令和5年10月27日、第169回 社会保障審議会医療保険部会が開催され、その中で令和6年度診療報酬改定の基本方針案が厚生労働省より提示され、議論された。
厚生労働省からは、基本的視点を考えるにあたって、次の4つの基本認識が示された。
〇物価高騰・賃金上昇、経営の状況、人材確保の必要性、患者負担・保険料負担の影響を踏まえた対応
〇全世代型社会保障の実現や、医療・介護・障害福祉サービスの連携強化、新興感染症等への対応など医療を取り巻く課題への対応
〇医療DXやイノベーションの推進等による質の高い医療の実現
〇社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和
特に人材確保の必要性については、「現下の食材料費をはじめとする物価高騰の状況、30年ぶりの高水準となる賃上げの状況などといった経済社会情勢は、医療分野におけるサービス提供や人材確保にも大きな影響を与えており、患者が必要とする医療が受けられるよう、機動的な対応が必要」との認識が示され、最終的に医療を必要とする地域住民・患者への影響が出ないようにする対応の必要性を説いている。また、制度そのものの持続可能性を堅持するための国民の制度に対する納得感を高めるための取組、すなわち現状の医療情勢や財政に対する理解を求め、かかりつけ医機能や紹介受診重点医療機関、薬剤費等の自己負担増や後発医薬品に対する理解・協力を求めるものとも見える。
基本認識を踏めた令和6年度診療報酬改定の基本的視点案を提示している。
個別に視点ごとのポイントを確認する。
視点1は先に述べた通り、人材確保。働き方改革の視点が、注目したい文言として、「特に医師、歯科医師、薬剤師及び看護師以外の医療従事者の賃金の平均は全産業平均を下回っており、また、このうち看護補助者については介護職員の平均よりも下回っていることに留意した対応が必要」というものがある。近年看護補助者の採用に苦戦していることはよく知られている(参照:診療報酬改定は働き方改革を推進できたのか?これからどうするのか?)が、あえて強調されている点に注目したい。
視点2は地域包括ケアシステムの推進のために、医療DXや外来機能・感染対策における平時と緊急時の連携などの環境整備の推進だ。ここまでの診療報酬改定の議論では高齢患者の急性期入院が大きく取り上げられているが、この視点2では「増加する高齢者急性期医療のニーズや地域医療構想等を踏まえた、患者の状態に応じた適切な医療資源を効率的に提供するための機能分化の推進」と表現され、盛り込まれる。当然ながら、入院だけではなく、退院後のフォローを通じた健康寿命延伸のための外来医療の役割分担まで記載されている。入院と外来、それぞれの役割分担と医療・介護・障害福祉の連携を積極的にICTなどを活用していくことを促す内容だ。また、新興感染症についても平時での連携の在り方などもキーワードになる。
視点3は物価高騰への対応の必要が大きく盛り込まれている。また、安心・安全というキーワードのもと、人生の最終段階に置かる医療の充実が盛り込まれると共に、周産期や小児、精神といった第8期医療計画における5疾病・6事業にある領域の対応の必要性について記載されている。「質の高いリハビリテーションの評価など、アウトカムにも着目した評価を推進」というリハビリテーションに対する成果の追求の文言が入っている点にも注目したい。
また、薬局に対しての対人業務の更なる評価拡充の可能性と病院薬剤師業務に対する評価の拡充について期待される文言もある。
視点4は医療制度の持続可能性を維持するための取組だ。安定供給に対する問題が尽きないものの、医療費抑制の観点と患者の経済的負担を軽減するためのバイオシミラーを含む後発医薬品の使用促進について記載されている。そして、長期収載品等の在り方、としては、先発医薬品と後発医薬品の薬価差を患者の自己負担とすることや市販類似薬の患者自己負担を引き上げることなどを念頭においたものといえる(参照:これからの社会保険を巡る2つの課題と議論の行方~薬剤自己負担と10月からの年収の壁問題への支援策~)。そして、リフィル処方箋の推進についても記載がある。市販類似薬の自己負担増やリフィル処方箋の推進は軽症者を中心に受診機会の減少につながることを意識しておくことが必要だ。また薬局においては、患者の経済状況や意識を鑑みて、処方薬以外の一般医薬品などの提案なども業務の中で取り入れていくことが必要になってくることもあるだろう。ただし、それは患者・家族だけではなく、処方する医師との連携も重要であり、医師の負担軽減への協力と必要に応じた受診勧奨の実施が必須になるだろう。