全世代型社会保障構築会議報告書より~かかりつけ医機能の在り方、医療におけるリスキリングの推進などに注目~

12/21/2022

ニュース解説 経営

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 令和4年12月16日、これまで議論されてきた「全世代型社会保障構築会議」での報告書が公表された。子育て支援、働き方改革、医療提供体制と介護保険制度改革など医療業界だけではなく、あらゆる業界・領域での生活を支えるためのこれからの整備となっている。多くのメディアでも紹介されているところではあるが、注目すべき点に焦点を当てて解説したい。

〇子育て支援と働き方改革関連

子育て支援については、出産一時金の増額に注目が集まっているが、0-2歳児に対する「伴走型相談支援」も注目されるところ。これは、妊娠時から相談対応などできる体制。また、必要物品購入や各種サービスを利用する際の負担軽減などの経済的支援についても別途検討されることとなっている。また、令和4年度から保険適用となった不妊治療についてもさらなる普及促進がうたわれていることから、次回診療報酬改定の議論でも注目されるところ。



そして、子育てしやすい社会環境作りについても踏み込んでいる。それが、働き方改革の推進であり、社会保険適用の拡大だ。後者については、勤労者皆保険、といったキーワードが目に付く。多様な働き方をしながら、出産・育児ができる社会作りは非常に喜ばしい一方で、経営者側にとってみると負担が重くなることになる(参照:社会保険の適用対象者の拡大、今年中に方針が示される可能性も ~全世代型社会保障構築会議~)。





〇医療制度関連

後期高齢者医療保険への応能負担の考え方の導入、かかりつけ医機能の考え方がその中心だ。後期高齢者医療保険については、雇用延長の推進ともセットで考えていく必要があるが、個人的に気になるのは、先の社会保険適用拡大にもつながることだが、企業内での新規採用などに影響が出ないか、ということ。そうしたことも見越してなのか、岸田政権では「スタートアップ5か年計画」を策定している。新たな事業を創造することで雇用も生み出すということにつながる。制度政策は、横のつながり・連携をしっかり見ていくことが重要だ。

また、かかりつけ医機能についてはこれまでもご紹介してきた通りで、登録・認定は行わず、地域住民に対するわかりやすい情報提供と地域医療構想調整会議等を通じた複数医療機関での連携を通じた地域の穴埋めを行っていくこととなっている(参照:かかりつけ医機能、個々の医療機関の頑張りではなく、地域で必要な機能を補完しあうことをコンセプトに。)。また、複数の疾患を有する高齢者などに対しては、単独でかかりつけ医機能を有する医療機関については別途届出・情報提供できることを考えているようだが、これは機能強化加算などが該当するではないかと思われる。かかりつけ医機能にも、単独で機能を満たす施設と機能を小分けして持つ施設の2パターンあることとなるだろう。さて、ここで注目したいのは「地域医療連携推進法人を活用」という言葉だ。春の建議ではEDRGの導入(外来検査~入院・手術・リハビリテーション~退院~経過観察の医療機関をまたぐ一連の流れ)について検討することを、骨太方針2022では地域医療連携推進法人の見直しについて記載があったところ(参照:地域医療連携推進法人に対する横連携型の診療報酬とは? ~術前から退院、経過観察までの一連の治療を包括支払い~)。最終的なゴールとしては、各地域で入院・外来を一元化する連携法人体制を作っていくことを考えているように見える。すでに始まっている新類型の地域医療連携推進法人の議論を今後も注目したい(参照:個人立医療機関も参画できる地域医療連携推進法人の新類型を検討へ)。



〇医療DX関連

全国医療情報プラットフォームの設立が改めて記載されている。患者自身による健康管理については、患者だけでは限界がある。そこで、かかりつけ医機能を有する医療機関、かかりつけ薬局を加えた3者連携が重要となる。一般企業も加え、こうしたヘルスケアデータの活用の在り方とビジネス化によるコスト軽減など考えていくことが必要だ。


〇地域共生社会作り関連

地域に根付き、支援できる人材育成として、様々な領域の橋渡し役となるコーディネーターとなるソーシャルワーカーの育成に言及されているのは注目したい。また、以前からも議論されていた既存の専門職者による他の医療・介護・福祉の専門資格の早期取得に向けた共通基礎教育など明記されている。昨今のリスキリングブームもあって、改めて前向きに検討が進んでいくことを期待したい(参照:規制改革推進に関する答申案を読む① ~医療従事者のタスクシフトと「共通基礎課程制度」~)。



今後の社会保障の在り方を示した今回の報告書は、取組の優先順位、中長期的な目標が設定されている。取組を着実に実行し、評価するには期日と成果指標は必須。今回の報告書はそうした取組の評価ができるようになっている点にも注目すると共に、今後の道しるべとして、改革への対応を先んじで行っていきたい。

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