令和5年9月29日、第8回 入院・外来医療等の調査・評価分科会が開催れ、診療報酬改定に向けて、働き方改革・入院医療(地域包括ケア病床、慢性期病床)・横断事項について議論された。ここでは、働き方改革についてポイントを確認する。
チーム医療の評価、医師事務作業補助者や看護補助者に対する評価、情報通信機器を用いたカンファレンスなど、診療報酬では勤務医をはじめとする医療従事者の働き方改革に資する取組を評価している。こうした取り組みは実際に効果があったのか、勤務医についてみると決して効果があったとは言い難い結果が出ている。
近年はICTの活用なども有効と言われているが、医療機関においては積極的に導入は検討され、進んでいるように見える一方で、約2割の病院ではコストを懸念して導入に前向きとは言えない状況だ。ICTは投資(診療報酬等で後々回収できる)ではなくコスト的要素がまだ強いとも言えることが原因といえる。間接的にでも診療報酬上で評価、もしくは要件に加えらえれるような取組があってもよいかもしれない。
医師の負担軽減の取組についても調査されており、薬剤師や医師事務補助作業者の活躍が効果的であることが分かる。また、院内での複数主治医制なども最近よく聞く取り組みだ。
薬剤師については、第8期医療計画から薬剤師の偏在解消に向けた取組もスタートすることも合わせて確認しておきたい(参照:対人業務の比重が高まる薬局経営、次回改定に向けた議論の論点整理が行われる)。医師の負担軽減にも役立っていることを考えると、現状では手薄な病棟での配置となっているが、次回診療報酬改定では病棟薬剤業務実施加算等での手厚い評価など期待される。
また、後発医薬品使用促進の一環でのフォーミュラリの作成や外来待ち時間を利用した薬剤師外来、院外からの疑義照会の対応を病院薬剤師が行う院内疑義照会簡素化プロトコールなど、薬剤師に対する評価の可能性が注目されていることも合わせて確認しておこう(参照:骨太方針2021に基づき、フォーミュラリガイドラインが示される)。
働き方改革に関する診療報酬の中で特に好評を得ているのが医師事務作業補助体制加算だ。改定の都度評価をあげ、前回改定からは医師事務作業補助者の業務品質向上・定着にまで踏み込んだ内容となった。その効果といえるのか、医師事務作業補助者に対する人事考課や院内での研修の実施など取組が多くなっていることがわかる。
今後は、医師事務作業補助者の業務品質に対する評価であったり、医療機関として業務品質向上に対する支援を評価する内容など期待されるところだ。しかしながら、医師事務作業補助体制加算には、救急医療や全身麻酔手術に関する実績が求めらるものであり、算定したくともなかなかできない医療機関も多くある。今後、地域包括ケア病棟では医療依存度の高い高齢患者が増えてくることや、回復期リハビリテーション病棟や療養病棟においても、急性期病院の平均在院日数の短縮化に伴い従来以上に医療依存度の高い患者が転院してくるケースが増えることを考えると、働き方改革に効果があることが分かっている医師事務作業補助者の配置は重要になってくる。業務品質の向上と共に、算定対象が拡充できるような要件の緩和や病床機能に応じた要件の設定など考えられるのではないだろうか。
ところで、救急医療の実績が高い病院ほど勤務医の負担が重いことから設定された地域医療体制確保加算についてみると、算定する病院は増加している。しかし、冷静に考えてみると、令和6年度からはじまる勤務医の働き方改革で地域医療体制確保加算がはたしてきた役割は終えることも考えられなくはない。高額な点数なだけに、高度急性期病院等にとっては次回診療報酬改定での隠れた注目点だともいえるが、現在算定ができない病院では診療報酬が得られず環境整備に必要な投資や処遇改善が難しく、働き方改革が進められていないとも考えられる。また中小病院では医師派遣の問題もあるだろう。
今後は救急の実績要件を満たせずとも、地域医療を支える病院に対する評価の在り方など検討されていくことも考えられるのではないだろうか。
なお、高度急性期における勤務医の負担軽減については、特定集中治療室における医師の配置・勤務の見直し、手術・処置の時間外加算における勤務間インターバルの強化をどうするか、といったテーマが話題に上がっている。
勤務医の負担軽減と同様に、看護師の負担軽減も重要なテーマだ。特に、人口に占める高齢者割合の増加で高度急性期・急性期においても入院患者の多くは高齢者となっている。そのため、従来のケア以外にも、食事介助などが必要なケースも増え、負担が重くなってきている。看護師の負担軽減への対応策については、病棟クラークの配置や看護補助者や薬剤師の配置などやはり他者との役割分担・連携がキーワードとなっており、看護師だけではなく看護補助者などの人材確保が重要だ。しかしながら、看護補助加算(回復期・慢性期)の届出は減少傾向にある(急性期看護補助体制加算は増加傾向)。介護保険事業者の場合は介護報酬で処遇改善加算などあること、インバウンド需要の回復で宿泊施設と採用競争になっていることなども遠からず原因となっていることだろう。
なお、前回改定で新設された看護職員及び看護補助者との協働で行う業務などのための研修を実施するなど看護補助者が活躍できる環境を整備する「看護補助充実体制加算」は低調だ。採用・定着化にも関わること、さらにキュアよりもケアの比重が高い地域一般を含む回復期・慢性期の病床での要件の在り方など注目していきたい。
地域医療構想の推進は、高度急性期の集約を促すことになり、医師・看護師は高度急性期・急性期での負担軽減が喫緊の課題となっている。医師事務作業補助者・急性期看護補助者・薬剤師などとの役割分担・協働を促す環境整備となる評価が必要だ。一方で、回復期では高齢患者の救急も求められ、慢性期では急性期入院医療の早期退院の促進で医療依存度の高い患者の受入れが増えてくるなど、やはり職員の負担軽減・協働を促す評価が必要だ。それぞれの病床の機能や患者層に合わせた要件・点数の設定の可能性なども含めて、今後の議論を注視していきたい。