集約化に逆行しない高度急性期の整備と重症度、医療・看護必要度に関する見直しのポイント整理

11/09/2023

r6同時改定 急性期 経営 精神科 地域医療構想 働き方改革 入院医療

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  令和5年11月8日、第562回 中医協総会が開催され、入院・調剤・外来について議論された。それぞれの論点については、「【先出し論点確認】令和5年11月8日の中医協総会では、急性期入院・調剤・オンライン診療を議論」で紹介している。ここでは、入院について詳細を確認する。テーマは高度急性期・急性期入院医療の評価の見直しだ。

急性期入院医療に関する議論としては、高齢患者の急性期入院の対応と連携(下り搬送など)を軸に、重症度、医療・看護必要度の在り方を見直し、本来の急性期入院する患者像の明確化が検討されている。人口に占める高齢者割合の増加に伴い、急性期入院する患者も必然的に高齢患者割合が高まってきているのは当然のことだが、高齢患者の場合は複数の疾患を有しているケースが多いことや、介護保険施設等からの入院も多くあり、入院の長期化、そしてADLの低下、看護師の負担増など様々な問題が起きている。


今後も高齢患者割合は下がることはなく、急性期場面での高齢患者の対応が重要になってくる。看護補助者の手厚い配置や介護福祉士の配置の検討を進めることや休日リハビリテーションをはじめとするADLを維持向上するための支援、そして、リハビリテーションや栄養管理体制が整備されている回復期・慢性期への早期の連携をテーマにこれから本格的に議論されていくこととなる。

その一方で、急性期一般入院料1については、より高度な急性期への純化を目指していく方向性が今回の議論でも明確にされているようだ。実際に急性期一般入院料1とそれ以外の急性期一般入院料の病棟に入院する患者の傾向は異なり、明らかに急性期一般入院料1の病棟に入院する患者の医療依存度が高く、専門的治療や手術を必要としているケースが多い。



先の財政制度審議会の中で、急性期一般入院料1のみを急性期として、それ以外は回復期としていくことなどの考えが示されたが(参照:財務省・秋の建議に向けた議論を開始。診療所・病院・薬局別に注目ポイントを確認します。)、その考え方に緩やかに沿っていくように現在の中医協では急性期一般入院料1の急性期への純化が進んでいるように感じる。
とりわけ、急性期一般入院料1には医療依存度の高い患者がより集約していくように、重症度、医療・看護必要度の見直しが進んでいく。今回の見直しのポイントは以下の通りだ。


・救急搬送後の入院について、重症とされる入院期間を短くする?
・注射薬剤3種類以上の重症とされる入院期間を短くする?注射薬剤の内容で判定する?

以上の2点は高齢患者の長期入院を適正化することや、病床稼働率向上を促し、病床の適正化を進めようとするものといえる。
また、早期に経口摂取に移行できるように院内での連携を推進していくことのメリットが提示され、栄養管理・改善の取組と合わせた対応の必要性を求めているといえる。




・呼吸ケアと創傷処置の項目について、ⅠとⅡでの該当患者割合や実施割合に差があることから、評価基準を統一する?
・創傷処置について、重度褥瘡処置割合が上昇している傾向を踏まえ、評価基準を設ける?

必要度Ⅱへの一本化(統一)も検討される可能性があることを意識しておきたい。看護師の負担軽減にもつながるし、医療DXの推進とも関係するといえるだろう。



・抗悪性腫瘍剤の使用について、外来での実施割合が高い薬剤/入院での実施割合が低い薬剤を使用している場合は、点数の対象外とする?

化学療法については、第四期医療費適正化計画において、入院から外来へ移行を促すものとして具体的に挙げられているものでもある点に注意しておきたい。なお、医療費適正化計画では、白内障手術についても外来への移行を促すものとして挙げられていることから、短期滞在手術等基本料に該当する手術等の扱いには注意が必要だろう。




・B項目を急性期一般入院料1では削除?
・C項目は現状に即して適宜見直し

また、平均在院日数の見直し(2日短縮?)と重症患者割合についても見直しの可能性が十分に考えられるだろう。これまでの議論を改めて振り返り、論点となっていたポイントを確認しておきたい。

参考)

高度急性期の新たな評価として、前回改定で新設された急性期充実体制加算についても現状分析され、今後の議論の方向性が確認されている。特に注目したいのは、総合入院体制加算とのすみ分け、そして300床未満病院で急性期充実体制加算を算定する場合について。


急性期充実体制加算のほとんどは総合入院体制加算からの移行だが、移行に伴って精神科入院の対応が要件にないことからやめてしまった病院があることが示されている。急性期充実体制加算を算定する病院のほとんどは地域の基幹病院としての役割を担っていることから、地域に与える影響は大きくなると懸念されるため、何らかの対応が必要になるだろう。これは、300床未満病院で急性期充実体制加算を届出る病院においても同様で、同一地域内に急性期充実体制加算を算定する病院があるケースがあり、専門医療や医師等の集約化に逆行してしまうことも起こりうる。だからと言って、安易に現在届出をしている医療機関に対して医取り下げることを要請するようなことはないだろうが、地域医療構想調整会議などの協議の場での話し合いによる合意などを要件にしていくことなど考えられるのではないだろうか。それは、先に述べた診療科の維持も同様に。



重症度、医療・看護必要度の見直しにおいても話題に上がっていた外来化学療法だが、急性期充実体制加算を算定する病院において、入院での実施割合が高い病院が存在することが分かっている(参照:外来医療に関する評価の焦点① ~外来がん化学療法に関する医療費適正化の観点と地域経済に与える影響~)。そこで、外来での実施割合などを要件に加えることが本格的に検討されていくこととなりそうだが、診療科によっては外来での実施が難しいケースもあるため、診療科・領域別に差を設けることとなる可能性がある。


同様に、総合入院体制加算では大動脈バイパス手術等心臓手術に関する実績が求められているのに対して、急性期充実体制加算では求められていない。そこで、要件に加えることを検討することとなりそうだ。


ただ、こちらについても地域内で集約化に逆行しないように協議が必要だろうと考えられる。地域医療構想調整会議が地域医療の調整の場として機能することを個人的に期待したい。


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