令和4年10月11日、健康日本21(第二次)最終評価報告が公表された。健康寿命の延伸と健康格差の縮小を第一に掲げたこの10年の取り組み結果だ。全部で53項目が設定され、目標達成できたとされるのが8項目。健康寿命延伸が達成できたとされたのは喜ばしい反面、悪化したとされる項目が7つあった。その悪化したとされる項目の中でも目を引くのは「メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少」。将来の医療費増大のリスクがここに見える。
そして、ここ最近一般紙などでもトップ記事として扱われることも珍しくない健保組合の苦境。2020年度はCOVID-19感染拡大による受診控えの影響があったが、2021年度はその反動もあり、赤字の見通し。なお、2022年度については2020年度の拠出金の清算の影響で黒字見通しのようだが、ここ最近の受診状況などをみると先行きに不安はある(参考:健保組合の苦境から読み解く経済と医療のつながり)。本年10月からは一部の後期高齢者の自己負担割合も上がることで、受診抑制も起きるかもしれないし、これまでの受診控えの影響なども考えると、検査などの回数が減ることで、自覚症状などがない患者の重症化などが静かに進展し、受診することには非常に重い状況になっている、ということも起こりうる。実際、私の父がそうであった。
健保組合、21年度は半数超赤字 高齢者医療へ拠出金重く(日本経済新聞)
そうした状況を踏まえてなのか、前期高齢者(65-74歳)医療費に対する給付金の在り方を見直す検討に入るとのこと。
大企業の健保組合、社員負担増検討 65~74歳医療費、賃金に応じ(Yahoo!ニュース/朝日新聞)
私は昨年から合同会社を作り、事業を展開しているが、なんといっても「社会保険料」の負担がこんなに重いのかと驚いた。おそらく、多くの中小企業の経営にも大きな影響を与えていることと思われる。様々な補助金・助成金もよいが、社会保険料の負担を減らすような取り組みは中小企業にとっては最も効果的なようにも思うし、日本の産業協力を維持することに大きく貢献できるのではないかと考える。
今回の見直しの議論については一定の批判が出るのは仕方がないと思うが、社会保険の在り方については根本的な見直しの時期に来ているのは間違いはない。高度成長期のように、若い働き手がたくさんいた時代は今の制度のままでよいのかもしれないが、今はそうではなく、働き手は減り、社会保険料を負担する人も減っている。時代に合ったものを創り出していくことが必要だ。
ところで、将来の医療費増大の抑制に努めるため、健保組合や協会けんぽ、国保等に対しては後期高齢者医療保険への拠出資金の負担減らすなどの保険者インセンティブがあり、適宜見直されながら現在に至っている。特定健診・保健指導の受診率向上や糖尿病重症化予防プログラムへの取組、後発医薬品の使用促進への取り組みなどを通じて、現在そして未来にわたっての医療費適正化への取り組みを評価し、インセンティブが得られるようになっている。
また、本年5月の財務省による春の建議では、医療費適正化への取り組みとして、リフィル処方箋の推進や地域フォーミュラリなどを利用した後発医薬品の使用促進に保険者が積極的にかかわることを新たな評価に加える可能性なども示唆された資料があった。協会けんぽによるジェネリックカルテを用いた後発医薬品の使用状況の可視化などを自治体でも活用していくことが検討されているところ。
保険者には地域の医療や組合員である企業の従業員の診療等に関する様々な情報がある。地域医療連携においても保険者の協力を得ることで、地域住民への情報発信の効率化にもつながることが考えられると共に、先に紹介した地域フォーミュラリの策定や地域医連携パスの策定にも大きく貢献できるところはあるように思われる。
社会保険料の在り方の見直しの議論を横目に、現状のルールでできる将来のリスク回避に向けた取り組みのためにも、保険者の地域医療医連携への積極的な参加は今後期待される。