かかりつけ医機能報告制度に向けた環境整備を診療報酬でどうやって進めていくか?

11/11/2023

r6同時改定 医療ICT 外来診療 患者 経営 地域医療構想 働き方改革 補助金

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  令和5年11月10日の第563回中医協総会の資料が公表されている。テーマは、入院時の食事・外来(慢性疾患とかかりつけ機能、DX)・入院(回復期領域)となっている。ここでは、外来についての資料を基に紹介したい。なお、入院については資料は公表されているものの、時間切れで次回以降の議論の場でとなっている。


私は、今回の診療報酬改定のテーマ・注目点(勝手に命名)を以下のように考えている。

・高齢患者の急性期入院からの連携

・外来腫瘍化学療法等の入院から外来への移行

・勤務医の働き方改革と薬剤師・管理栄養士の評価拡充、

・薬剤自己負担の見直し(市販類似薬、後発医薬品)と医介薬連携による服薬フォロー体制

・地域で取組むかかりつけ医機能の基盤整備

今回の中医協の議論は、「地域で取組むかかりつけ医機能の基盤整備」に該当するもの。入院医療の役割分担と適正化を目的とする地域医療構想は間もなく当面のゴールである2024年度末を迎えるが、病床数としては目標達成の見通しとなっている(機能分化はまだまだ)。単純に考えるとわかるが、入院医療が適正化されれば、療養の場所としての在宅や施設も選択肢となり、治療は通院が必要になってくる。実際に今回公表されている資料の中では、再診料・外来診療料の算定実績や通院患者数が示され、その傾向は明らかだ。



今後の地域医療構想は外来機能分化や紹介受診重点医療機関などを中心とした二次医療圏よりももう少し小規模なコミュニティ化がテーマになってくると思われる。令和7年度からのかかりつけ医機能報告制度の開始がその契機となる(参照:「かかりつけ医機能報告制度」、令和7年度からの開始に向けて議論が始まる)。令和6年度の診療報酬改定では、そうした外来機能分化、役割分担を強く意識した内容となると予想される。

今回の資料の中で紹介受診重点医療機関が930施設に達したことを伝えている。この紹介受診重点医療機関は病床数に関係なく、専門性とその実績で決まっていくもので、特定の医療機関に患者が集中することによる勤務医の負担を軽減する目的もある。紹介受診重点医療機関の持つ意味が地域住民にもっと周知されることが勤務医の働き方改革にもつながり、患者にとっての経済的にも最適な受診となることが期待されるところ。地域住民に周知する取り組みは診療報酬に関係なく必要だろう(参照:公表が続く「紹介受診重点医療機関」、確認しておきたい「連携強化診療情報提供料」の意味。)。


一方で、かかりつけ医機能については令和7年度に向けた下準備が必要と考えられる。これまでの診療報酬改定を巡る議論の中では、特に地域包括診療料/地域包括診療加算、そして機能強化加算について、介護事業者や介護支援専門員との連携を強化すること、具体的には地域ケア会議やサービス担当者会議への参加を要件化することなどが検討されてきているが、患者対応などを考えると、現実的には難しい。介護支援専門員との相談時間の確保やDXによる情報共有などによるこれまでよりも少し踏み込んだ関わりを持つことなどが限界のようにも感じる。

参考)

令和6年度診療報酬改定の注目点の一つ「外来」の議論がはじまった

外来医療に関する評価の焦点② ~かかりつけ医機能を地域で発揮する視点と診療の継続性向上に必要な患者の協力~

なお、DXについては今回の議論でもテーマの一つになっているが、電子カルテ普及促進として期待される補助「医療情報化支援基金」などが明らかになっていないものの、標準規格化される3文書(健診結果報告書については先送りされているので、当面は2文書)・6情報についての連携を推進していくべく、診療情報提供料はもちろんのこと検査・画像情報提供加算等においても標準規格に準拠したものなどとなることも考えられるだろう。先日公表された「デフレ完全脱却のための総合経済対策」に令和6年度診療報酬改定での対応が明記されている。



ところで、かかりつけ医機能として期待される役割の一つに緊急時などの時間外対応があげられるだろう。地域包括診療加算では選択要件の一つではあるが、時間外対応加算1-3が求められている(小児かかりつけ診療料では時間外対応加算3は含まれていない、参照:集約化が進む小児・周産期医療、かかりつけ機能と連携強化が課題に)ものの、近年の時間外対応加算の届出は横ばいの状況だ。そこで、注目を集めている診療前相談を外注化する事業があることに目を付け、時間外対応加算での評価に加えることについて厚生労働省から意見が求められている。



医師の負担軽減という観点では注目される事業だが、患者視点にたつと、できれば診療してくれる医師本人や当該施設のスタッフとのやりとりが安心だ。また、冷静に考えると、個人情報保護の観点からも難しい側面がある。魅力的な事業なのは間違いないが、もう少し実績や個人情報保護などのクリアすべき問題を整理してからの議論が妥当なように思われる。

かかりつけ医機能の必要性と整備は誰しもが認めることだが、そもそもの「かかりつけ医機能」の考え方がいろんな誤解を生んでいるのも確かなことだ。よく引き合いに出されるのが、特定疾患療養管理料と生活習慣病管理料だろう。地域包括診療加算等のかかりつけ医機能とはいわば24時間対応や健診や介護までを含めた医療機関単独の対応力・体制を評価するものといえる。令和7年度からのかかりつけ医機能方向は、こうした対応力・体制を分解して、地域内の医療機関で役割分担をするというもの。一方で、特定疾患療養管理料や生活習慣病管理料、さらに今回の議論で大きな話題となった外来管理加算が医師の診療技術を評価するものと言え、期待されることが異なっている。ただ、患者の視点に立つと、かかりつけ医機能の有る無しに関係なく、緊急時であれば特にすぐにでも診てもらいたいものだし、必要な時に療養計画書などの情報は欲しい。特定疾患療養管理料を算定する医療機関では時間外対応加算の届出が少ないなどの資料が提示されているが、本来の目的を考えると、無理に要件化することはあまりなじまないようにも考えられるし、患者への情報提供・周知が進み理解が深まることで、あとは患者が自ら受診先を選ぶことになるだろう。個人的には、とにかく地域住民に対する情報提供・周知を徹底し、患者が選べる環境を創っていくことが遠いようで近い解決策になると考える。



また、かかりつけ医機能等と特定疾患療養管理料等との併算定ができる現状について、厚生労働省から検討を促すメッセージがある点にも注目したい。先述したように、かかりつけ医機能とそれ以外の評価は目的や性格が異なることを考えると、現状のままでもよさそうにも思える。


ただ、地域包括診療加算と特定疾患療養管理料等とで対象となる疾患が重複している場合などでは適正化できる可能性もあるだろう。そのためにも、療養計画書の作成、患者への情報提供などの要件を統一していくことが必要になってくることも考えられる。

外来機能分化の推進、かかりつけ医機能の推進が今後の地域医療構想の重要なテーマであることは間違いないと思っている。入院医療の場合は、意識がない状態で搬送されてきたり、専門医等による専門的な判断で入院となることから、あまり地域住民・患者の意思は重要視されてきていなかった。しかし、外来の場合は地域住民・患者の意思は強く働くものとなる。いかに地域住民・患者にわかりやすく伝え、行動変容を促すか、診療報酬上でそうした流れを創り出すことができればと思う。


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