令和7年5月22日、令和7年度第2回入院・外来医療等の調査・評価分科会が開催された。令和8年度診療報酬改定における入院医療及び外来医療に関する議論のための素地を作るための議論となる。今回の分科会では、新たな地域医療構想における急性期拠点機能と診療報酬の連動・整合性について議論されているが、令和6年度入院・外来医療等における実態調査の速報も公表されている。ここではその速報の中から、個人的に気になったポイントをピックアップして確認したい。


【お知らせ】医療政策ニュース解説ブログroute"hckn"の更新情報をBlueskyでお知らせします。よろしければ、フォローをお願いいたします。



 リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算は低調

 骨太方針2024でも、リハビリテーション・栄養・口腔ケアに関する内容が盛り込まれ、注目を集めた本評価だが、セラピストの確保、休日リハの提供が課題になっているのがわかる。令和8年度診療報酬改定で、こうしたボトルネックになっている点が解消されるか、注目されれうところだ。




地域包括医療病棟での課題点

 要求水準の高い地域包括医療病棟だが、実際に導入後の経営状況をみると、経営的には安定していることが伺える。また、患者の状態にあった機能となっていることを実感している様子だ。ただその一方で、先のリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算にも通じるところだが、休日リハの提供が課題となっている。このあたりの実績などの見直しは焦点に上がってくるだろう。




地域包括ケア病棟入院料、令和6年度診療報酬改定後の平均在院日数に大きな変化は無し

 令和6年度診療報酬改定で、地域包括ケア病棟の平均在院日数にテコ入れが入った。では、令和6年度診療報酬改定後に変化はあっただろうか、確認してみると、ほぼ変化は確認されなかった。




 令和8年度診療報酬改定では、さらに平均在院日数の短縮化(30日?)が考えられる状況だ。


療養病棟における経腸栄養管理加算、 NSTの有無が課題

 栄養を高めることで、ADLの低下を防ぎ、自立度を高めていくことにつながる。そこで極力、中心静脈栄養から経腸栄養へ移行を促していくための経腸栄養管理加算が新設されたところだが、低調といえる状況だ。その理由としては、栄養サポートチーム(NST)がそもそも無い、というもの。なお、経腸栄養管理加算を算定している病院では、算定していない病院と比べて、中心静脈栄養の実施率が低いことがわかっており、加算を推進していくことが、患者の自立度をさらに加速させていくことになる。




 また、摂食・嚥下機能の回復に向けた体制の有無を確認してみると、3-4割の病院で体制がないことも確認できている。




 療養病棟単独での対応に限界があるともいえるので、安易な要件緩和というのではなく、近隣医療機関の協力とレビューを受けることによる体制整備なども議論されていくのではないだろうか。


持参薬確認という負担

 勤務医の負担軽減に病院薬剤師の役割が大きく貢献されていることは知られている。では、病院薬剤師自身の負担軽減はできているのであろうか。今回の調査でクローズアップさえているのが持参薬の確認だ。病床等の種類に関係なく、等しく負担が重いとのこと。




 持参薬確認については、予定入院患者のかかりつけ薬局と連携することで、入院までの期間の服薬調整を依頼し、服薬情報一覧を作成いただく「服薬情報等提供料3(調剤報酬)」をうまく活用していくことがポイントだ。病院の薬剤師の負担軽減を図ることが、勤務医の負担軽減にもつながるといえることから、まずは、持参薬確認の面から今後の議論を注視していきたい。


看護師の負担軽減、看護補助者との役割分担で順調に進む

 令和6年度診療報酬改定では、看護充実体制加算等が見直され、看護師の負担軽減策の一環として、看護補助者教育、役割分担が推進される内容なった。その結果、比較的に順調に進んでいることがわかる。



 今後は、看護補助者の定着と職務内容に応じた給与などの処遇についての議論となっていくことも考えられる。


外来領域

 生活習慣病管理料の評価が見直され、定期的な療養計画書の交付が求められるようになった。その療養計画書の作成を負担に感じ、算定していない医療機関が一定数あることが確認されている。




 療養計画書については、患者本人は診療のドロップアウトを防ぐためにも重要なものだ。そこで、定期受診の継続性を高めるために必要なことについて調査をしている。医療機関と患者が距離的にも身近であること、日常生活(経済活動)への影響を最小限にするためにも予約診療や長期処方が可能であることなどが今後も診療を継続していく上で重症であることがわかっている。






 医療機関側からの回答をみると、家族との連携、といったものもある。治療と就労の両立支援の観点からも重要な視点だ。また患者側からの回答をみると、オンライン診療については定期的な診療を続けるうえでは重要視していないことがわかる。

 そのオンライン診療についてだが、平時ではそれほど高いニーズはなくとも、自然災害やパンデミック発生時には否応なく必要になってくるものだ。また、患者本人のお住まいの地域では対応できない専門領域などは、オンライン診療に頼らざるを得ないともいえる。オンライン診療による受診状況をみると診療による受診経験者の約20%はお住まい地の都道府県外にある医療機関であったことがわかっている。距離の概念を超えるオンライン診療を利用した受診については、医療圏や地域医療構想の観点から慎重な議論が必要になってくる。



 また、オンライン診療の利用では、保守管理料が発生することもボトルネックになっている。オンライン診療ができる環境を整備いていくために、診療報酬でこうした負担を吸収するような内容となるのか、注目したい。