next地域医療構想の焦点を探る

8/30/2024

かかりつけ医機能 外来診療 患者 経営 在宅医療 地域医療構想 薬局

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令和6年8月26日、厚生労働省において第7回新たな地域医療構想等に関する検討会が開催された。現行の地域医療構想は、入院医療に焦点を当てて令和7(2025)年度の必要病床数及び病床機能の役割分担の目標達成に向けて取組まれてきた。そして、その目標に沿うように着実に病床数は減少してきた。それは、患者が療養する場所が減少し、患者自宅や施設も療養する場所として考えていく必要性、すなわち在宅医療や外来診療の対応強化や医療機関単独での対応ではなく、地域を一つの総合病院と見立てた対応がこれから必要になることを意味する(参照:地域医療構想の当面のゴール2025に向けて。そして、2040年に向けたnext地域医療構想の議論がはじまる。)。今回の検討会は、これから始まる本格的議論に向けての前提資料の確認のような意味合いだといえる。個人的に注目したいポイント、他の政策との整合性なども考えながら、これから始まる議論の焦点を見出したい。


新しい地域医療構想のゴールを確認。在宅医療への期待とかかりつけ医機能

 団塊の世代の多くが90歳を迎える2040年、少子化も進展していることが想定され、支えての不足や地域格差が実社会において課題になることがすでに分かっている。


そこで、2040年以降の本格的少子高齢社会に対応できる地域医療体制作りが進められている。


また、本年の骨太方針2024では、人口減少が本格化する2030年までの6年間の取組についても明確化されたところ(参照:2030年までの医療政策上の重要KPIとタイムラインを確認して、備える。)。


今回公表された資料では、2040年の医療需要に関する見込みが示されている。高齢者の救急搬送、在宅医療の需要が大きく増えることが想定されていることから、地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟のような高齢患者の急性期対応ができる病床の整備と、受け皿ともなる在宅医療の拡充を課題に挙げていることがわかる。


特に在宅医療についてみると、入院対応や重症者対応のキャパシティもあり、職員数も診療所よりも多いことから、入院・在宅を一元化できるような病院の機能に対する期待をにわかに感じさせる。

令和7年度から施行されるかかりつけ医機能報告制度では、在宅医療に強みのある施設だとか、慢性疾患の管理に強みのある施設など、様々な類型が誕生することが考えられていること(参照:かかりつけ医機能報告制度、1号機能・2号機能に求める報告内容等が大筋で決まる。)から、今後、かかりつけ医機能を有する医療機関からの在宅に強みのある類型の拡充を促すような政策なども期待される。


next地域医療構想で重要だと感じるのは、患者の受診行動だろう。これまでの地域医療構想は入院医療の役割分担であり、どちらかといえば患者にコントロール権はなく、医療機関側に療養の場の選択は委ねられていた。今後は、患者自身に受診や療養の場のコントロール権が移ってくる機会も増える。そこで、医療情報ネット<ナビイ>によるわかりやすい情報発信と患者自身の自己決定が必要になるといえる。住民教育もnext地域医療構想では盛り込んでいくことが必要に感じる。

医療機関経営の維持、そのために緩やかなダウンサイジングも選択肢に

現行の地域医療構想は診療報酬改定による急性期入院する患者像の度重なる見直しや療養病床に入院する軽症者の早期退院を促し、ほぼ期待した全体の病床数等の目標は達成できる見通しとなっている。


基本的には、急性期等からの転院での受入れがほとんどとなる慢性期入院だが、新型コロナ感染拡大の影響もあって急性期の患者数が減少し、結果として慢性期入院にも影響が出てきている。そこで、療養病床を減少しつつ、地域包括ケア病床を新設し、急性期など環境に頼らず、自ら患者を獲得できる体制を作ろうとしている傾向や有床診療所に転換し在宅医療への取組を開始するといった傾向が垣間見えている(参照:マイナ保険証の利用実績の検討を開始。DPC対象病床から地域包括医療病棟への動向、そして昨年までの施設基準届出状況からわかることと今後の懸念)。かかりつけ医機能報告制度の開始も控え、新しい施策が望まれるところだ。
なお、療養病床も含めて医療機関の経営状況は悪化の一途となっていることも確認できている。地域の実状・患者のアクセスも踏まえての検討が必要だが、医療機関の経営統合や思い切ったダウンサイジングと在宅医療への取組みが求められている。ただ一方で、高度専門医療やがん等の個別化医療など専門性の高い医療はある程度数を絞り込みながらも、様々な医療ニーズに対応できる環境を作ることも必要であることを忘れてはならない。例えば、放射線治療など、いまだ全国的に実施可能な環境が少なく、待機患者が多い(参照:第4期がん対策推進基本計画の中間評価の方針と病院経営の視点~選択肢の一つとしての特別措置病室~
)。



そして、外来にも目を向けてみると、都心部での新規開業は多く、へき地等外来医師少数区域での新規開業は少ない傾向にある。



骨太方針2024では、こうした医師の偏在対策となる医師偏在対策総合パッケージを年内にも策定し、公表することを明らかにしている(参照:骨太の方針2024(原案)を読む)。地域別診療報酬や外来医師多数区域での新規開業に対する一定の歯止めをかけることなどが検討されている。ただ、気を付けてみておきたいのは、今後都心部では人口は増える一方で、高齢者も増えるということだ。結局は、都心部においても在宅医療等の需要は高まるということだ。医師偏在対策については、「今」取組むべきことと「将来」取組むべきことを分けて考え、対応していくことが必要だろう。


都道府県知事のリーダーシップ

地域医療構想の推進には、知事の強力なリーダーシップ、そして強い権限が必要であることが骨太方針2024でも言及されていたのは記憶に新しい(参照:骨太の方針2024(原案)を読む)。



next地域医療構想を推進していくための重要なテーマだ。また、知事への適切な情報提供などの意思決定支援ができる協力者の選任などもポイントになってくるだろう。

9月からはじまる各論の議論の前に、個人的な視点での論点整理をしてみた。next地域医療構想は、来年度から施行されるかかりつけ医機能報告制度との関連性が高く、地域住民の意思決定・行動変容もポイントになる。また、薬局も大事なプレイヤーであることを確認しておきたい。令和6年度診療報酬改定では、長期処方・リフィル処方箋を利用する患者へのフォローアップを処方元と薬局薬剤師が連携して対応し、重症化予防に努めることが評価の対象になっている(参照:医療資源が限られた地域こそ、連携を通じた働き方改革・負担の分散を~診療報酬・調剤報酬にみる連携と負担軽減の評価を再確認~)。

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