白書とは現況を確認し、今後の見通しをまとめたもの。提言等があるわけではないが、どういった課題認識を持ち、どこに対応が必要かをやんわりと伝えてくれる。そのため、これから1年間かけて、厚生労働省がどういった取組に重きを置こうとしているのか、様々な施策の背景には今回の白書にある課題認識があるのかがわかる。
令和5年版厚生労働白書は、「つながりと支えあいのある地域共生社会」がテーマになっている。新型コロナ感染拡大が孤独化・孤立化をさらに促す一方で、デジタル化の推進など新しい技術・サービスも開発され、孤独・孤立に対する定義や社会の人々の意識も変わってきているように感じる(参照:孤独・孤立対策推進法が成立~かかりつけ医機能・入退院支援部門を有する医療機関、特に薬局は注目を~)。以前ご紹介した障害者白書の中でも(参照:障害者に対する”合理的配慮”をすべての事業者に義務化)、ここ10年で障害者に対する人々の意識・考え方は大きく変わっていることからも、時代の流れに合わせて制度も見直していかなければいけないし、より「個」に対応できる柔軟性・バラエティが必要だ。今回の白書は、そうした今後の厚生労働行政の進め方を提示してるような内容にも思えた。
全国で34法人設立されている労働者協同組合など、新しい働き方・集いの場として期待されているが、その事例など掲載されている。「受動型」から「能動型」へ、そこになければ創り出す、という発想が大事だ。
参照)
地域包括ケアシステム/地域共生社会創りに活かせるか、「労働者協同組合法」が令和4年10月1日より施行
また白書の第2部では、地域医療構想や障害者施策への取り組みと現状をわかりやすく解説している。診療報酬改定など、どうしても目新しい情報にばかり目が行きがちだが、改めて基本に立ち返って、自身の知識などの足場固めとしてこの夏に白書をしっかり読みこみ、これからの時代に備えたい。