令和7年7月16日、第612回中央社会保険医療協議会 総会が開催された。今回は「外来について(その1)」とテーマが設定されている。具体的に以下の5つの論点が厚生労働省から示されたところだが、その内容はかかりつけ医機能報告との整合性やかかりつけ医機能の役割をどのように評価するか、といったものだといえる。


外来について(その1)の論点
1.今後、要支援・要介護高齢者の外来診療に関する需要増加が見込まれることを踏まえ、外来医療の提供にあたり重視すべき事項についてどのように考えるか。


2.地域の外来・在宅医療の提供体制の向上を目的とする、医療法の「かかりつけ医機能報告」制度を踏まえて、外来における診療報酬上の評価のあり方についてどのように考えるか。

3.前回改定を踏まえ、今後の生活習慣病対策のさらなる推進についてどのように考えるか。

4.特定機能病院等における逆紹介のさらなる推進についてどのように考えるか。

5.前回改定を踏まえ、今後のオンライン診療の適切な推進についてどのように考えるか。



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 今回の議論は、本年6月19日に開催された「第4回入院・外来医療等の調査・評価分科会」で公表された資料をもとに進められている。本ブログではすでにその内容については、ポイントを解説しているため、詳細については以下のリンクよりご確認いただきたい。



参照:かかりつけ医機能報告制度と機能強化加算等の整合性、生活習慣病管理料の継続算定の考え方と算定頻度について注目される



かかりつけ医機能報告制度との整合性、診療報酬におけるかかりつけ医機能に対する評価の在り方を検討

 人口減少も確かに大きな課題だが、もっと深刻な課題は高齢者人口割合が高まってくることと医療資源が不足する地域が増えてくることに伴う地域医療差だといえる。そこで、医師偏在対策などをこれから講じていくこととなっている(今秋の臨時国会等での改正医療法を再度審議・成立の予定)。そして、来年度から本格的にはじまる、かかりつけ医機能報告制度、が果たす役割も大きくなると期待される。制度の主旨は、医療機関単独で在宅等も含めて対応を促す、というものではなく、自院で在宅医療の対応ができなくとも、連携先に在宅医療を行える医療機関があれば連携して患者を紹介できる、というもの。地域住民を「点(単独)」ではなく「面(複数)」でカバーするものだ。そこで、地域にある医療機関の機能を地域住民はもちろんのこと、医療機関や介護事業者、薬局も知っておくことが必要だ。

 


参照:かかりつけ医機能報告制度、協議の場のためのありのままの現状把握から始まる



 なお本制度は、特定機能病院・歯科医療機関を除くすべての医療機関が報告の対象となるものだが、法的な義務はないため罰則規定等はない。しかしながら、報告をしなければ来年6月以降に各地で始まるかかりつけ医機能報告の2号機能に関する協議の場への参加ができず、連携に支障が出ることが考えられる。また、機能強化加算や生活習慣病管理料といった慢性疾患の患者を継続的に支援する診療報酬の算定要件に加えられる可能性がある。ゆえに、報告をすることが望ましいと考える。今回の議論でも、かかりつけ医機能報告と現行の診療報酬項目の比較がなされ、整合性をどうやって図っていくかといった点が議論されている。





 特に注目したいのは、機能強化加算との関連性だ。本年5月の春の建議においては、この機能強化加算についてはかかりつけ医機能報告制度の開始に合わせて見直しを求める内容が明記されている。



参照:令和7年度春の建議に向け、医療提供体制・診療報酬・調剤報酬に関する議論が行われる
参照:骨太の方針2025に向け、春の建議が提出される



 今回の診療報酬改定における注目点の一つといえる。考えられることとしては、かかりつけ医機能報告制度の1号機能に求められている一次対応できる17診療領域・40疾患を明確にすることなどを要件に加えるなどだろうか。


 また、同じく春の建議では外来管理加算を再診料に包括して廃止することや生活習慣病管理料において病状が安定した患者に対する受診間隔を見直すことを求める内容も明記されている。今回の議論では、特に生活習慣病管理料に関して、今後の在り方について議論になっている。とりわけ、継続算定率については注目されそうだ。改めて「新経済・財政再生計画 改革工程表2023(経済財政諮問会議)」にある医療関連の今後のKPIを見返してみると「糖尿病の治療継続者の割合 【2032年度までに75%】 」という目標が設定されていることに気づく。





 国が掲げる政策目標との整合性を考えると、継続算定率については何らかの評価の重みづけが盛り込まれる可能性は高そうだ。その一方で、春の建議にもあるように病状が安定している場合には受診間隔を広げることも求めているように読める。実効性のある療養計画の作成と活用、リフィル処方の利用と薬局との連携の在り方なども複合的に対応を考えておく必要があるだろう。






特定機能病院からの逆紹介割合に課題がある

 今回の議論で個人的に注目したのが、特定機能病院からの逆紹介割合が低いということ。一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関・地域医療支援病院・許可病床400床以上病院と特定機能病院においては、設定されている紹介率・逆紹介率を満たさなければ、初診料・外来診療料が減算されるルールがある。紹介率についてはほとんどの医療機関で要求水準を超えているが、逆紹介については特定機能病院が突出して悪く、紹介受診重点医療機関もやや多い印象だ。






 高齢患者も多くなっていることから、複数の疾患をお持ちのため、診療科が多くある病院でまとめて受診することが身体的にも負担は軽く済むこともある。また、新型コロナ禍以降、医療機関の閉院や合併・統合も少なくなく、受診先が物理的になくなった、ということもあるかもしれない。診療報酬でできることには限界もあるので、まずは精緻な調査で現状を把握していくことが重要だといえる。個人的には、患者側の意識・受診行動の変容を促すような広報がもっと大事なように感じている。

 なお、逆紹介に関しては「連携強化診療情報提供」と「遠隔連携診療料」を積極的に運用していくことで継続して受診していても、逆紹介と見なすこととなっている。







 かかりつけ医機能報告制度で地域の外来医療の機能と実績が明らかになる。連携強化診療情報提供料なども積極的に利用することで、逆紹介と同等の取組を推進していくことが必要だ。


オンライン診療、正しく推進していくために「距離」をどうするか

 オンライン診療については、新型コロナ禍を経て、普及してきた。比較的ICTリテラシーの高い勤労世代では利用されている。






 その一方で、東京一極集中の実績、さらに、二次医療圏・都道府県を超えたオンライン受診がみられることが課題となっている。オンライン診療は対面診療の補完機能という位置づけであることを考えると、もう少し身近なかかりつけ医と行うことや少なくとも患者と同じ地域にオンライン診療先と連携関係にある時間外対応可能な医療機関があることなどが必要ではないかと思われる。今後、正しい推進に向けて、さらに議論が詰められていく。






 また、D to P with D(難病とてんかんを対象とする遠隔連携診療料)とD to P with N(へき地等における看護師等遠隔診療補助加算)の実績がすこぶる低調となっている。遠隔典型診療料については、対象となる疾患の拡大(医療的ケア児や眼科・皮膚科・耳鼻科など専門委との連携など)、看護師等遠隔診療補助加算では、現行では算定できない処置行為を算定可能とするなどの検討が進められていくことになぢそうだ。