院内でのポリファーマシー対策は院内の専門医療チームとの連携で効率的に。地域では地域ポリファーマシーコディネーターを定め、患者個別に薬剤調整支援者による対応を

7/23/2024

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 令和6年7月22日、厚生労働省のホームページ上で、「「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」及び 「地域における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」について」の通知発出について、が公表された。ポリファーマーシーとは多剤投与それ自体を意味するのではなく「それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランスの低下等の問題につながる状態」をいう。これまで、厚生労働省の⾼齢者医薬品適正使⽤検討会にて、病院及びその種類に応じたポリファーマシー対策の指針や手順書が作成され、公表されてきた。今回公表されている資料では、病院内から地域へと対象を大きくひろげた取り組み方について手順を示している。


〇病院内での取組について

令和6年度診療報酬改定では、ポリファーマーシーへの取り組みを評価する「薬剤総合評価調整加算」の要件が緩和された。これまで必須とされていたカンファレンスを必須としないこととなった。そこで、院内での手順書等を整備することが要件に加えられ、多職種連携の強化の徹底が重要となる。


今回公表された資料では、この薬剤総合評価調整加算の算定に向けた手引きのようになっている。ポイントは、「病棟横断的な専門医療チームのほか、入院前支援チーム、退院支援チームなどの活動に、各医療チームに関連したポリファーマシー対策の視点を加えると、チーム活動とポリファーマシー対策の成果が有機的に結びつき、ポリファーマシー対策を効率的かつ効果的に行うことができる」ということだ。また、「既存の病院内の会議での検討事項にポリファーマシーの視点を加える方法」についても言及している。なお、「各医療チームに関連したポリファーマシー対策の視点を加える」ということについて、資料ではNST(栄養サポートチーム)との連携を事例に「ポリファーマシーによって食欲低下や嚥下障害が起きている場合、ポリファーマシーの解消によりこれらの問題点が解消されることで栄養状態の改善につながる」と紹介している。




また、退院後のフォローアップについても地域医療連携室を活用した地域を挙げたポリファーマシー対策を実現していくために、地域連携室に担当の薬剤師を配置する又は助言することを勧めている。

とはいえ、病院でよく聞かれるのは院内の薬剤師不足の問題だ。そうした問題に対して、次のような3つの対応策を提案している。

・全ての薬剤師が対応するのではなく、対応可能な薬剤師が取り組む。

・対応可能な薬剤師が増えるよう、業務効率化に資するテンプレートを作成・活用する。

・対象とする年齢や薬剤数を限定して対象患者数が多くなりすぎないようにする。 

また、オンライン資格確認の基盤を活用した電子処方箋の処方・調剤情報の運用が開始されていることから、「電子処方箋やマイナポータルと連携した電子版お薬手帳などにより薬剤情報を電子的・一元的に管理する方法も活用しながら、患者の処方状況を正確に把握する」といったDXの活用もポイントとして提案している。 

調剤報酬には「服薬情報等提供料3」という項目がある。入院予定患者の持参薬の調整・確認・病院への報告や複数の医療機関で処方された医薬品を一つの薬局で整理・管理・処方元に報告するものだ(参照:医療資源が限られた地域こそ、連携を通じた働き方改革・負担の分散を~診療報酬・調剤報酬にみる連携と負担軽減の評価を再確認~)。評価されるのは薬局だが、医療機関としては薬剤師の持参薬確認などの負担軽減につながり、院内でのポリファーマシー対策のための時間を創出し、医療機関の収入増にもつなげることができる。病院の中だけでなんとかしよう、と考えず、病院の外にも目を向け、協力を得ることで時間を創出する視点が大切だ。


〇地域で取り組むポリファーマシー対策

退院後もポリファーマシー対策を継続していくための仕組みを構築することで、再発・再入院を予防し、間接的に医師をはじめとする医療従事者の負担軽減につながる。ゆえに、重症予防とは働き方改革につながるという視点がまずは必要だ。

今回公表された資料では、地域を挙げて取り組む手順ばかりではなく、モニタリングについてまで記載されているのが特徴だ。その中で注目されるキーワードが「地域ポリファーマシーコーディネーター 」と「薬剤調整支援者」という、いわば地域におけるポリファーマシー対策の推進者を定めることを推奨している点だ。なお、制度化しているものでも資格でもない。ただ、今後の診療報酬改定・調剤報酬改定において、ポリファーマシー対策の評価に何らかの影響や可能性を感じさせる。なお、「地域ポリファーマシーコーディネーター」とは、地域全体を俯瞰してみて対策を進める担当者(地域の中核病院の連携室の医療従事者や薬剤師会に所属する薬剤師)、「薬剤調整支援者」は患者個別に対応する実務者(かかりつけ医やかかりつけ薬剤師など?)という位置づけだ。



第4期医療費適正化計画においても、重複投薬の解消などはテーマとして挙げられており(参照:医療資源の投入量に差がある医療(外来化学療法やリフィル処方箋)を適正化~第4期医療費適正化計画、審議会で了承~)、フォーミュラリの活用も地域での活用まで広げることを目標にしている(参照:骨太方針2021に基づき、フォーミュラリガイドラインが示される)。病院内で行ったことを、地域でも継続して行える、まさに病棟・外来・在宅の一元化のような取組の推進が特に中核病院には期待され、その実行役となるかかりつけ医とかかりつけ薬局・薬剤師の役割が期待される。

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