急性期の集約化と患者像のさらなる純化に向け、看護必要度の見直しと地域包括ケア病床の役割分担を論点に

8/12/2023

r6同時改定 急性期 経営 地域医療構想 入院医療

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 令和5年8月10日、第5回 入院・外来医療等の調査・評価分科会が開催された。主なテーマは、「重症度、医療・看護必要度の見直し」「地域包括ケア病床における救急対応及び在宅からの受入れの評価の検討」「療養病棟における医療依存度の高い患者に対する評価の適正化とTPNの評価に関する扱い」の3点といえる。ここでは、「重症度、医療・看護必要度」と「地域包括ケア病床における救急対応及び在宅からの受入れの評価の検討」についてポイントを紹介する。


〇急性期一般入院料の動向からわかる、地域医療構想の推進とのセットでの改革の影響

急性期一般入院料の動向、高度急性期病床の動向について紹介されている。地域医療構想がスタートしてからは、急性期入院する患者増の厳格化、すなわち「重症度、医療・看護必要度」の途切れない見直し・急性期患者増の純化が進み、7対1看護の減少・病床転換が進んできた。しかし、ここ最近を見ると、7対1看護は若干の増加に転じている。いくつかの複合的な理由が考えられるが、病床を削減して7対1看護割合を高めていく中小規模病院や院内転棟割合への対策として地域包括ケア病床から7対1看護に戻す200床以上病院、また病床数全体は減少している中で、高度急性期の医療機能の集約が進められていることも大きな目でみるとその原因の一つとしても考えられる。そう考えると、急性期充実体制加算の新設(地域包括ケア病棟入院料、療養病棟入院基本料の届出があると不可)が影響を与えていることも考えられる。


なお、高度急性期領域については、300床未満で急性期充実体制加算の届出のある病院についても議論されている。高度急性期機能が分散することのデメリットや医療費の観点から、今後は地域医療構想調整会での同意などの要件が課せられることも考えられそうだ。


〇重症度、医療・看護必要度の見直しの焦点となる2項目を確認

前回改定では、「心電図モニターの管理」が除外されるという大きな見直しがあった。また、新型コロナ感染拡大による大きな打撃を受けていることを考えると、今回の改定では大きな見直しは無いのではないかとも思っていたが、来年度はトリプル改定であり、地域医療構想のゴールを迎える前の最後の改定という絶好のタイミングのためか、今回も見直しについて検討される方向だ。注目されているのは「注射薬剤3種類以上の管理」と「救急搬送後の入院」の2項目だ。

まず「注射薬剤3種類以上の管理」についてだが、前回改定の前後で看護必要度の項目別該当患者割合を見ると、明らかに増えていることが分かる。注射薬剤に関する内容・回数などの精査が今後行われ、適正化が図られることになるだろう。


もう一つの「救急搬送後の入院」については、ここ最近の中医協でも話題になっている高齢患者の救急入院と下り搬送にも関わってくる重要なポイントとなりそうだ。

参照)

診療報酬とは、医療計画を下支えするもの~5事業に対する診療報酬での評価の方向性を読む~


看護必要度の項目別に入院期間中の該当患者割合が明らかにされ、「救急搬送後の入院」の割合が高いことが分かった。また、急性期一般入院料1に特に多いことも分かったところ。



「救急搬送後の入院」での入院は5日間にわたってA項目2点と判定されるため、B項目3点以上あれば重症患者割合の対象となる。高齢患者の場合はB項目は比較的満たしやすくなるだろう。また、高齢者に多い尿路感染症や肺炎などに対する医療資源投入量にはほかの病床機能と大きな差はないとのデータも公表されており、高齢患者を急性期一般入院料1で意識的に受けているというように見られている。これから看護必要度に関する議論が本格化していくことになるが、高齢患者の急性期入院に関する役割分担の議論朋合わせて検討が進められていくことになる。考えられることとしては、A項目の点数を1点に引き下げることや入院日数に応じて点数の段階的に引き下げることが考えられるだろう。また、「救急搬送後の入院」にも関わるB項目に関する評価についても今後見直される可能性があるのではないだろうかと個人的に感じるところもある。高齢患者が増えているということは、そもそもB項目自体にも適正な見直しが必要だと考えられるこ。もともと看護必要度のB項目はMDS方式の高齢者ケアプランとの連動(急性期から介護までの患者像の変化等をつかむスムーズな連携)などがイメージされていたように思うが、改めてLIFE(科学的介護情報システム)との連動も見据えて患者・利用者像をつかみやすくするための対応が必要だろうと思う。

なお、重症度、医療・看護必要度についてはHCU版ではICUを併設しないHCUでの該当項目割合に異なる点があること、ICU版については入室日の看護必要度とSOFAスコアを退院時の転機を確認したところ、SOFAスコアの方が退院時の転機と相関関係が強いことなどが示された。



〇地域包括ケア病床、サブアキュートとポストアキュートの評価に差を?

高齢患者の救急入院について、急性期で受け入れた後にトリアージして地域包括ケア病床を有する病院への下り搬送を評価することなどが検討されているが、次回改定での一つの注目点になろうとしている。地域包括ケア病床については、二次救急等を必須したり在宅医療の実績などを評価に反映させるなど見直しをが続いている。基本的には、地域の高齢者にとっての身近な入院・かかりつけ医機能を期待した改定内容が続いているといえる。地域包括ケア病床を有する病院の入院経路が示されている。



救急部門の有無や位置づけ別の緊急入院等の割合は20%程度と差はない。また、緊急入院の患者の傾向も明らかにされているが、肺炎、腰椎圧迫骨折、尿路感染症などが多く、先にご紹介した看護必要度における「救急搬送後の入院」に該当する患者の状態と近い。


当然ながら、緊急入院等の場合は入院初期の段階から集中的な治療対応等が必要になるため医療資源投入量は高くなる。看護師等の負担も高くなる。下り搬送、看護必要度における「救急搬送後の入院」の見直し、その結果として地域の状況によってはサブアキュート機能の強化を求めらえる地域包括ケア病床も出てくる。医療資源投入量や医療従事者の負担にも差が出てくることが考えられることから、今後詳細な分析を通じて、サブアキュート型とポストアキュート型の評価に差を設けていくことなどが考えられるだろう。


ただし、現状では予定入院及び外来受診後の入院がそのほとんどを占めており、特に今後注目したいのが、生活習慣病の重症化対応や教育入院、レスパイトケア入院といったものに関連してくる点だ。地域包括診療料の算定なども合わせて、こうした生活習慣病重症化対応に関する予定入院及び外来受診後の入院については、医療資源投入量というよりも、そのプロセスを重視した評価など必要にも感じる。

そして、地域包括ケア病床における「短期滞在手術等基本料」についても資料がある。この資料では、短期滞在術等基本料3を算定する患者割合が高い病院では、自宅等からの受入れ割合が高く平均在院日数も短く、在宅復帰率7割以上となるケースが高い、といった現況が報告されている。ポジティブに見える一方で、第四期医療費適正化計画にもあるように、入院から外来へ移行できるものは促進する方針が明らかになっており、具体的には白内障手術については都道府県毎に移行に関する目標値も設定されることになることも忘れないようにしておきたい。


参照)



特に病床規模が大きい病院に対しては、院内転棟割合や入棟割合などに影響が出るような見直し(短期滞在手術等基本料の対象患者は計算式等から除外など?)の可能性も引き続き注視しておきたい。



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