在宅医療に関する診療報酬改定の議論、「量」と「質」のバランスに苦慮することに

10/05/2023

r6同時改定 栄養管理 患者 経営 在宅医療 地域医療構想 地域包括ケアシステム

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 令和5年10月4日、中央社会保険医療協議会 総会(第557回)が開催された。ようやく診療報酬改定の個別テーマを議論する第2ラウンドが始まった。テーマは在宅医療。資料を読み解き感じることは、在宅医療にも「適正化」が必要だと感じる側面がある一方で、地域によっては在宅医療の環境が整っていないところもあり、安易に「適正化」を推進することは在宅医療に取組む医療機関や地域住民にとって持続可能な経営と生活を脅かすことにもなりかねない。私自身、医師不足地域での業務に複数関わっているが、地域住民だけではなく、医療従事者の高齢化も進み、持続可能性の問題を抱えている。診療報酬では、総合入院体制加算で小児・産婦人科の診療科目の有無について地域の実状を踏まえて地域医療構想での了承が求められるものがあるように、在宅医療についても地域医療構想やこれから始まるかかりつけ医機能報告制度に関する協議の場などと連動した柔軟な診療報酬の設定など考えていくことが必要なように感じている。今回の議論では24時間の医療提供体制の在り方についても議論されているが、地域によるばらつきがあり場合によっては在宅療養支援診療所ではない診療所や一般病院が在宅医療まで担わねばならない状況にあることが分かっている。地域の実状に合わせ、在宅医療の環境整備が十分でない医療機関による在宅医療の提供に対する評価など柔軟な対応が必要だろう。そうしたことからも、「かかりつけ医機能報告制度」には大きな期待をしている。

ここからは、今回提示された資料を基に、次回改定のトレンドを確認していく。


〇訪問栄養食事指導を拡充するには?

「リハビリテーション、栄養管理及び口腔管理連携・推進」は在宅医療においても重要なテーマ(参照:骨太方針2023に記載された「リハビリテーション、栄養管理及び口腔管理連携・推進」を診療報酬で ①栄養・口腔管理の視点 ②リハビリテーションの視点)。在宅療養要介護高齢者には栄養障害・摂食嚥下障害をお持ちの方が多く、要介護度が高いほど多くなると報告されている。


しかしながら、栄養に関する在宅医療サービスである「在宅患者訪問栄養食事指導料」及び介護保険サービスである「居宅療養管理指導(管理栄養士によるもの)」の実績は非常に低い。そうした現状もあり、前々回の診療報酬改定では栄養ケア・ステーションや管理栄養士のいる医療機関との訪問栄養食事指導や外来栄養食事指導の契約を結び、実際にサービスを提供してもらうことで評価される仕組みがスタートしているが、その実績も残念ながら少ない。



そもそも、栄養ケア・ステーションに関する周知等が十分ではないことや実際の契約などの事務手続きなどが煩雑になっていることなどが利用拡大の障害になっているように感じられる。診療報酬点数の問題ではなく、栄養ケア・ステーションの利用や病院の管理栄養士との連携ができること、事務手続きの簡素化につながる要件設定による後押しが重要となるだろう。


〇病院をはじめとするステークホルダーとの連携の評価

在宅における緩和ケアや看取りについて議論されている。この議論で注目したいのが「人生の最終段階の医療・ケア」に関する情報共有。こうした意思決定に関する情報共有をしていることで、緩和ケアが必要とされた時の入院先や容態が急変した時の入院先も変わってくるとのこと。高齢患者の救急医療・急性期医療が今回の診療報酬改定では主要なテーマになっているが、そのテーマにも関わってくることだ。終末期に限らず、ACPについてもステークホルダー間で情報共有を図っていくことがその主要テーマの問題解決にもつながってくる。


連携ということでは「退院時共同指導料」も関わるもの。新型コロナ感染拡大の影響もあってか、直近では減少しているが、それまでは増加の傾向にあった。また、在宅における看取りに関する調査で訪問診療の提供がなく、14日以内の入院歴のある患者の情報を確認したところ、退院時共同指導料の算定割合が非常に低かったことが明らかになっている。また、こうした患者は短期間で死亡に至るケースが多いとも明らかにされている。



訪問診療の提供がないということもあり、かかりつけ医を持たない患者であったり、地域特有の事情もあったこともあるだろう。来年度からは内角も力を入れる「孤独・孤立対策推進法」がスタートする(参照:孤独・孤立対策推進法が成立~かかりつけ医機能・入退院支援部門を有する医療機関、特に薬局は注目を~)。自治体から医療機関に対しても強力を求めることも出てくるだろう。退院時共同指導料と入退院支援加算にも関連することになるだろうが、孤独・孤立対策の観点からも医療機関・行政と連携をしたアプローチを支援するような要件・評価となっていくことも考えられるのではないだろうか。


〇訪問診療・往診に対する「適正化」

訪問診療については一貫して算定回数は伸びているが、その内容に着目してみると、患者の状態、例えば要介護度が高かったり、認知症高齢者の日常生活自立度が悪化しているなど時間がかかっている傾向が見えること、また難病を有する患者と医療依存度の高い患者を対象とする包括的支援支援加算を算定する患者では往診頻度・看取り対応が多いことが明らかにされている。



入院医療での重症度、医療・看護必要度や療養病棟での医療区分で評価がかわるように、訪問診療においても対象患者の医療依存度に応じた点数設定など考えられそうだ。頻回訪問加算もあわせて、要介護度・認知症高齢者の日常生活自立度・主たる疾患などを軸に検討されるのではないだろうか。

また、月に2回以上の施設入居時医学総合管理料が増加していることや医師1人当たりの訪問診療料の算定回数が多いほど高齢者施設等に訪問している割合が高いことが示されている。



間接時間を考慮した効率的な在宅医療の提供とも言えるが、入居者の医療依存度がどうなのかが重要な視点となる。入居者に対する在宅医療を一律に下げるのではなく、医療依存度も確認した上での評価が求められるだろう。

また、訪問診療を行っていない医療機関による往診についても資料が提示されている。また、小児領域でも同様の資料と共に、往診翌日に受診をしている割合を見ると訪問診療をしている医療機関の割合が高いことが明らかになっている。




かかりつけ医の有無が影響している結果だといえる。かかりつけ医機能の有無で往診料に差を設けることなど考えられるのではないだろうか。ただ、在宅医療提供体制には地域差があることを念頭に置かなければならない。そう考えると、地域医療構想やこれからはじまるかかりつけ医機能報告制度を協議する場での調整と了承などを踏まえた評価の在り方が必要になってくるのではないだろうか。


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