調剤報酬のトレンドは、対人業務の質と比重を高める方向に突き進むこと

11/09/2023

r6同時改定 経営 在宅医療 地域包括ケアシステム 薬局 薬剤師

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 令和5年11月8日、第562回 中医協総会が開催され、入院・調剤・外来について議論された。それぞれの論点については、「【先出し論点確認】令和5年11月8日の中医協総会では、急性期入院・調剤・オンライン診療を議論」で紹介している。ここでは、調剤について詳細を確認する。テーマは対人業務のさらなる推進と評価の拡充だ。

参考:対人業務の比重が高まる薬局経営、次回改定に向けた議論の論点整理が行われる

薬局に関する制度は、基本的に「患者のための薬局ビジョン」に基づいて微調整をしながら、粛々とおこなわれている(参照:改めて読み返し、基本姿勢に立ち返るための「患者のための薬局ビジョン」)。2035年には立地も地域へ、という最終目標になっているが、それに先立つ2025年には地域での活躍ができるようにかかりつけ機能を有することが期待され、当面のゴールと設定されている。今回の調剤報酬改定は、その最後のチャンスとなる。今回に議論ではそのかかりつけ機能について、患者視点での求められる機能について、さらに実際にかかりつけ薬剤師指導料加算を算定する薬局でのかかりつけ機能について改めて確認されている。そこからわかることは、服薬指導において、成果が感じ取れることだ。



ただその一方で、課題も露呈されている。例えば、吸入薬指導加算や糖尿病患者のフォローアップの評価である調剤後薬剤管理指導加算については、実際はかかりつけ薬剤師が関わることがありながらも、併算定できないことなど。次回改定では、こうした点で見直しを図ることになると思うが、その分、対物業務に関わる評価は引下げることになりそうだ。


薬剤師によるフォローアップについては、薬機法改正において「必要に応じて」ではあるが義務となっている。なお、医療機関に対する報告は努力義務だ。調剤報酬では、先に紹介した調剤後服薬管理指導加算(インスリン製剤やSU薬を服用する糖尿病患者が対象)、特定薬剤管理指導加算2(悪意性腫瘍の患者)などがあり、近年実績を伸ばしている。今回の議論では、新たに心不全患者の服薬フォローを追加することを提案している。循環器病対策推進基本計画も始まっており、循環器領域は内服薬も多く、命に係わることもあり、妥当なように思う。また、地域包括診療料/地域包括診療加算の対象疾患の一つでもある。


服薬フォローの方法についても議論されており、60歳未満では情報通信機器の利用しているケースなどもあることが報告されている。お薬手帳と連動した形での服薬フォロー、ただし、一斉送信ではなく必ず個別性を反映したものでなければならないが、情報通信機器の利用の場合の評価やそもそも「電話等により」となっている箇所に情報通信機器も含めた内容に見直していくことなど考えられそうだ。


医療機関との連携の観点では、「服薬情報等提供料」について議論されている。こちらは、近年実績が大きく増えているが、問題は、その連携の内容だ。医療機関側が求めることとのギャップがないかなど、連携の質の焦点が当てられそうだ。



以前もお伝えしたが、医師側としては処方提案の期待値も高い(参照:対人業務の比重が高まる薬局経営、次回改定に向けた議論の論点整理が行われる)ことを意識しておきたい。

また、前回改定では服薬情報等提供料3として、入院前に持参薬を薬局で整理することを評価できることとなったが、実績は少ない。主な利用が、病院側からの依頼がないことがあげられている。これは、退院時共同指導料の算定件数が薬局では少ない理由と同じだ。病院側からの働きかけを引き出すための日ごろからの連携、ホットラインなど構築しておきたい。患者だけがお客さんではなく、医療機関も大事なお客さんだ。


かかりつけ薬剤師として期待されていることとして、ポリファーマシーへの対応も挙げられる。調剤報酬においても、減薬に至らずとも処方薬リストを整理して医師に連携することで評価されるようにもなっている。また、調剤管理加算を算定する薬局においては、ポリファーマシーや残薬解消の取組に積極的であることが示された。


電子処方箋の利活用、オンライン資格確認の利活用と連動した評価拡充の可能性が考えられる。

かかりつけ薬局としての機能についても確認され、夜間・休日対応を含む24時間対応についても議論されている。かかりつけ薬局に期待されるのは、医薬品の提供体制の確保ということもあり、薬局そのもののかかりつけ機能も重要だ。とはいえ、薬局では勤務スタッフが少ないケースも多く、単独での対応には限界があり、近隣の薬局との連携でカバーしていくことなどでの対応は目先では求められる。



なお、かかりつけ医機能を評価する地域包括診療料/地域包括診療加算では、24時間対応できる薬局との連携が求められていることもあり、薬局の開店時間などの情報などを近隣の医療機関や介護事業者に以下に周知していくかも合わせて重要なテーマだ。


単独での対応、近隣薬局との連携での対応と共に、周知に関する取り組みも含めた24時間対応体制に関する評価の可能性に注目しておきたい。令和7年度から始まるかかりつけ医機能報告は、特定の医療機関に負担が生じないように、複数の医療機関で地域をあげたかかりつけ医機能の発揮が目的となっているように、薬局も同じく地域をあげた取組が主体になっていくこととなるのではないだろうか。

その他、かかりつけ薬局の機能として医療用麻薬に関する議論も行われているが、そこでは、希釈せずに無菌調製を行う場合、無菌製剤処理加算が算定できないことなどが話題に上がっている。麻薬の備蓄には多大なコストもかかることから、評価の見直しに期待が集まる。

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