令和7年5月1日、第194回社会保障審議会医療保険部会が開催された。一般メディアでは高額療養費に関する専門委員会が新設されたことが大きく報道されている。患者の声を聴き、反映していく仕組みだ。個人的には、企業経営者(雇用主)の声もしっかり聴く場になってほしいと感じる。治療と就労の両立支援ができてこその高額療養費の自己負担上限額の見直しではないだろうか。どうすれば、経営者も協力してくれるのか、課題を明確にし、治療と就労が両立できる社会を創り、病気を持ちながらも強く生き抜いていける社会になって欲しい。


参照:高額療養費の自己負担上限額の引上げには、事業主の理解・フリーランス保護法の徹底など患者の生活を守る環境整備が必要


 なお、他にもマイナ保険証に関する現状報告や、医療保険について国民の一人ひとりが自分事として考えてもらうための情報が提示されている。


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電子証明書の更新について

 私の誕生日は5月5日なのだが、今年の2月に電子証明書更新に関するお知らせの封書が送られてきていた。転出転入シーズンが終わった4月中旬、マイナンバーカードを持って葛飾区役所へ行き、電子証明書を更新した。時間にして8-12分ほどのこと。持参したのは、マイナンバーカードのみ。ただし、その場では登録している2つの暗証番号が更新作業を終えるために必要となる。なお、写真は不要だ。なぜなら、今回の更新はマイナンバーカードそのものではなく、マイナンバーカードの中の電子証明書を更新するため。なので、写真の更新はさらに5年後になる。成長に伴い、顔の変化も激しくなる中学生以下でのマイナンバーカードの作成はやはり躊躇するところだが、未成年者の場合は5年毎の更新となる。悩ましいところだ。

 この電子証明書とは、インターネット上で本人であることを証明するもの。5年毎に更新が必要なのは、暗号技術の進歩や時間が経過することで解読される可能性が上がることに合わせてセキュリティ対策を実施していくためと言われている。診療報酬改定が医療技術の進歩等に合わせて2年毎に改定されるのと似ている。

 なお、電子証明書の有効期限が切れると、マイナ保険証としてだけでなく、マイナポータルを通じた電子申請や、コンビニ交付等の各種手続でも利用ができなくなるので、患者に対して医療機関側からも周知をしておきたい。




 ちなみに、電子証明書の有効期限切れとともに、医療保険の資格自体が喪失することはない。先にご紹介したように、電子証明書の更新の目的はセキュリティ対策のためであって、情報の中身等に関するものではない。その点、患者にも安心していただくように伝えておくとよいだろう。


医療保険財政の現状をどう伝えるか。格差の問題は世代間よりも就職氷河期の世代内が深刻

 令和2年10月28日医療保険部会において、国民に広く医療保険財源について理解してもらうことにより、医療保険制度をより信頼し、安心して利用してもらうような環境を形成するため、医療保険財源の現状等の情報を年1回医療保険部会において報告するとともにホームページ上で公表するという方針が示されていた。今回、その方針に基づいて①医療費の財源構造、②医療保険制度の比較、③実行給付率の推移と要因分析、④生涯医療費の4領域の公表予定資料が示された。





 160万円の壁問題、社会保険料負担、高額療養費など、とかく世代間格差が争点化される傾向が、選挙を控えて増えてきているように個人的に感じている。確かある一面ではその通りでもあるが、今の勤労世代もいずれは高齢世代になることはわかっていること。危機的状況にあるという事象をただ伝え、世代間対立を煽るのではなく、いずれは誰しもが高齢世代になることを踏まえて、将来の勤労世代に大きな負担を求めないようなメッセージの発信と必要な行動変容(生活習慣の改善や健診の受診など、防げることは防ぐ)を促すようなメッセージが求められるところ。ホームページ上でどういった見せ方となるのか、注目していきたい。

 ところで、世代間格差以上に私は「世代内格差」の問題がこれから深刻化してくると感じている。私はちょうど就職氷河期世代。同じ世代を見渡してみると、所得や就労状況、生活状況(親との同居)に違いと差があるように感じている。実際に、就職氷河期世代の所得差に関する研究もおこなわれている。


参考:就職氷河期世代の所得格差 (四方 理人氏、関西学院大学)


 男性では労働所得の格差が拡大していることがわかっている(女性の場合は、就業率が上昇し、労働所得が前の世代より高くなり、格差も縮小している)。今後、労働所得の低さから将来の年金水準が低くなる可能性があり、就職氷河期世代の人口ボリュームの大きさから社会保険料財源の確保・低年金問題が深刻になるとも考えられる。




 現政権では、就職氷河期世代に対する実効性のある支援を行うべく、骨太方針2025にも盛り込む方針とされている。世代内格差の解消は、社会全体の生産性向上と社会保障の持続可能性を向上させることになると期待される。改めて、注目しておきたいテーマだ。