令和6年度診療報酬改定に向けた本格的議論が始まる~医療DXの推進、そして診療報酬改定施行時期をどうする?~

4/27/2023

r6同時改定 医療ICT 経営 働き方改革

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 令和5年4月26日、中医協総会にて令和6年度診療報酬改定に向けた議論が始まった。今回のテーマは医療DX。この当日、国立社会保障・人口問題研究所より将来推計人口が公表され、これから50年間で3,000万人の人口が減ると試算された。


参考)

人手3割減でも成り立つ社会に 「将来推計人口」公表(日本経済新聞)

「将来推計人口」50年後の日本は8700万人に、2056年1億人割れ 出生率1・36に下方修正(産経新聞)


現政権による少子化対策が功を奏した、としても人口に影響を与えるには時間がかかる。効果が出るまでの間を、働き方改革で何とかつなぎとめると同時に、新たなビジネスチャンスを創出する、ということで様々な業界で取り組みが進んでいる。また、外国人の受入れを促進していくための施策も検討されている(「特定技能2号」大幅拡大へ 外国人労働者、永住に道 政府方針/朝日新聞・Yahoo!ニュース)が、簡単な話ではないと個人的に思う。低賃金の上に円安の日本では、外国人労働者の手取りは目減りするように見えるし、近隣諸国や欧米などでも人口減少進んでおり、同じように外国人労働者の受け入れなどに積極的で競争となってくる。果たして、今の状況のまま、しかもれ遅れ気味で挽回ができるか、相当な頑張りが政府と民間ともに必要だろう。

今回の中医協における医療DXに関する議論をはじめにもってきているのは、こうした労働力低下に伴う生産性向上に向けた課題に対する強い問題意識の表れだといえる。ここで、個人的に注目するポイントに焦点を当てて紹介したい。標準電子カルテやサイバーセキュリティ対策については、これまでご紹介してきたので、以下よりご参照を。

参考)

医療DXのこれからの工程表案、標準規格に対応した電子カルテの導入促進を明記

2023年6月以降の立入検査より「サイバーセキュリティ対策の確認」が実施される見通し


〇診療報酬改定施行時期を後ろ倒しへ

かねてより、診療報酬改定の答申・告示から実際の施行開始までの期間が短すぎるなどの指摘はあった。そのために、システム改修の期間が短くなり、ベンダなどに大きな負担がかかっていた。そこで今回は、診療報酬改定の議論の流れやタイムラインはそのままに、改定後の施行時期を後ろ倒ししようという話になってきている。


ベンダにとっても、医療機関にとっても負担が軽減されると共に、新たな診療報酬への対応の時間的猶予ができるため、逸失利益を低減できる可能性がある。ただ一方で気になるのは、薬価改定との兼ね合いだ。現在薬価改定は毎年行われ、国の予算編成においても薬価が調整弁のように使われている。その良し悪しについて改めて整理してお伝えしたいと思うが、診療報酬改定時期の変更に合わせて薬価改定も後ろ倒しにすると、国としても期待してた予算や医療費抑制へのインパクトが薄れてしまう。医療機関では包括評価が拡充していることもあるので、診療報酬改定と一緒に実施するというのが自然なようにも考えられるが、薬局ではまた事情も異なってくる。なお、薬価改定を巡る議論ではクローバック制について検討されていることも合わせてお伝えしておきたい。クローバック制とは購買益が一定金額以上になった場合に薬剤費の一部を政府に強制的に返還するもの。海外などでは薬局との取引に限定して実施されているケースがあり、日本でも薬局との取引での導入可能性が検討されている。5月下旬あたりに大まかな報告性は出る予定だ。次回改定に向けては、薬価改定の動向も合わせてみておきたいところだ。


〇電子版お薬手帳をもっと有効に。将来的な評価可能性も。

本年1月から開始されている電子処方箋だが、出足は低調だ。しかしながら、処方段階や服薬指導時の多剤投与等の検知に大きな成果が出ていることが確認されている。また、来年度からの医療費適正化計画では、ポリファーマシー対策の一環としての電子処方箋尾導入促進がうたわれていることから、診療報酬・調剤報酬上での評価が期待されるところだ。ポリオファーマシー対策の実施や実績を要件に加算を設けるなど可能性としては十分考えられる。また、今回の議論では電子版お薬手帳についても検討されている。多くの企業でも提供されている電子版お薬手帳だが、マイナ保険証に紐づけられている処方の情報や医薬品の安全性情報へのアクセスできる仕組みなどを実装できるようにするための今後の計画など示されている。


先日ご紹介した本ブログでは、介護施設等における薬剤管理についての議論をご紹介したがところ(参照:介護施設の医療ニーズ。地域包括ケア病棟への期待と地域全体での薬剤管理・ポリファーマシー対策)。次回改定からすぐに、ということは難しいだろうが、電子処方箋がある程度普及したところで、電子版お薬手帳に関する評価や電子処方箋やポリファーマシー対策関連項目での要件化の可能性は意識しておきたい。

今回の医療DXに関する論点については以下の通りまとめられている。診療報酬よりも補助金や助成金で対応することが望ましいではないか、という意見も確かにあるが、初期投資は補助金等で、実際の運用では診療報酬で、といった現在のオンライン資格確認体制の整備などの進め方が今後も続くと思われる。



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