生労働省からは「医療安全管理委員会へ報告すべき重大事象の明確化、医療安全管理者の要件や担務、医療事故の判断に携わる者の研修受講、医療機関間の連携促進等、医療安全対策上必要である事項が整理されたこと等を踏まえ、患者への安心安全な医療の提供を更に推進する観点から、医療安全対策加算の要件を見直すこと」についての議論が求められている。なお、医療安全管理者は有資格者に限らないとされている。今回の報告書を受け、研修で学ぶべきことや院内での情報収集の取組などを医療安全対策加算に盛り込んでいくことが考えられそうだ。
なお、医療安全を更に推進する観点から、検体検査管理加算の施設基準において、パニック値の項目と閾値の設定、パニック値の報告及びパニック値への対応等を、満たすことが望ましい要件として設定することについても今後議論が進められる。
その他、今回の中医協総会では以下についても議論された。
・「人事院規則で定める地域」の見直しを踏まえ、地域加算における地域区分を見直す方向で今後議論を進めていく。
・災害時の施設基準の緩和について、個別の検討を待たずに当面適用する一定のルール(例えば、対象となる災害の規模、対象となる保険医療機関、対象となる期間)を定め、事前に周知するとともに、自動的に適用することについて今後議論をすすめていく。



















