令和5年3月22日、中医協総会が開催され、令和4年度診療報酬改定結果検証部会からの報告があった。今回の報告は、特別調査全10項目のうちの「在宅医療、在宅歯科医療、在宅訪問薬剤管理及び訪問看護の実施状況調査 」「精神医療等の実施状況調査」「リフィル処方箋の実施状況調査」「後発医薬品の使用促進策の影響及び実施状況調査」「明細書無料発行に関する実施状況調査 」の5つ。ここでは、リフィル処方箋に関する調査結果についてみていきたい。
調査対象は、全国の病院のうちリフィル処方箋の発行実績の有無に応じて、500 件ずつ、計1000件を無作為に抽出されている(有効回答数:298施設)。 診療所についても、同様に、計1000件を無作為に抽出(有効回答数:306施設 )。そして、保険薬局のうち令和4年リフィル処方箋の受付実績の有無に応じて、250件ずつ、計500件を無作為に抽出されている(有効回答数:223件)。また、郵送とインターネットによる患者調査を実施(有効回答数:1,641件)。調査実施時期は、令和4年12 月から令和5年1月まで。
〇リフィル処方箋の発行の有無別にみた医療機関の傾向
病床種・病床規模別にリフィル処方箋の発行の有無を見てみると、200床を超える病院など規模の大きな病院での発行が多いことがわかる。ただ、一口に一般病床と言ってもその範囲は広く、高度急性期から回復期まである。200床を超える病院が多いということは急性期一般及び地域包括ケア病棟を有する病院といったところか。
また、外来医師数及び外来患者数別にリフィル処方箋の状況も調査されているが、外来医師数が多く、さらに患者数も多い医療機関ほどリフィル処方箋を発行していることがわかる。外来医師数が多いというのは、規模の大きな病院を意味しているともいえる。重症外来に時間を割くことや働き方改革の一環として、リフィル処方箋を利用する動きが出ているのではないかと考えられる。
〇リフィル処方箋を発行するのはどんな患者?
病院と診療所、いづれにおいてもかかりつけの患者に発行するケースが多い。医療機関もしくは医師と患者、双方の信頼関係があってこその利用なのだといえる。関係性のバロメーターなのかもしれない。ただ、あくまでも患者の病状が安定していること、服薬コンプライアンスレベルが高いこと、食事・運動療法など実践できることなどが前提だ。なので、私の場合はリフィル処方箋を進められても断ることになる可能性が高い(某大学病院に3か月処方の通院をしているが、そもそも処方箋のリフィルの個所に取り消し線がデフォルトで入っている)。
〇服薬フォローの状況は?
先の薬機法改正で「調剤時に限らず、必要に応じて」服薬フォローをすることが薬局薬剤師には義務となっている。また、薬局薬剤師による服薬フォローを評価する「服薬情報等提供料1・2」がある。診療・検査の機会が減るリフィル処方箋を利用する患者は「必要に応じて」に該当する患者だと考えられるが、トレーシングレポートを活用した医療機関への情報提供は残念ながら低調のようだ。
トレーシングレポートの状況からもわかるが、薬局薬剤師による受診勧奨の件数も少ない。病状が安定したから、ともいえるのかもしれないが、気になる結果ではある。
医療機関としては、服薬状況だけではなく、バイタル情報も欲しいとの希望がある。海外のリフィル処方箋では、薬局で血糖検査や血圧測定した上で受診の判断をすることがあると聞く。今後は、薬局におけるバイタルチェックなどを求めることを要件とすることも考えられるかもしれない。
〇リフィル処方箋を発行した利用・発行しなかった理由
病院では病状が安定していたという理由が最も高い一方で、診療所では患者からの求めがあったからというのが最も高い。病院の場合は先にご紹介したように、200床以上病院が多く、逆紹介をしたくとも応じない患者や働き方改革の観点から医師から勧められているのかもしれない。診療所の場合は、年配の方も多めで、より身近で率直に話しやすい関係性にあるからかもしれない。発行しなかった理由は、長期処方で十分と考えていること、そして患者の希望がないといったものが多かった。
上記の状況を受け、今後積極的に推進する多くの医療機関では医師の負担軽減につながることを理由に挙げている。一方で、消極的な医療機関では患者の症状の変化に気づきにくくなることを最も多く挙げている。
長期処方とリフィル処方の違いを考えると、長期処方は次の診療まで医療従事者と会うことはないが、リフィル処方箋の場合は次の診療までに薬局で薬剤師に最大3回は顔をあわせる。受診勧奨の機会もある。リフィル処方箋を推進していくには、医療機関からの薬局に対する信頼感が重要に感じる。
〇患者はなぜリフィル処方箋を利用しないのか?
今回の調査では患者意識も調査されている。リフィル処方箋をなぜ利用しないか、との問いにそもそも知らない、という声が多いことが改めてわかった。
患者はリフィル処方箋について、どういった期待(メリット)と不安(デメリット)を持っているのだろうか。メリットとしては、時間と医療費負担をあげている。デメリットとしては、医師による診療機会が減少することの不安が多い。一律にリフィル処方箋を進めるのではなく、患者の思いに寄り添っていくことが大事だ。ただ、最近の物価高等に伴う景気悪化で経済状況が厳しくなっている方もいる。診療を継続し、少なくとも服薬を継続するためには経済状況を鑑みた提案も今は必要な時期だろう。患者のプライバシーに十分配慮しながら、薬局薬剤師に服薬フォローを依頼することも合わせて行い、患者の不安を取り払うことが必要だ。
最後に、患者はどういった薬局で受け取りたいか、という調査に対して「かかりつけ薬剤師のいる薬局」と「自宅に近い薬局」をあげている。個人的に疑問に思うのは、患者はかかりつけ薬剤師を意識しているのだろうか、ということだ。ひょっとしたら、「かかりつけ薬剤師のいる薬局」と「自宅に近い薬局」は同義語なのではないか、と思ってしまった。
医療費適正化計画にもリフィル処方箋の推進は盛り込まれることとなる。今回の調査を見る限りにおいては、現状のルールでは医療機関と薬局との信頼関係を深めるにはまだ弱いものの、大規模病院を中心に働き方改革の推進で処方側として積極的に利用していきたい希望は少なからずある。リフィル処方箋とは、薬局薬剤師が服薬フォローを通じた受診勧奨ができることと医療機関への適切なフィードバックができることが推進のポインとだといえる。