令和5年11月24日の第567回中医協総会の資料が公表されている。テーマは、DPC/PDPS・長期収載品・緩和ケアとなっている。なお、今回の中医協総会では医療経済実態調査の結果が公表されているが、各委員からの評価・分析結果が近いうちに中医協で公表されるので、その際に改めてお伝えしたい。ここでは、長期収載品について確認する。
骨太方針2023に長期収載品の在り方について検討することが記載されている(参照:骨太方針2023の原案が公表。医療分野を確認します。)が、具体的には後発医薬品のある長期収載品からの後発医薬品への切替を促すための政策だ。後発医薬品の使用促進はロードマップも作成されるなどして、積極的に取り組まれてきており、数量ベースではほぼ80%を達成しているものの、金額ベースでは世界と比較しても低い41%という状況だ。そこで、令和6年度からの医療費適正化計画では数量ベースから金額ベースでの数値目標の設定に見直すこととなっている(参照:数量ベースから金額ベースへ。後発医薬品の使用促進策の今後)。
その一方で、長期収載品(ブランド品とも呼ばれる)については、他国と比較してもまだ高い水準にある。
そこで、長期収載品からの切替を促すため、これまでも「参照価格制度」の導入について度々議論されてきていたところ。長期収載品と後発医薬品の薬価差を患者自己負担とするものだ。今回、骨太方針でも明記されたこともあり、本格的な議論となった。ただ、参照価格制度とは後発医薬品のある長期収載品に対して一律に設定されるものとなっている。例えば、昨今の問題である安定供給や治療上の必要性や医師の診療方針などは反映されないため、場合によっては患者に不利益が生じる可能性もある。また、後発医薬品の価格が高止まりしてしまうこともありうる。
そこで、治療等での必要性など医師の判断や安定供給の状況に対応した設計とした上で、患者の希望による長期収載品の選択として、選択療養の形をとることとなりそうだ。今後は、薬価制度とも連動して、後発医薬品への切替が進まない長期収載品の薬価引き下げに関する現行ルールの見直しなども検討されていくこととなるだろう。なお、懸念されることとしては、すでに薬価が下がりきって後発医薬品と同薬価にまでなっている長期収載品の扱い(薬価が同じなので切替えの経済的メリットがない)、AG(オーソライズドジェネリック)の扱い(特許期間中に後発医薬品メーカーは先発医薬品メーカーにロイヤリティを支払って、早く後発医薬品を販売することができる。製造特許を引き継いでいるので医師や患者にとって選ばれやすい。その一方で、先発医薬品メーカーによる後発医薬品市場の囲い込みとの批判もある)などがある。また、個人的に気になっているのが、市販類似薬に対する新たな患者自己負担の設定の議論だ。
こちらも検討することになっているが、長期収載品の自己負担と合わせて考えると、軽症者の受診抑制となり、結果として後発医薬品そのものの処方が減り、スイッチOTCがその一方で進むことで、先発医薬品メーカーがさらに市場で強くなっていくことが起きないか(先発医薬品メーカのほとんは一般医薬品を製造しているが、後発医薬品メーカはそうではない)、ということだ。薬価制度やマーケットの健全な育成にも関わってくる。
患者にとってのメリットを第一に据えた制度設計に期待が集まる。