令和5年11月9日、第170回社会保障審議会 医療保険部会が開かれ、経過措置期間中の簡易なオンライン資格確認、入院時食事療養と後発医薬品のある長期収載品に関する議論等がおこなわれている。ここでは、患者自己負担につながる入院時食事療養費の見直しと後発医薬品のある長期収載品の見直しについて紹介する。
〇入院時食事療養費、経営努力だけでは病院も給食事業者も限界に
公定価格である入院時食事療養費は消費税増税時以外では価格はずっと据え置かれた状態が続いている。その一方で、特にここ最近は食材費や光熱水費の高騰、さらに人件費も高騰が続き、現状の公定価格ではカバーしきれない状態に陥っているともいえる。他業界だが、学校給食や社員食堂の運営などから撤退する事業者、最悪倒産する事業者も出てきており、単なる経営努力だけでは立ち行かない状況にもある。この経営努力には、過度な価格交渉の在り方についても考えて欲しい。チーム医療とよく言われるが、地域社会・住民・事業者も含めたチームと考え、近江商人の経営哲学として有名な「三方よし(売り手よし・買い手よし・世間よし)」の精神を意識してもらいたいと思うことがある。
なお、入院時食事療養費は患者負担分と保険者負担分で構成されており、患者負担該当部分を引き上げることになるだろう。今後、中医協において議論がおこなれることになる(11/10の中医協で議論されます)。なお、この患者自己負担だが、所得に応じてグレードがあるのだが、医療保険と介護保険では所得が低い患者・利用者に対する給付の考え方が異なっていることについても整理されていくことになりそうだ。
〇後発医薬品のある長期収載品、薬価差+後発医薬品使用時の3割を負担?
骨太方針2023にも記載のあった、長期収載品の在り方について、本年9月にも議論が行われていたところ(参照:これからの社会保険を巡る2つの課題と議論の行方~薬剤自己負担と10月からの年収の壁問題への支援策~)。市販類似薬に関する議論はまた改めてということになるだろうか。
資料では、後発医薬品があるものの先発医薬品を選ぶのは患者都合であることが多いこと、価格(自己負担)によっては後発医薬品への変更でも構わないという患者の声を根拠に、議論されている。
そこで、患者側からの声が多いことを理由に、長期収載品と後発医薬品の薬価差を「選定療養」として負担してもらい、さらに後発医薬品を使用した場合の自己負担3割分を選定療養費に乗せる形での患者自己負担が提案されている。
なお、薬価を巡る資料の中で、基礎的薬品の拡充や不採算品再算定の在り方についての要望が含まれている。
薬価を下支えするものであり、必要な医薬品を製造し続けられるような見直しも重要だと感じている。