厚生労働省 令和6年度医療施設経営安定化推進事業として、「地域医療連携推進法人が行う取組に関する調査研究」の報告書が公表されている。全国で45法人となった地域医療連携推進法人。地域医療構想を推進するための一つの手段として、地域の限られた医療資源を有効活用することを目的として、公立病院等の経営統合が完了するまでの期間限定的な利用として、今後も増えていくことが考えられる。




参考:地域医療連携推進法人制度について


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病床融通特例の活用

 例えば近年、二次性骨折予防継続管理料や地域連携診療計画加算など診療報酬においても医療機関単独ではなく、医療機関同士横の連携で評価される項目も増え、地域医療連携推進法人の下地つくりのようになっている。医療情報ネット<ナビイ>においても、地域医療連携パスの有無についての掲載ができるようになっており、客観的に地域における連携の強度も見えるようになっている。こうした横の連携を地域拡大版DRGとして今後も診療報酬上で評価が拡充していくことが考えられる。


※日本ではDPC方式による急性期入院医療の評価が導入されているが、これは一日当たりの包括。アメリカなどでは、DRG方式による評価で、一入院当たりの包括。入院期間まで含めているので、平均在院日数の短縮化などに効果がある。日本では、短期滞在手術等基本料はこのDRG方式に該当するので、厳密に言えばDPCとDRGが混在している状態。地域拡大版DRGとれは、術前検査から入院、手術、そして退院後の経過観察のあたりまでを一括りに考え、関係する医療機関がそれぞれ役割を果たすことで評価されるイメージ。


参照:地域医療連携推進法人に対する横連携型の診療報酬とは? ~術前から退院、経過観察までの一連の治療を包括支払い~


 報告書では、地域医療連携推進法人のそれぞれの特徴的な取組をピックアップして紹介されている。



 一番目に紹介されている「日光ヘルスケア」では、従来は病床過剰地域における病院の開設・増床は原則として認められない中で、連携法人の病床融通特例を利用し、基幹病院の移転に伴う当該地域の医療機能の低下の懸念を払しょくするべく、診療所から病院への転換が行われた事例が紹介されている。




 病床融通特例については、「佐賀メディカルアライアンス」では有床診療所の病床を地域の病院に集約化することで病院の機能強化と診療所の負担軽減を図った取組や、「北河内メディカルネットワーク」における精神科病院の一般病床を地域の基幹病院に融通し機能強化を図った取組なども紹介されている。





 共同購買やDXへの地域を挙げた取組なども具体的に掲載されている読み応えのある報告書となっている。連携法人でなくとも、取組のエッセンスはいろんな場面で流用できるのではないかと思う。


社会福祉連携推進法人という選択肢も

 地域によっては、医療資源ばかりではなく、介護・福祉の資源が不足しているというところも少なくはない。そこで、社会福祉連携推進法人という制度もある。社会福祉事業を営む事業者の多くは小規模な事業者が多く、人材確保・育成の他、仕入れなどに課題がある。こうした事業者が安定して経営を継続し、地域福祉を守っていくための法人が社会福祉連携推進法人だ。




参考:社会福祉連携推進法人制度


 地域医療連携推進法人制度と大きく違うのは、社会福祉事業を営むものであれば社員は社会福祉本陣に限定されず、医療法人やNPO法人、営利法人なども構わないこととなっている(ただし、過半数が社会福祉法人であることが条件です)。

 地域の実状によっては、地域医療構想の実現の手段の一つである地域医療連携推進法人よりも、地域の持続可能な医療・介護・福祉を目指す社会福祉連携推進法人という選択肢もその一つとなるだろう。