令和6年度診療報酬改定の結果の検証と次回改定への影響は?~後発医薬品の使用促進について~
令和7年4月9日、第72回 中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会が開催された。令和6年度診療報酬改定の影響について、アンケート調査をしたもの(調査実施時期は令和7年1月6日から1月20日<「患者調査(インターネット調査)」は令和7年1月16日から1月24日>)。今回は、精神医療・長期処方とリフィル処方・後発医薬品の使用促進の3点について報告書案が示された。ここでは、後発医薬品の使用促進についてポイントを解説する。
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数量ベースで大きく伸長。一般名処方の拡大は電子カルテが鍵。DXの推進をにらみつつ、後発医薬品に関する加算の在り方が見直されることになりそう?
令和6年10月からの後発医薬品のある長期収載品の選定療養のスタートが明らかな後押しとなり、後発医薬品の数量割合が伸びていることが明らかになっている。
ただ、前回調査の時点でも80%を超えているところは多かったことを考えると、現状のルールではすでに天井に達しつつあるように見える。ここから、さらなる期待をするにはもうインパクトのあるもう一手が必要だともいえる。例えば、患者の自己負担割合をさらに引き上げることなども考えられるだろう。今回の調査では、そうした点についても患者調査されている。比較的年齢層が高いであろう郵送調査での結果では、先発品志向の強さが、勤労世代が多いであろうインターネット調査では自己負担が2倍になれば、という意見が確認できている。
さらなる数量割合の拡大を求めるのであれば、自己負担割合の引上げは検討されることになるだろう。
なお、後発医薬品の使用促進においては、金額ベースでの目標である65%が次なる目標になってくる。そこで重要になってくるのが、バイオ後続品(バイオシミラー)だ。令和6年度診療報酬改定では、入院での使用にも加算が設けられた李、外来での使用の対象が拡充されたところ。
参照:安定供給を基本とした後発医薬品とバイオシミラー使用促進の新たなロードマップが策定・公表される
診療所、病院とも診療報酬の評価もあってか、積極的な処方を考える環境ができつつあるのが分かる。
また、院外処方をするケースも多くなってきているのが分かる。昨年10月からの後発医薬品のある長期収載品の選定療養にバイオシミラーは対象に入っていない。その理由は、虫食い効能になっているケースがあることやデバイスとしての側面があるからだと考えられる。しかしながら、院外処方が増えていることを考えると、選定療養の対象に加えていくことも想像できるのではないだろうか。実際、昨年9月末に公表されたバイオシミラーの使用促進策には選定療養を検討することが文言として盛り込まれている。
処方側による後発医薬品の使用促進策の一環として、令和6年度診療報酬改定では一般名処方加算の点数を引き上げたところ。なお、処方箋料は8点の引下げとなっており、一般名処方にすることで処方箋料の減収分をカバーできるようになっている。その影響もあってか、一般名処方が増えているのがわかる。
一方で、一般名処方をしていない医療機関にその理由を尋ねているが、電子カルテ等システム対応の問題が主なものとなっている。順調にいけば、来年度から標準型電子カルテの提供も開始され、一般名処方に関する課題は無くなる可能性が高い。となると、すでに90%を超える数量割合にあることから、後発医薬品使用体制加算や一般名処方加算自体の評価自体がなくなって、初診料・再診料などに包括された評価となっていくことも現実的に考え、対応策を用意しておくことが必要だろう。
ところで、一般名で処方箋を受け付けた薬局ではどういった対応になっているのだろうか。まず、後発医薬品を調剤しなかったケースでその理由を確認してみると、患者の意向という理由が前回調査結果よりも減少していることが分かる。
なお、一般名処方で後発医薬品を調剤した割合は80%を超えている。特定薬剤管理指導加算3-ロが新設されたことに加え、一般メディアで選定療養に関する話題が多く取り上げられ、認知度が高まったこと、景気の先行きをネガティブに捉えている人が多かったことなどが理由として考えられるだろう。
参照:入院時食事療養費等の期中改定について了承。経済環境の現況と先行きを確認して、地域住民(患者・従業員)の意識と行動の変化を考える。
また、長期収載品の銘柄名で処方された医薬品のうち、後発医薬品に変更したものは70%を超えている。薬局薬剤師の貢献度の高さが分かる一方で、説明には大きな負担が伴う問い調査結果もある。そこで、令和7年4月からは特定薬剤管理指導加算3-ロは点数が引き上げられている。
その他、今回の調査では安定供給問題についても調査されていたが、支障を来している、という状況は続いていることが分かっている。また、今回調査で気になったことといえば、フォーミュラリに関する調査が見当たらないことだろうか。ひょっとしたら、別のところで調査されるのかもしれないが、診療報酬・調査報酬の議論のテーブル上にはないのかもしれない。医療費適正化計画、保険者努力支援制度の中での取組みとなっていくかもしれない。
後発医薬品の使用促進は、選定療養の影響でさらに促進されたといえるが、もともと80%を超えていたところでの後押しになっている。さらに数量割合を高めるのであれば、患者自己負担割合の見直しに着手することや、金額ベースの目標達成も含めてバイオシミラーも対象に加えていくことが検討されるだろう。その一方で、すでに90%を超える状況で、後発医薬品使用体制加算や一般名処方加算がそのまま存続することの是非については今後の中医協での議論を注視しておく必要があるだろう。