令和5年11月17日、第565回中医協総会が開催され、診療報酬については不妊治療と歯科医療について議論された。ここでは、医療機関等との連携の観点に焦点を当てて歯科医療について確認したい。

歯科医療提供体制の考え方、課題についてまずは確認しておきたい。地域包括ケアシステムを構築するにあたっての役割と他職種との連携のポイントが見えてくる。歯科医医療の場合は、病院で歯科を標榜しているのは大規模病院や精神科、歯科病院が多く、中小病院や診療所、介護保険施設等では連携するにあたっては歯科診療所が主になる。




令和6年度の診療報酬改定では、「リハビリテーション、栄養管理及び口腔管理連携・推進」がキーワードになっていることはご存じの通りで、今回の歯科医療に関する議論でもこのキーワードがポイントになる。

参考)

骨太方針2023に記載された「リハビリテーション、栄養管理及び口腔管理連携・推進」を診療報酬で ①栄養・口腔管理の視点

骨太方針2023に記載された「リハビリテーション、栄養管理及び口腔管理連携・推進」を診療報酬で ②リハビリテーションの視点

在宅医療に関する診療報酬改定の議論、「量」と「質」のバランスに苦慮することに


回復期・慢性期医療における歯科医療との連携についてみてみると、回復期リハビリテーション病棟における歯科を標榜する病院の現況が報告され、これまでも本ブログでお伝えしてきた低栄養や摂食嚥下障害の患者が一定数いることから対応の必要性について伝えている。



そこで、歯科専門職種を含めたチーム医療が重要になってくる。回復期及び慢性期の病院での歯科の標榜を促すための取組も検討されていくことになるが、まずは現有戦力でできることを考えていくことが必要だ。そこで、現状を確認したところ病棟における栄養、リハビリテーション、口腔に関連する取組への歯科専門職の関わりは少なく、歯科標榜のない病院はさらに少ない状況であることが分かった。また病床機能別に急性期と回復期を比較すると、回復期のほうが歯科専門職が関与している割合は多いとのこと。歯科専門職の介入が栄養改善に効果が大いに期待できることから、歯科を有しない病院では歯科診療所との連携を評価することなど考えられそうだ。それは、回復期に限らず、慢性期においても。


医科歯科連携についても確認すると、こちらは周術期における口腔機能管理に関する評価があり、がん領域などでの連携が進み、歯科診療所も連携するケースが増えている。


今回の議論では、現状の周術期口腔機能管理では手術を行わない脳卒中患者を対象に加えることについての提案がなされている。予後を踏まえた急性期領域における医科歯科連携の推進としては重要な視点だといえる。


また、医科歯科連携においては糖尿病に関する連携の評価についても取り上げられている。令和6年度からの第8次医療計画にも糖尿病に関する医科歯科連携の必要性が明記されていることから、診療報酬上でも糖尿病患者の重症化予防の観点から後押しするべく糖尿病患者に対する歯周病治療や管理の評価が見直されることになるだろう。医科にとっても、歯科にとってもメリットもあり、患者にとっても重症化予防につながることなので、かかりつけ医(主治医)を中心とした連携の基盤整備を進めていきたいところ。


また、医科と歯科に加え、薬剤師も含めた医歯薬連携の在り方についても今回は議論されているところ。近年、口腔内に影響を及ぼす薬剤が多数あることがその理由。薬剤の副作用等の情報共有等に関する連携に関する評価など考えられる。なお、現状では診療情報連携共有料という医科と歯科による評価があるが、この中で副作用情報などを盛り込むことを明確にするなどの対応や、薬剤師による関与なども期待されるところだ。


令和6年度は介護報酬と障害福祉サービス報酬も同時改定となるが、歯科医療もそれらと密接にかかわると共に、地域で安心して生活を続けていくために重要な役割を果たす。

著しく歯科診療が困難な患者に対して初診や再診を行った場合に算定される歯科診療特別対応加算の対象について、現状では強度行動障害を有す患者などは対象となっていないことから、対象の拡大について検討する方針だ。また、障害児に関する歯科診療について、初診だけの加算ではなく再診も評価することや、医療的ケア児に関するが学校への情報提供などについても取り上げられている。



認知症を有する患者の歯科治療に関するかかりつけ医等との連携や医学管理料(歯科疾患管理料総合医療管理加算)への対象追加もしくは認知症患者の口腔管理に関する評価の新設の可能性ついても議論されている。



「リハビリテーション、栄養管理及び口腔管理連携・推進」を実現するには、多くの医療機関では歯科診療所等に協力を求めることになる。歯科医療機関に期待される役割を、医科医療機関・薬局・介護事業者・障害サービス事業者も理解して、患者にとっての最善となる診療報酬上の評価に結び付く連携の基盤作りが急がれる。

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