令和5年11月15日、第564回 中医協総会が開催された。診療報酬に関しては、入院(回復期領域)と働き方改革について議論されている。その他、薬価収載にあわせたDPCの高額薬剤判定についてなどの報告があった。ここでは、働き方改革について確認していこう。
勤務医の働き方改革の本格的スタートを控え、先日その準備状況が報告されたところ(参照:勤務医の働き方改革に向けた準備状況はどうなっているのか?)。あくまでも、勤務医の働き方改革はいよいよスタートするということであって、そこがゴールではなく、例えば特例B水準は2035年には廃止されることになるため、2024年度から10年かけてA水準になるように絶えず時間外労働の短縮化に向けた取り組みを続けていかなければならない。また、今回の診療報酬改定の基本的視点の重点課題としても挙げられているのが、人材確保・働き方改革となっており(参照:令和6年度診療報酬改定の重点課題は「人材確保・働き方改革の推進」。「物価高騰」を踏まえた対応も盛り込むことに。)、診療報酬でも勤務医の働き方改革の更なる後押しが期待される。
これまで、入院・外来医療等の調査・評価分科会などで働き方改革に関する診療報酬項目に関する検証と今後必要とされることについて議論されてきている。今回の議論はこれまでの議論を踏襲してさらに細部を詰めていっているもの。
参考)診療報酬改定は働き方改革を推進できたのか?これからどうするのか?
これまでの重要なポイントも振り返りつつ、注目したいポイントを中心に確認してみよう。
〇地域医療体制確保加算、医師の長時間労働をどうやって是正するか?
一見すると矛盾するかのようだが、先にご紹介した勤務医の働き方改革に向けた準備は進んでいる、という結果が出ているのだが、地域医療体制確保加算を届け出る病院における時間外労働は逆に増加している。
高度急性期を有する病院が届出る急性期充実体制加算と総合入院体制加算のうち、急性期充実体制加算を届出る病院が地域料確保体制加算を届出ている割合が一定数があるが、急性期充実体制加算では総合入院体制加算と異なり医療従事者の負担の軽減及び処遇の改善に対する取組要件が弱いことなどが確認されている。急性期充実体制加算の要件の見直しも含めて、今後注視しておきたい。
〇特定研修修了者、病院薬剤師への期待
タスクシフト・タスクシェアを推進していく上で、看護師や薬剤師といった専門職者との連携強化、チーム医療の推進は欠かせない。今回の議論では、近年増加傾向にある特定行為研修を修了した看護師と病院薬剤師に対する評価拡充が検討されている。なお、いづれも第8次医療計画において、各都道府県において就業者の目標値を設定することとなっていることから、診療報酬での後押しが期待される。今回の議論では、特定行為研修を修了した看護師の病院での配置状況について紹介されているが、急性期充実体制加算など救急対応の多い加算や特定集中治療室においてはやや手厚く配置されていることが分かった。
修了者も増えてきたことから、高度急性期の場面での活躍と医師の負担軽減を推進する観点からも新たな評価の創設や拡充には十分といえる時期を迎えているように思える。
また、勤務医による負担軽減の取組で評価が高いものとして、薬剤師による患者への説明などがあげられていたのは記憶に新しい(参照:診療報酬改定は働き方改革を推進できたのか?これからどうするのか?)。第8次医療計画では薬剤師の偏在宅も都道府県の重要な取組となることから、病棟薬剤業務実施加算などの拡充・要件緩和が大きく期待される。また、医師をはじめとする他職種の負担軽減に資するべく、薬剤師の教育・研修の充実に取り組む病院もあることが紹介され、その取り組みの一環としての地域の病院等への出向したりするなどして経験を積んだり、連携を促進すること、地域全体の薬物療法に関する質の向上に貢献できると期待される。急性期充実体制加算や総合入院体制加算といった地域の基幹病院に対する新たな評価や既存の項目への要件追加など考えられるのではないだろうか。近年の診療報酬では、基幹病院とのカンファレンスや研修などが評価される傾向にあることから、新たな評価の可能性として注目すると共に、薬剤師不足解消に大きな期待が寄せられる。
また、こうした研修・学びを通じて、多職種連携を深化させたり、地域の病院でも自院での取組を周知・運用先を拡大していくことにつながる期待がある。そこで、第四期医療費適正化計画でもその取り組みが明記されているポリファーマシー対策の推進につながってくる(参照:医療資源の投入量に差がある医療(外来化学療法やリフィル処方箋)を適正化~第4期医療費適正化計画、審議会で了承~)。なお、ポリファーマシー対策についてはチーム医療でのアプローチをもっと強化すべく要件の緩和などの見直しが検討されている。
基幹病院での経験、と仕組みを周囲に広げ、地域全体の医療の質向上と対応力向上を図る。感染対策向上加算1や人工腎臓の導入期加算3などでもみられたものを、薬剤師にも当てはめていくことが考えられそうだ。
〇医師事務作業補助者、看護補助者はさらなる質の向上と職場定着化を
医師の負担軽減の取組で常に評価の高い医師事務作業補助体制加算。次回改定では、さらに貢献度を高めるべく、高度な業務内容への対応や効率化を進めるための院内教育体制や人事制度の整備が次なるテーマとなりそうだ。
一方で、看護補助者については、近年減少傾向にあることなど課題がある。そこで、雇用形態の在り方や定着化に向けた取組について紹介されている。正規職員であることや給与や研修の充実などの取組が重要であるとのことだ。昨今の人件費の動向なども踏まえて、点数そのものの見直しなどは大いに考えられると共に、患者への直接ケアへの関わりなどより看護師の負担軽減に資する取組ができる研修体制の構築や実践の有無で評価にも差が設けられることが考えられそうだ。
なお、高度急性期や急性期において介護施設等からの治療目的や緊急搬送による入院が多いことが明らかにされているが、その結果、食事介助などの対応に看護師も苦慮していること、入院期間が長くなりがちであることが指摘され、病棟への介護福祉士の配置などを検討・評価の可能性を感じさせていたが、介護サービス事業所自体も人材採用・確保に苦戦していることから、急性期領域での介護福祉士の配置についてはやや難しいように感じられるが、どうだろうか。
〇ICTの積極的な活用で、場所に関係なく、専門性の発揮を
介護報酬では介護ロボットに対する評価の検証が進んでいる。診療報酬でも様々なアプリケーションなどがあり、評価を検討してもよいのでは、といった議論となった。ICTを用いた様々な負荷の軽減について議論されたが、チーム医療に関する評価にある常勤や専従の要件を緩和することや介護保険施設等での医療依存度の高い患者に対する指導を受けたり、研修を受けることなども提案されている。地域で人材を共有化するといったものとなるかもしれない。
その他、手術・処置の時間外等加算の見直しについても触れられおり、複数主治医の要件見直しなども検討されそうだ。