令和5年5月17日、中央社会保険医療協議会総会が開催された。テーマは医療計画に関するもの。診療報酬改定の議論で医療計画を真正面から取り上げたというのはあまり記憶がなく、珍しい。来年度は、6年に一度の大改革。しかも、診療報酬・介護報酬・障害者福祉サービス報酬のトリプル改定のみならず、医療計画・医療費適正化計画も見直され、医療計画の一部である地域医療構想・外来医療計画も新たになるという改革の礎を気づく貴重な機会となる。
医療計画については国から指針等が提示されており、各都道府県において医療計画を策定する作業をし、来年度からの計画スタートとなる。すでに、いろんな地域で医療圏の見直しに関する取組なども目にするようになってきている。
参照)県 「2次医療圏」集約へ 医療審議会に2案を提示(NHK)
医療計画といえば、5疾病5事業及び在宅医療。来年度からは、5事業に新興感染症を追加して6事業になる。また、循環器病対策推進基本計画を踏まえて、5疾病の中の「脳卒中」「心筋梗塞等の心血管疾患」との整合性を取ることなど、新たな対応も必要になってくる。
なお、今回の議論では、旧来の5事業に焦点を当てた議論となった。5疾病と新興感染症対策は疾患や連携に関するもので、9月以降の個別項目の議論の中で議論される予定となっている。なお、旧来の5事業とは「救急医療」「災害医療」「へき地医療」「周産期医療」「小児救急を含む小児医療」の5つ。もしもの時に必要となるある意味「不採算医療」ともなるものだ。だからこそ、地域で役割分担・責任と負担の分散が必要になってくるもので、これまでは主に補助金で、そして診療報酬上で手厚い評価がなされてきた。例えば、DPCにおける地域医療係数などわかりやすいだろう。ポイントをピックアップして解説する。
〇救急医療・高齢患者の「下り搬送」の評価?
新型コロナの特例の見直し、そして同時改定の意見交換会でも度々出てくる「高齢患者の受入れを地域包括ケア病棟等を有する病院へ」という言葉。実際にに地域包括ケア病床を有する病院では二次救急等の対応等が求めれられてきており、環境は整いつつある。しかしながら、高齢患者だからと言って一律に地域包括ケア病床を有する病院へ、というのは不合理が生じるし、本当に必要な治療が施されないことも起こりうる。そこで、「下り搬送」だ。救急医療機関で受け入れ、トリアージして回復期等に「下り搬送」をするというもの。
ただ、より一層救急患者が集中してしまうことも考えられることと、高齢患者の場合は検査に時間がかかるなどの負担も大きくなることから、実績に応じた高い評価など考えられるだろう。また、2次救急体制についても高齢患者の救急増加に伴い評価を見直すことも検討されていきそうだ。地域包括ケア病床を有する病院においては、地域からだけではなく、救急医療機関からの受入れも視野に入れた連携ができるよう体制を作り、しっかり広報をしていくことまでが重要になる。
〇へき地医療・D to P with Nの評価を!
先日、「オンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針(案)」が示されたところなので、非常にホットな話題になっている(参照:D to P、D to P with N...、これからのオンライン診療・遠隔医療の推進方針が明らかに)。なお、へき地に限定して公民館やデイサービスなどオンライン診療を実施できる場所は拡充されている。訪問看護の場など、必要に応じて看護師から医師にコンタクトをとり実施していく方式、オンラインで医師の指示を受けて看護師が処置などをする方式など検討できる。あくまでもへき地医療で、ということ。一方で、規制改革推進会議では、へき地に限定しないオンライン診療・遠隔医療の推進を求めていることもここでは合わせて知っておきたい。
〇周産期医療・急性期充実体制加算が与えた影響
昨年の診療報酬改定で新設された急性期充実体制加算だが、その影響で総合入院体制加算の届出が減少し、小児科・産婦人科等を標榜する医療機関もそれにつれて減少することが危惧されている。改めて、急性期充実体制加算と総合入院体制加算の役割分担や施設基準についての議論が必要となりそうだ。なお、総合入院体制加算については、地域医療構想での話し合いでの合意を得られれば、産婦人科等の標榜は除外できるようになっている。産婦人科医等が地域で分散して医療資源の効率性に支障をきたさないためだ。こうした高度急性期入院医療については、医療資源での適正化の観点でより地域医療構想調整会議の場での議論と決定が診療報酬にも大きな影響を与えてくることになるのではないだろうか。
他にも、災害医療についてはDPCにおける地域医療係数での評価の在り方について、小児救急を含む小児医療については医療的ケア児に対する病院からできるサポートの在り方についても検討されている。特に後者については、来年度は障害者福祉サービス報酬の改定もあることと、こども家庭庁が菅アk津する領域になるため、広範囲に議論されていくことになるだろう。