令和5年6月6日、5月下旬の開催が突如中止されていた「第13回 医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」が開催され、報告書案が提示された。内容は、これまでの議論に沿ったもの。安定供給問題の原因にもつながる後発医薬品業界における「少量多品目生産」の解消などが注目されている。
個人的に気になったキーワードは以下。
・バイオ医薬品の製造や人材育成支援を通じた、バイオシミラーの国内製造の促進
・⾧期収載品による収益への依存から脱却を促す。そこで、⾧期収載品の様々な使用実態に応じた評価を行う観点から、選定療養の活用や、現行の薬価上の措置の見直しを含め対応を検討
・新規モダリティなどの革新的医薬品についての新たな評価方法を検討
・医療上特に必要な革新的医薬品の迅速導入に向けた新たなインセンティブを検討
・市場拡大再算定について、再算定の対象となる類似品の考え方の見直しを検討
春の建議では市販薬類似品に対する自己負担について、今回の報告書案では長期収載品と後発医薬品の差額分の自己負担が取り上げられ、間もなく取りまとめられる骨太方針2023への記載がどうなるが注目されるところ(参照:春の建議「歴史的転機における財政」が公表。医療分野のポイントを確認します。)。しかし、選挙が違いとの報道も最近目にするようになっているため、こうした自己負担をともなう改革は選挙戦ではマイナスに働きかねない。記載の有無はいろんな憶測を生むことにもなる。
そして、以前もご紹介したが、過剰な薬価差を是正するための手段の一つとして、クローバック制などの導入を検討することが明記された(参照:日本版クローバック制導入の可能性は?)。ただし、「購入主体別やカテゴリー別の取引価格の状況や過度な値引き要求等の詳細を調査した上」とのこと。おそらく、調剤薬局チェーンの規模などだけではなく、地域毎の薬価差の上限設定をすることになるのではないかと考えられる。なお、「取引主体が医療機関から薬局にシフト」という文言があるように、現時点では薬局を対象に考えられていると思われる。
詳細を調査した上、とあるようにこれからの検討に入ることになる。引き続き注視しておきたい。