熊本県合志市にて、自治体の職員が重度心身障害者医療費の支給に際して、難病医療費助成を受給している方に2年間支給を続けていた、というニュースがあった。
参照)
医療費助成の対象外と知りながら “月10万円ほどを30人に2年間支給” 職員2人を懲戒処分 熊本・合志市(RKK熊本放送)
ニュースでは、支給対象外であるとわかっていながらも、将来的には制度の変更に伴い、対象となるだろう、と見込んで続けていたとのこと。いろんな意味で「知りすぎていた」ことが原因だと思う。なお、昨年の障害者施策一括改正では、その見通し通りとはいかなかった(参照:難病法改正で患者負担の軽減と就労機会の創出へ)。
ここ最近は、高額な薬価のついた医薬品が多く登場している。希少疾病を中心に、治療が進み、社会参画の機会が増えるようになってきているのは素晴らしいことと思う反面、医療経済や社会生活に与える影響と、治療と就労等によって維持・向上される生産性の関係性については、高額になると思われる認知症治療薬などの話題を考えると悩ましくも思えることもある。倫理・道徳的な視点は抜きにして。なお、治療と就労を支援するための医療機関側からの支援については、前々回の診療報酬改定から評価されるようになってきており、前回の診療報酬改定ではオンライン診療での実施も対象となり、評価されるようになっている。
また、高額な薬価のついた医薬品を使用し続けるにあたっては、公費負担医療について理解を深めておくことは重要だが、なかなか難しい。例えば、助成の対象になるには、難病の中でも指定難病に該当するものであって、さらに、疾病ごとに重症度が設定されていて、重症と判定されなければない(重症でないと判定されても、1ヵ月の医療費総額が33,330円を超える月が年間3回以上ある場合は軽症高額該当として対象になることもある)。現状では、助成の申請をしてからの対象となることから、診断を受けてからのタイムラグも生じることもありうる。そこで、昨年の障害者施策の一括改正では、本年10月より過去1か月に遡ることを上限に、診断された日に遡って対象となることになった(参照:難病法改正で患者負担の軽減と就労機会の創出へ)。
またこの難病助成とは、保険優先のため、まずは高額療養費による給付がおこなわれ、その残額に対して難病医療費助成が適用となるものだ。治療のタイムラグと患者の経済的負担を少しでも軽くするには、高額療養費制度をまずは使っていくことで、限度額適用認定証の申請が必要になるのだが、オンライン資格確認の原則義務化の恩恵ともいえるが、患者さんがマイナンバーカードを所持・利用していれば、事前の申請は必要なく、その場で適用となり、即日から負担は軽くなる。問題の指摘が多いオンライン資格確認だが、とても便利な面もあることをもっとアピールして欲しいと思っている。また、難病助成の申請においてもマイナンバーカードを利用することで、手続きの簡素化もできる点を強調しておきたい。
なお、今回のニュースであった重度心身障害者医療費は身体障害者手帳の取得によって得られるもの。医療サービスでの需給は確かに可能だが、助成を受けている疾患以外で高額な医療費が発生するものに対しての受給は可能だ。なお、自治体によって内容は異なることがあるので、必ずお住いの自治体でご確認を。
指定難病の患者さん・利用者さんが利用できる助成や公的支援について以下に簡単に整理してみた。日常生活で支援が必要な場合は、障害者総合支援法の利用や65歳以上であれば介護保険法(パーキンソンなどの特定疾患であれば40歳以上でも利用可能)の利用もできる。なお、難病助成では訪問看護や訪問リハビリテーション、介護医療院といった医療系介護サービスの利用も可能となっている。