情報通信機器を用いた診療、医療の地域差解消に期待も、適正な使用が課題に

11/08/2023

r6同時改定 医療ICT 遠隔医療 外来診療 患者 看護師 経営 地域包括ケアシステム

t f B! P L

 令和5年11月8日、第562回 中医協総会が開催され、入院・調剤・外来について議論された。それぞれの論点については、「【先出し論点確認】令和5年11月8日の中医協総会では、急性期入院・調剤・オンライン診療を議論」で紹介している。ここでは、外来について詳細を確認する。なお、今回の外来は情報通信機器を用いた診療についてだ。


〇オンライン診療、適正な使用を

情報通信機器を用いた診療については、推進方針が示されていることもあり(参照:D to P、D to P with N...、これからのオンライン診療・遠隔医療の推進方針が明らかに)、今後積極的な促進策が期待されているものの、先に公表された診療報酬改定の基本的視点にはICTという言葉あるものの、具体的に「情報通信機器を用いた診療」とか「オンライン診療」といった文言が見当たらず、やや気になっていた。これまでの中医協の議論で、オンライン診療については不適切と思われる事例が報告され議論を呼んでいたことを考えると、積極的に、というよりも適正に推進していく、という方向になっていこうとしているようにも思える(参照:外来医療に関する評価の焦点② ~かかりつけ医機能を地域で発揮する視点と診療の継続性向上に必要な患者の協力~)。

今回の議論においても、オンライン診療の受診者の所在地と受診医療機関についての実際についても報告され、急病急変時の速やか対応のために直接の対面診療ができる体制にないケースがあることが問題視されている。



地域の事情で、必要な診療科を標榜する医療機関がないなどの特殊な例の場合もあることだろうが、少なくとも緊急時の対面診療を確保する体制の厳格化や、患者の居住地と異なるオンライン診療の提供については一定の制限がかかってくることなど考えられるだろう。患者のフリーアクセスを守ることも重要だ。

また、妥当とは言い難い処方について、これまでの議論でも上がっていた不眠症に関する診療・向精神薬の処方についてもその実績が示された。


厳密なルールの徹底もさることながら、個別指導の強化なども考えられる。またいつ起きるかわからない新興感染症の拡大による受診抑制の場面では、オンライン診療は大きな効果を発揮する。医療機関側から積極的に進めるものではなく、患者からの要望や感染拡大時の利用などで使えるように、環境整備の一環として、患者と医師との合意による選択肢の一つとして備えておくことは必要だと個人的に思うので、平時からの適正使用を徹底できるルールの見直しは必要だと思う。


〇CPAP療法でオンライン診療を有効活用するための整備を

情報通信機器を用いた疾病管理として、指導料等について改めて議論されているが(参照:外来医療に関する評価の焦点② ~かかりつけ医機能を地域で発揮する視点と診療の継続性向上に必要な患者の協力~)、その中で睡眠時無呼吸症候群の診療でのオンライン診療について、学会よりその有用性と有効性・安全性を担保するための基準が公表されていることが示された。


また、政府が近年力を入れている花粉症対策の中でも適切な診療、医療機関の周知の一環でオンライン診療可能な医療機関を周知することも盛り込まれていることも紹介している。


疾病の継続的な管理という観点の評価を実現すべく、安全性等を担保する要件を設定した上での対象の更なる拡充が期待されそうだ。


〇医療資源が限られた地域での診療、指定難病など医療の地域差を遠隔診療でカバーを

先にご紹介した情報通信機器を用いた診療の推進策にもあるように、医療の地域差を埋めるべく、D to P with NやD to P with Dの有用性について紹介されている(参照:D to P、D to P with N...、これからのオンライン診療・遠隔医療の推進方針が明らかに)。特に、来年度は第8次医療計画も新たに始まることもあり(参照:診療報酬とは、医療計画を下支えするもの~5事業に対する診療報酬での評価の方向性を読む~)、医療の地域差の解消の解決策の一つとなる情報通信機器を用いた診療には期待が集まるものの、実際に利用しているケースはまだ少ないのが実情だ。


そこで期待されているのが、D to P with N方式。最近では、情報通信機器を積んだ診療車に看護師が同乗して、患家等から看護師同席でオンライン診療を行うこともある。医師不足の地域においては有効だ。診療報酬上での後押しが期待されるところだ。

またD to P with D方式としては遠隔連携診療料がすでに評価されているが、その実績は非常に少ない。指定難病の確定診断までであることやてんかんの診療の場合は1年の制限があることなど、やや使い勝手が悪い面がある。また、そもそもこうした項目の認知度が低いことや、難病拠点病院など連携先が非常に限られていることなども課題だといえる。



今回の議論では、この遠隔連携診療料について確定診断後の診療でD to P with Dの有効性を認めた事例などが示され、実績が少ないこともあってか、対象患者の拡大などが前向きに検討されていきそうだ。



対象が拡充することで恩恵を受ける患者が増え、医療の地域差の解消となることが期待される。その一方で、難病診療連携拠点病院等はもと数がもと限られていることもあり、特定の医療機関に負担が集中してしまうことを少しでも軽くするような見直しも期待したいところだ。


ブログ アーカイブ

お問い合わせ

名前

メール *

メッセージ *

QooQ