健康寿命を3年延伸する、というキーワードは2040年以降に訪れる本格的少子高齢社会に向け田重要な取り組みのキャッチコピーだ。健康寿命を3年延伸する、これを言い換えると、生活習慣病などの慢性疾患を持つ患者が、少なくとも3年間は現状維持できるように、かかりつけ医・かかりつけ薬剤師・患者本人の3者でしっかり対応をしていく、ということ。かかりつけ医機能についてはつい先日改正医療法にて成立し、かかりつけ薬剤師については調剤報酬における地域支援体制加算や認定薬局で明確にされている。そして、患者に対しても健康寿命を3年延伸するための制度の見直しが着々と進んでいる。それが、社会保険(健康保険・国民健康保険等、年金)の適用拡大、というもの。こちらもわかりやすく言うと、働くすべての人に社会保険を、そして長生きしてもらって年金受給額を増やしてもらおう、というもの。
地域住民・患者視点で社会保険適用拡大で得られるメリットを考えると、傷病手当や出産手当、年金の受給額が増えることが考えられる。国としても、これからの人口減少社会を考えると、年金財政の安定化につながることとなる。その一方で、デメリットとしては労働への対価の手取りの受け取り金額が減少する(約15%の減少)ことだろう。社会保険料は事業者との折半になるので、事業者としても厳しいところ。多くの共働き家庭では、一方の扶養の範囲内に収まるように収入などを調整していることだろう(我が家も同様です)。それが、106万円の壁(従業員100名以下の企業で働く場合は130万円の壁)と呼ばれるもの。以前もお伝えしたが、この壁は令和6年10月からぐっと引き下げられる。従業員数の基準が50人にまで引き下げられるためだ。
参照)
社会保険の適用対象者の拡大、今年中に方針が示される可能性も ~全世代型社会保障構築会議~
そして令和5年5月30日、第4回社会保障審議会年金部会が開催され、社会保険適用者の拡大に関する議論が行われたところ。その審議会では、3つのモデルケース・それぞれの試算が提示された。
従業員数や勤務時間に関する基準は撤廃した(70万円の壁?)新たなものとなる見通しだ。医療・福祉業界は常用雇用者に占めるパート等雇用者の割合50人未満の事業者が多いことから、事業者にとっては悩ましい側面も出てくるだろう。
補償は手厚くなる一方で、手取りが減少する可能性が高くなり、事業者の負担が増すことになる、それが社会保険適用者拡大の影響なのだが、現在の議論には少子化対策の財源確保の意味もあると思う。また、健康寿命を延伸してお年を召されても長く働き続けることに対するインセンティブと前向きに捉えて、かかりつけ医・かかりつけ薬剤師のアドバイスを守る意識を持つことが地域住民・患者には求められる。2040年までにそうした意識と関係性を構築していくことが地域包括ケアシステムでは必要不可欠だ。