医療費適正化に向けた議論を確認 ~後発医薬品の推進、入院から外来診療への移行の促進など~

10/26/2022

ニュース解説 患者 経営 地域包括ケアシステム

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 令和6年度はあらゆる改革が集中し、そこから6年後となる令和12年、すなわち2030年のあるべき姿に向けた取り組みがスタートする。2030年とは、多くの地域で急性期入院医療の需要がピークを迎える年ともいわれ、その備えが急がれている。

あらゆる改革の一つに「医療費適正化計画」がある。国・都道府県が主体となり、当該地域の医療費の適正化を進めるもので、身近な例でいえば特定健診・特定保健指導の実施率や糖尿病重症化予防プログラムの実施などを通じた予防・重症化予防による将来の医療費抑制効果に取組むものがある。また、後発医薬品の使用促進などを通じた今の医療費抑制、医療費の地域差解消などもこの医療費適正化の目的でもある。

そして、この医療費適正化計画とは、地域別診療報酬を設定するトリガーにもなっている。医療費適正化計画とは、高齢者医療確保法(高齢者の医療の確保に関する法律)が根拠になっているが、その高齢者医療確保法第14条には次の規定がある。

厚生労働大臣が、都道府県知事と協議のうえで、医療費適正化を推進するために必要があると認めるときに、1の都道府県の区域内における診療報酬について、合理的であると認められる範囲内において、他の都道府県の区域内における診療報酬と異なる定めをすることができる。

いわゆる、地域別の診療報酬、と呼ばれるもので介護報酬の考え方に近くなる。だから、正式な手順を踏めば、地域毎に診療報酬点数の設定は可能というわけだ。ただ、実現のハードルは高く、現行の医療費適正化終了の翌年に保険協議会で議論し、厚生労働大臣・都道府県が協議の上で決まる、ということになる。なお、保険者協議会には保険者だけではなく、地元医師会・歯科医師会なども参加するもの。


この医療費適正化計画も令和6年度からは第4期に入る。令和4年10月13日、次期医療費適正化計画に関する議論が行われた。

まず、現行の第3期について。後発医薬品の使用割合を全都道府県80%以上などの目標を設定しているが現状ではほぼ達成という状況など確認され、現行のゴールとなる令和3年度には0.6兆円程度の適正化効果額が見込めるとのことだ。


やはり気になるのは、第4期に向けて。ここでは、医療機関の経営及び次回診療報酬改定にも影響を与えそうなポイントに焦点を当てて紹介する。まずは後発医薬品の使用促進について。

先に述べたように、多くの都道府県で数量割合80%を達成しているのが分かっているものの、100%達成ではないため、さらなる推進策を盛り込むことが検討されている。


使用実績の低い、小児・高齢者への普及・啓発活動の必要性や、薬効群別に見た割合の低いもの(精神科領域、抗悪性腫瘍剤、外用貼付剤など)への個別の対応の検討など具体的に検討されていきそうだ。また、財務省の春の建議などでもあったように保険者機能を活用した患者への啓発活動、フォーミュラリの推進がうたわれている(参照:2022年・春の建議を読む ~地域医療連携推進法人に包括支払の導入、地域フォーミュラリ、リフィル処方箋など~)。今回の医療適正化計画に向けた議論では医療と介護にまたがるアプローチの在り方なども検討されることから、病院フォーミュラリだけではなく、地域フォーミュラリまで広げた診療報酬及び保険者努力義務での評価が考えられるだろう。


診療にかかわるところもみていく。例えば、抗菌薬の適正使用についても記載がある。効果的なエヴィデンスがないとされていることや、診療報酬上においても適正使用に関する評価があることもあり、近年は使用量も減少している。こうした効果が乏しいとされているものについても選別し、減少していくことを新たな目標とすることも検討されそうだ。


もう一つ、今回注目したのが医療資源の投入量で地域差があるものとして、白内障手術と化学療法。いづれも、入院から外来への移行を促すものと言え、令和4年度診療報酬改定でもテコ入れがあったもの。



白内障手術については、短期滞在手術等基本料1において、麻酔科医無しでも評価されることとなったことや、病院では平均在院日数及び重症度、医療・看護必要度の対象からは除外されることとなった。その反面、何度の高い手術については高い評価が得られるようになり、外来手術における役割分担が促進されることとなった(参照:令和4年度のDPC対象病院の係数等が公表。算定ルールの見直しなど確認します。)。

化学療法については、加算から診療料への格上げとなったところで、さらに、バイオ後続品導入初期加算も可能となった。


医療費適正化の推進においては、保険者のかかわりがポイントになってくる。地域の診療等に関するデータがあること、そして組合員でもある患者・地域住民に対して受診行動の変容の促すための広報的活動もできる(参照:健康日本21の最終評価報告と保険者の機能について ~地域医療のキーパーソンとして役割を期待~)。リフィル処方箋やオンライン診療の推進においても、保険者に対する期待は大きい。しかしながら、地域医療連携の場面で保険者が参画しているケースは私自身はあまり経験がない。医療機関側からも積極的に保険者にも声をかけるなどしていくことも必要だろう。連携を通じて、予防・再発防止に取り組むことで、医療費適正化を実現する、医療機関も、保険者も、地域住民も想いは同じだ。

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