令和5年6月7日、経済財政諮問会議が開かれ骨太方針2023の原案が公表された。まだ原案なので、これから調整・修正もあろうかと思うが、春の建議や医薬品安定供給の有識者会議の提案が随所にみられる内容になっている一方で、やや迫力不足の感もあるように感じた。国政選挙の可能性を含んでいるのだろうか、と余計なことを考えてしまう。医療分野に絞って、個人的に注目したポイントを見ていきたい。
参照)
春の建議「歴史的転機における財政」が公表。医療分野のポイントを確認します。
過度な薬価差の偏在是正策の必要性を。今後調査の上、クローバック制を参考に検討へ~医薬品安定供給有識者検討会~
春の建議でも強調されていたが、地域医療構想を強力に推進するための法制の見直し、地域医療連携推進法人の有効活用が盛り込まれている。また、薬局の対人業務を推進するべく対物業務の効率化にも触れ、業務の第三者委託などの推進などをイメージさせる。また、リフィル処方箋の活用推進についても触れられている。重要な視点は、医療の地域差について論じている項でリフィル処方箋の推進がうたわれていることだ。医療費適正化計画でも都道府県ごとの目標値などの設定、後押しする診療報酬・調剤報酬での新たな評価の可能性を感じさせる。さらに、その先の未来まで考えてみると、本年5月から始まっている外来データ提出加算や外来機能報告を基に、外来医療の再診からの包括化が検討・導入がいづれからのタイミングで行われ、リフィル処方箋の方が患者メリットがあるような評価体系になっていくことなど私は予想する。
医療DXについては、先日の医療DX推進本部での工程表などを基にまとめられている(参照:診療報酬改定DX(施行時期の後ろ倒し等)、早くとも2026(令和8)年度からの実施へ)。標準型電子カルテの整備、という文言からわかるように、電子カルテ導入及び標準規格に準拠する電子カルテへの更新を支援する医療情報化支援基金が近く出てくることになるだろう。
また、PHRについては本年度末にお薬手帳のガイドラインが公表される予定になっている。マイナポータル・電子処方箋との組み合わせて、今後は電子版お薬手帳がキーポイントになってくるだろう。
デジタルヘルスの参入促進策を公的にも進め、健康寿命延伸(予防・重症化予防)に資するテクノロジーを積極手に取り入れていく環境を整備していく方針だ。歯科衛生・栄養領域における取組、リハビリテーションとの連携を強化していくことで、筋力増強・免疫力でリハビりテーション効果を高めることなど期待されている。診療報酬・介護報酬においても、管理栄養士の役割強化・積極的な人員配置が評価されてきており、また地域で管理栄養士という人材を共有・活躍してもらう環境は既にあり、ますます期待されるところとなるだろう。
医薬品安定供給の有識者会議の報告書案にあった、長期収載品と後発医薬品の差額を患者に自己負担してもらう取組、いわゆる参照価格制度と受け取れるものを検討することが盛り込まれている。参照価格制度については、後発品価格が高止まりし、長期的には薬剤費が不変もしくは増加する傾向になる懸念もあること、患者負担を導入することに国民の納得が得られるか、まだ気になるところ。骨太方針2023の最終版まで注視しておきたいポイントだ。また、バイオシミラーの推進が文言とし手昨年に引き続き盛り込まれた。
今回、注目したポイントの一つ。医療介護分野の人材紹介における手数料が高くなっていることが、経営においても大きな課題になってきている。そうした状況に、何らかの介入を示唆している。今後の取組に注目が集まる。
来年度のトリプル改定に関する方針がまとめられている。物価高・賃金上昇・人材確保に対応する一方で、少子化対策のための財源確保を名目に社会保険の負担を抑えていくための取組を行う方針で、現時点では少子化対策について具体的な施策が見えていないため、年末の予算編成を待つ必要がある。なお、トリプル改定という6年に一度の大きな見直しともなるので、医療・介護・福祉の枠を乗り越えた連携などに焦点を当てた評価など注目される。
他にも、介護保険料について利用者負担の一定以上所得の範囲の取扱いなどについて年末までに結論を出すこと、被用者保険の適用拡大の議論を進めること(近々解説します)なども記載されている。
骨太方針に記載されることは、必ず実行される、国民との約束ともいえる。これまでも原案から最終版までの間に内容が修正されることが度々あったが、それは約束の重さゆえのこと。最終版までしっかり追っていきたい。