続・地域医療の再編を巡る話題(病床の基本的な考え方を整理します)

4/06/2022

r4診療報酬 急性期 地域医療構想 入院医療

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 日本の医療は世界一、とよく言わてきたが、COVID-19感染拡大では医療逼迫と呼ばれる事象が起きたのは事実。日本の医療というと、保険制度も含めると幅広くなってしまうので、病床の考え方にフォーカスして整理してみる。

まず事実として押さえておきたいのは、世界の中で日本の病床数は多い(人口千人当たり)。これを指して、「日本の急性期病床は多すぎる!」という声がたまにあるが、それは間違いだといえる。世界各国で病床の考え方が異なるので単純比較が難しかったり、そもそも日本も「一般病床」を届出している。この一般病床とは、高度急性期から回復期までの幅広いレンジになるわけだ。


参考までに、日本の病床の考え方を医療法・地域医療構想・診療報酬の3つで整理してみると以下のようになる(わかりにくかったらすいません...)。

さらに、今回のCOVID-19感染拡大での対応を考えると、実際に患者の受入れができるのは、一般病床と感染症病床の合わせて89万床というように見かけでは映る。しかし、先に述べたように、そもそも一般病床とは幅広いレンジになる。もう少しセグメントが必要だ。

その中でもCOVID-19感染患者で重症者を受け入れることができるのはDPC対象病院の約48万床が該当するといえる。しかし、DPC対象病院・病床とはいえ、全てが高度急性期機能を担っているとは言い難い現状もある。例えば、DPC対象病院の中には回復期や慢性期の機能を有する病院(ケアミックス型)もあり、さらに、DPC対象病床の割合が低い病院もある。

九州大学名誉教授の尾形裕也先生によると「日本の高度急性期と急性期病床数は、30万床程度となり、総病床数の2割程度に過ぎない。実は世界先進諸国の中でも低い方になる」(2022年1月20日 医療・医薬品情報研究会 定例セミナーにて)とのことだ。

高度急性期や急性期医療は、機能を維持していくために非常にコストがかかる。さらに、自動車のエアバックなど事故対策テクノロジーも進んだり、在宅医療の進展もあり、救急搬送等は減少傾向にある。また、クリティカルな領域のため医師の役割が大きく負担も重い。そして、患者の重症度も高く、常に医療事故のリスクもあり緊張感が高い。そこで、手厚い人員配置・設備投資が必要になってくる。日本の医療の課題は、病床数ではなく、診療密度にあると思う。診療密度を上げることで、早期退院にもつながる。また、スタッフの負担を軽減するべく、近隣医療機関の対応力を引き上げることで、重症患者・軽症患者の振り分けができるようにし、高度急性期病院等に過度な患者の集中がないように、地域では負担の分散化を進めていくことが必要になる。令和4年度診療報酬改定では、高度急性期・急性期医療に対する手厚い評価が注目されたが、こうした背景があってのこと。


これから重要なことは、地域での話を通じた役割分担を地域で合意のもと進めていくことだ。医療資源は限られている。そのリソースを有効に活用するにも連携を加速し、診療報酬上のメリットも確認し、地域に医療機関が存続し続け、患者への対応を継続し続ける環境を守っていくことが大切だ。


※本投稿では、2022年1月20日 医療・医薬品情報研究会での尾形先生の講演資料を一部利用して作成しました。

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