令和5年3月22日の中医協総会で公表された令和4年度診療報酬改定結果検証の中から在宅医療・訪問看護等について、医療機関による在宅に焦点を当てて、個人的に感じたポイントを紹介する。
医療機関の調査対象は、在支診(1,000件)・在支病(600件)・訪問診療を行っている在宅療養後方支援病院と地域包括ケア病棟を有する病院(500件)・在医総管及び施設総管理の届出のある医療機関(400件)・訪問看護・指導体制充実加算の届出のある医療機関(153件)の計2,653件(有効回答数は515件、19.4%)。新型コロナの影響もあったことだと思うが、非常に低いといえる。
〇新設された「外来在宅共同指導料」は低調
外来版の退院時共同指導料として注目を集めた外来在宅共同指導料だが、結果を見る限りは低調といえる。合わせて、継続診療加算から単独で実施するものと地域で連携して往診対応する体制の2段階の評価に新しくなった在宅療養移行加算についても、低調といえる。特に、連携で対応する2の方は少ない。
なぜ、外来在宅共同指導料を算定しなかったのか、という調査が行われているが、指導料1(在宅医療を行う側)では対象となる紹介患者がなかった、という意見が、指導料2(患者を在宅医療機関に紹介する側)ではそもそもその点数のことを知らなかった、という意見が最も多くなっている。患者を紹介する側での認知度向上が鍵のようだ。ただ、今回については新型コロナの影響も大いに考えられるものと思われる。次回改定に向けて、本結果をどのように利用するのか、難しい。
在宅療養移行加算についても算定できない理由について調査しているが、24時間往診体制に課題があることが分かる。ここでも新型コロナの影響も考えられる一方で、医師の高齢化も影響しているのではないかと推測される。加算2の有効活用、地域によっては病院との積極的な連携などが必要になるのではないだろうか。
在宅医療におけるICTの活用についても調査されている。現在、情報通信機器を用いた診療を行っていない医療機関に対しての今後の意向について調査されているが、約6割の医療機関が情報通信機器の利用に消極的であることが分かっている。その理由としては、対面診療のメリット、そして患者が情報通信機器を使用できるかの不安などがあげられる。何が何でもオンラインで、というわけではないが、いわゆるD to P with Nなどによる利用も含めて、患者視点でオンラインを使える環境を作っていくことも必要なことかもしれない。
その一方で、医療・介護提供者側の連携ではICTの活用が積極的だ。診療場面は、五感を駆使するものであるから、対面が好まれるが、カンファレンス等は画面越しでも問題はないからだろうし、患者情報に関する万が一のセキュリティ問題も気にしているのかもしれないと感じられる。
〇ACP(人生会議)には温度差
診療報酬においても要件の一つに加えられることが増えてきたACP(人生会議)。在医総管等でも要件に加えられている。緊急受入れ等行うケースもあり、地域包括ケア病棟(地域包括ケア病棟でも要件になっている)を有するケースが多い在支病ではACPに対する備えができている割合は高い。しかし、在支診では約5割程度で、さらに在支診以外の診療所では0という状況だ。
在宅医療等の取組がない医療機関ではわからなくもないが、在支診でも半数程度という状況については、何らかの対応が必要となるのではないだろうか。なお、ACPと似た言葉に、LW(リヴィングウィル)というものがあるので、注意しておきたい(参考:ACP(アドバンス・ケア・プランニング)とLW(リビング・ウイル))。
〇訪問診療を受ける患者の傾向は?
循環器疾患、脳血管疾患の患者、次いで骨折患者が多いことが分かる。今後意識しておきたいのは、循環器疾患の終末期対応だろう。緩和ケア診療加算・外来緩和ケア管理料などでは、末期心不全も対象となっている。算定するためには所定の研修とも必要になるため、人材育成も含めて環境を作っていくことが必要だ。
新型コロナの影響もあり、今回の調査結果を次回の診療報酬改定の基礎資料とするか悩ましいところだと思われる。ただ、随所に新たにできた診療報酬項目について「知らなかった」といった声が散見されたところは注目されだろう。