訪問看護にも「適正化」と「負担軽減」の視点を

10/23/2023

r6同時改定 看護師 経営 在宅医療 精神科 地域包括ケアシステム 働き方改革 慢性期

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 令和5年10月20日、第560回 中央社会保険医療協議会 総会が開催された。この日は、医療・介護・障害福祉サービスの連携についても議論されている(参照:高齢者施設・障害者施設等・介護支援専門員への「超」接近を ~医療・介護・障害福祉サービスの連携の評価~)。ここでは、訪問看護について資料をもとに、今後の議論の方向性を確認してみる。


〇訪問看護にも「適正化」の視点

在宅医療に関するこれまでの議論(参照:在宅医療に関する診療報酬改定の議論、「量」と「質」のバランスに苦慮することに)からある程度推測されていはいたが、近年利用者数が増加している訪問看護においても適正化がキーワードになることは予想されていた。特に、訪問看護については営利法人による運営もあることから、場合によっては厳しい目が入ることも想像していた。実際、今回の議論では訪問看護の一月の請求額・緊急訪問看護加算の算定状況・複数名訪問看護加算・難病等複数回訪問看護加算で外れ値ともいえる高額な請求があったことが示された。





また、訪問診療に関する議論でもあったが施設へ訪問についても資料が提示されており、施設へのサービス提供が増加の傾向であることを示した上で、同一建物居住者に対するサービス提供について、介護保険と違い、医療保険では3人以上からが減算となること(介護保険では2人以上)について見直しの必要性の検討を促している。


また、精神科訪問看護においても「適正化」の視点が向けられている。具体的には、24時間対応体制加算や医療依存度の高い患者等の常時対応ができることを評価する特別管理加算の届出が少ないこと、精神科訪問看護の利用者割合が高いほどに医療依存度の高い患者の対応が少ないことが示された。



患者個別の事情もあることから、実際には必要があって密度の高いサービスを提供したり、地域性の問題もあり対応せざるを得ないケースも十分に考えられる。在宅医療の議論でも同様のことだが、あまりに厳格な「適正化」は在宅医療・訪問看護を委縮させてしまい、エンドユーザーである患者・家族に不利益となってしまう。慎重な議論が必要であり、場合によっては診療ではなく指導・監査による対応を優先して、診療報酬による対応はその後でもよいようにも個人的に感じる。

なお、「適正化」は厳しい要件を課すというものではない。現状に即して、正しく見直すということもである。そうした観点からは「退院当日の訪問看護」についての見直しが注目される。現状では、退院当日に複数会の訪問看護を行っていても1回のみの評価(退院指導加算)しかない。患者の状況によっては複数回の訪問が必要なケースもあることが示されていることから、一定の要件が設定された上での退院当日の複数回訪問が評価される可能性が高いといえるだろう。


〇訪問看護にも「負担軽減」の視点

24時間対応加算の届出は多くあるが、看護師(保健師も可)による対応が原則となっている。医療依存度の高い患者や在宅での看取りが増えていくことを考えると、充実が必要となり、そのためには看護師を多く採用することが必要となる。となると、看護師以外での対応を認めることや勤務間インターバルを取り入れるなどの負担軽減の取組みも重要になってくる。なお、実際の対応内容が資料で提示されているが、急を要すものは少なく、看護師以外での対応でも可能と思われるものもある。近年、訪問看護事業所では看護師以外の職種も増えている傾向にあるため、看護師以外での対応などでも可能とするなど考えられる。また、コールセンターの利用なども可能性としては考えられるだろう。


そして、負担軽減に取り組んでいる状況についても報告されており、訪問看護事業所における負担軽減に関する取り組みを積極的に評価していこうという考えが読み取れる。


合わせて確認しておきたいのが、機能強化型訪問看護ステーションの動向だ。実績を伴うものだが、訪問看護ステーションの大規模を評価し、24時間対応体制を後押しするものだ。近年、届出は増加の傾向だ。


こうした大規模訪問看護ステーションでの負担軽減はもちろんのこと、質を高めることからも看護協会による認定看護師や特定技能看護師の配置が望ましいとされ、増えてきている。今後、配置を要件とすることも考えられるだろうが、配置状況は70%はおろか、50%にも満たない。個人的な感覚だが、届出可能な医療機関が実際の届出が70%を超えた段階で加算などが廃止され、要件化されると思っている。現状ではまだ難しいのではないかと思うが、どうだろうか。


療養の場が病床から在宅へと移り、今後も需要が高まる訪問看護。介護報酬との整合性もとりながら、適正化と負担軽減、結果としての質の向上を目指して議論が進められていく。


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