受診頻度が下がることで起きることは? 入院に至らない救急車の利用に選定療養費という地域も~地域医療としてできる対応策を考える~

1/21/2024

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 令和6年1月16日付の「東奥日報」に「協会けんぽ青森の健康保険料率、2024年度は9.49%に引き下げ 医療機関受診に消極的な人多く」というニュースが掲載された(Yahoo!ニュースで閲覧可能)。新型コロナ感染拡大期は全国的に受診控えが起きたが、青森県は全国に比べ、受診控えの影響は小さかったとのこと。しかしその一方で、受診の戻りも鈍く、24年度の料率算定の基礎となる22年度の医療給付費実績が、当初の見込みよりも大幅に少なかったため、保険料率が下がる算定結果となったとのことだ。企業の従業員にしてみれば、経済的な負担が減ることは望ましいといえる。また、令和6年度診療報酬改定では、生活習慣病で軽症と考えられる患者・病状が安定していると判断される患者については受診頻度を下げるべく、特定疾患処方管理加算の新たな区分の設定(現状は28日以上だが、さらに長期処方を促す内容を検討)やリフィル処方箋の勧奨などを生活習慣病管理料や特定疾患療養管理料の要件の見直しと共に盛り込むことが検討されている(参照:診療報酬の改定率が確定。受診頻度を下げることで適正化を図る文言から読み解けること。)。ただ一方で気にしておきたいのは、受診間隔が大きくなることで、重症化等の変化の気づきを医療機関で得られにくくなり、次の受診時には重症化した状態になり、かえって医療費が高くなると共に医師をはじめとする医療従事者の負担が重くなってしまう懸念がある。

会う回数がさらに減る患者が増えてくること見越して、今から考えられる対応を考えておきたい。

東北大学藤森教授による医療提供状況の可視化」の「R03都道府県別診療行為」を利用して、都道府県別の検査・診療行為の地域差を、今回の診療報酬改定でも強化をしている「慢性腎臓病対策」の視点で確認してみよう。まずは尿蛋白検査に関する地域差。青森県に注目してみると、割合として低くなっている。健診等を強化して、早期介入できる機会を作っていくことが必要だといえる。


生活習慣病管理料の状況もみてみると、こちらも割合が低い。受診に消極的な人が多い、ということの一つの表れともいえるし、医療提供体制や医療機関からの周知・広報の課題かもしれない。


特定疾患療養管理料についても見ようと思うが、ここでは情報通信機器を利用した特定疾患療養管理料の状況で見てみる。すると、割合が高めに出ていることがわかる。受診に消極的、というのは地理的な課題があってのことも考えられる。情報通信機器の利用は、地理的な課題の解決にもつながるので、活用をさらに促していくことは有用だと思える。ただし、生活習慣病管理料は情報通信機器を利用した診療の対象外だ。


糖尿病透析予防指導管理料についてもみてみよう。こちらは割合が低くなっている。しかしながら、糖尿病透析予防指導管理料は情報通信機器を用いた診療の対象となっていることから、今後は情報通信機器を活用した取組を検討していくことが有用になってくる可能性がある。

なお、今回の調剤報酬改定では、薬局薬剤師による服薬フォロー及び処方元へのフィードバックを評価する「調剤後薬剤管理指導加算」の拡充(現在はインスリンやSU薬を服用する糖尿病患者のみだが、心不全患者等対象を拡大する見通し)や服薬情報等提供料の見直しなどが検討されており(参照:調剤報酬のトレンドは、対人業務の質と比重を高める方向に突き進むこと)、広がる受診間隔の間を薬局薬剤師が埋めるかのような連携の推進が図られることが期待される。「調剤後薬剤管理指導加算」については、昨年公表された改革工程表2023でも「2024年度までに2021年度と比べて90%増加」というKPIが設定されていることを忘れてはいけない(参照:「改革工程表2023」より、医療機関・薬局の経営と実務、健康寿命延伸・医療費適正化に関するポイントを整理しました。)。また、今後も引き下げられるであろう調剤基本料への依存度をさげるためにも、対人業務ともいえる「調剤後薬剤管理指導加算」への取組は必須だともいえる。


そして、何よりも地域住民の地域医療への参加・理解・協力を引き出すための医療機関・薬局・保険者による広報・周知活動が重要であることを改めて確認しておきたい(参照:厚生労働省による「医師の働き方改革」特設サイトがオープン。地域住民の理解と協力を発信力で引き出す。)。今回の診療報酬改定では、地域医療情報連携ネットワークの活用などのICTサービスの利用もキーワードになっているが、患者情報を共有することの理解を得るためにも、これまで以上に地域住民の参加・理解・協力が必要だ。


受診頻度が下がることの影響、そして診療報酬・調剤報酬・改革工程表から見えてくる医療提供体制に対する国側のスタンスを確認しながら、考えられる取組を、地域をあげて、主役である地域住民を巻き込んで進めていく仕組み創りが求められている。

令和6年1月19日付の「夕刊三重新聞」に「6月から1件7700円を徴収 救急車〝便利使い〟歯止め 救急搬送され入院至らずの患者 三重・松阪市」というニュースが掲載されている(Yahoo!ニュースで閲覧可能)。地域の医療資源が限られ、受診頻度が下がる時代では、地域住民の参加・理解・協力が必要であることを強く感じさせられる。

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