令和5年4月1日からは働き方改革関連法案の見直しの一環として、月60時間を超える時間外労働について法定割増賃金率が50%以上となる。もともとは、労働基準法で法定割増賃金率は月60時間以内の時間外労働について25%以上、月60時間を超える時間外労働について50%以上とすることが定められていたが、中小企業においては、月60時間を超えても割増率は25%と猶予されていたもの。労働時間の適正把握と共に、業務内容の確認と整理を行い、必要に応じて業務分担と代替休暇の取得ができる環境整備(労使協定の締結)を進めておく必要がある。
また女性が活躍する場の多い医療業界だが、他の業界に目を移してみるとまだまだ女性が活躍する場は限られていると共に、男性従業員との賃金格差もあるといわれている。そこで、令和4年7月8日、2016年から施行されている「女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)」を改正し、常時雇用する社員が301人以上の事業者は、従来から公表することとされていた「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績」「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績」に加え、「男女の賃金の差異」を公表することとなった。なお、101人以上300人以下の事業者についても、図にある16項目の中から1項目以上の情報公表が義務付けられた。
参照)医療・介護業界にも求められる女性活躍推進法の改正への対応~世界にも目を向けたこれからの職場環境整備の標準~
この公表については、施行後に最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度の開始後おおむね3か月以内に公表することになっているため、令和5年4月以降対応が求められる事業者が多くなると思われる。従業員100人以下であれば公表する必要はないが、制度成立から対象が拡大していることや人口減少と労働力不足、そして家計の負担を軽減する上でも女性の社会進出は今後も必要なことであることから、対象外ではあっても積極的に集計・公表していくことは労働力確保の観点からも必要になってくるだろう。医療機関や介護事業所においては、賃金格差に関する情報はもとより、管理職に占める女性の割合や平均残業時間などを公表できるような体制を作り、公表することが新たな職員採用・確保にもつながることとなるだろう。女性の活躍推進企業データベースに掲載されている実例などを参考にした取組が期待されるところだ。