増加を続ける診療所、200床未満へのダウンサイジングが顕著な病院。競合か、共存か?

10/03/2022

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 令和4年9月30日、「令和3(2021)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」が公表された。個人的に注目した資料を中心にポイントを見ていきたい。

〇増加の一途をたどる無床診療所。その一方で、有床診療所の減少に歯止めがかからず。



経営者の高齢化などもあり、廃業も一定数あるものの、それを上回る勢いでの開業がある。COVID-19感染拡大による開業控え、さらに勤務医の働き方改革が勤務医の時間外手当等の収入減少につながることが理由となっての開業というのもある。高度急性期病院に医師等を集約する一方で、かかりつけ医機能を有する診療所が地域に効率的に配置されるのが好ましい。外来医療計画・紹介受診重点医療機関に課せられる役割は重い。

有床診療所については、減少に歯止めがかからない。地域住民にとっては身近な入院が受けられる貴重な存在。ただ、今後については100床未満の病院のダウンサイジングが進み、有床診療所+在宅医療+介護施設(ナーシングホーム)といった取組が進むことが考えられる、と思っている。


〇病院のダウンサイジングが進む。200床未満病院と診療所は競合と共存の道を探ることに

病院の病床規模の変更状況についてみてみると、多くの病院でダウンサイジングが進んでいるのが分かる。特に注目したいのが、200~299床の病院群。病床・外来の機能分化の観点からすると、宙ぶらりんになっているともいえるゾーンになる。地域包括ケア病床の診療報酬の施設基準などを見ればわかるが、200床未満の場合は、在支病や二次救急の対応、敷地内の訪問看護機能が求められていることかわかるように、これからの200床未満の急性期においては、地域住民にとって身近な入院医療を提供できる機能が必須となっている。ダウンサイジングに伴い、病棟スタッフを在宅部門に異動し、トレーニングをするなどの準備が必要だ。また、地域のかかりつけ医や施設との関係構築を改めて行い、自院の入院基準の明確やレスパイト機能など対外的にアピールしていくことが求められる。一方で逆に経営統合なども含めて増床を目指すこともあるが、職員の確保や病床稼働率をどうやって維持するかなどの長期的な戦略が必要になってくる。いづれにせよ、競合ではなく、共存となるような取り組みが大事だ。


〇一般病床の地域差、外来患者数の地域差




人口10万対病床数の多い県では、高知県が一般病床と療養病床で最も多く、全病床でも最も多い。さらに、平均在院患者数を見ると高知が最も多いこともわかる。病床数が多いこともあるが、その病床を埋めるために入院が長期しているのではないかと考えられる。患者にっては新設かもしれないが、医療費という観点からみると悩ましい問題と言える。医療費も限られた資源と考えて、病床機能の再編が望まれる。

なお、外来患者数も高知が突出して多い状況だ。患者層を見てみないとわからないが、デイケア/デイサービスなどの活用であったり、かかりつけ医機能を有する医療機関との役割分担にも課題があるように感じてしまう。


COVID-19感染拡大といった不測の事態があって病床機能転換などが進まなかったともいわれているが、感染拡大の前に病床機能転換などが進んでいれば、医療逼迫などの問題も、医療費高騰もなかったかもしれない。たら、ればの話に意味はないが、感染の終息の見えてきた今だからこそ、改めてリスタートを切って地域医療の適正化を考えていくことが必要だ。

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