人口減少「スピード」への対応が重要に~人口動態統計速報、そごう・西武問題などから感じ取ること~

9/03/2023

ニュース解説 経営 地域医療構想 地域包括ケアシステム 働き方改革

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※令和5年10月13日、修正しました。

 令和5年8月29日、厚生労働省より公表された人口動態統計速報が話題になっている。話題になっている理由は、上半期(1-6月)の出生数が2000年以降で最小(約37万人)になったことだ。上半期で出生数が40万人を割り込んだのが2年連続となり、出生数に影響を与える婚姻数も7.3%減少していることからこのままでいけば、年間で80万人の出生数も2年連続で割り込むという、統計を取り始めた1899年以降初となる見通しとなっている。


なお、現在の日本の人口は約1億2300万人。ピークとされるのが2008年の約1億2800万人。人口減少が進んでいるとはいえ、世界では12位の人口数だ。ちなみに、戦後となる1945年の人口は約7200万人で、戦後と比べて約5000万人多い。そして、国立社会保障・人口問題研究所による人口推計から、2045年の人口は約1億642万人とされている。これらの数字から今後のことを考えると、人口減少もさることながら人口減少のスピードの方が大きな問題であることに気づかされる。2018年まで緩やかに山登りをし、2019年から急斜面を駆け下りている、といえる。



緩やかな減少であれば、手の打ちようもある。例えば、現在国が力を入れる少子化対策など。少子化対策をしたとしても、産業政策などに対しての結果が出るのは早くとも20年先のことだし、そもそもうまくいくかどうかもわからないので、新しい施策を繰り返し繰り返し行っていくことが必要だ。また、急激な人口減少は産業競争力の低下につながる。昨今の日本の為替動向などからも感じられるが、そうした社会においては自国の通貨だけではなく、外貨も併せ持つことも必要だ。日本においても、外国人労働者の確保を強化していく上では、医療機関・介護事業者においても為替に対する対応も意識しておくことが必要になってくるのではないだろうか。

ところで、産業の側面でいえば、セブン&アイによるそごう・西武の売却問題(参照:セブン&アイ、そごう・西武売却 実質譲渡額は8500万円、日本経済新聞)の根本原因をみると、百貨店の苦境なども人口問題に関係するものだといえる。百貨店は人口増加に比例して売り上げを伸ばしてきたといういわば「待ちの営業」でやってこれた。では、その人口増加前の時代はどうだったかというと、サザエさんなどでも目にする三河屋さんのような御用聞きのいわば「行く営業」だ。医療に置き換えると、特定機能病院や紹介受診重点医療機関などは専門性も高く、同業者である医師や医療機関が選び紹介するのでこれからも「待ちの営業」でよいかもしれないが、かかりつけ医機能を有する医療機関等は在宅医療やオンライン診療といった診療の場所を選ばない「行く営業」への取組が重要になってくるのかもしれない。時代の変化を敏感に感じ取り、先手を打っていくことが医療・介護業界では重要だと常々感じている。医療・介護は地域密着のビジネスと言え、限られた地域の中で展開するビジネスは、とにかく一番に取組み、イメージを定着化させることが必要だ。医薬品などでもそうだが、医療・介護の業界では、とにかく一番に世に出していくことが、長期にわたっての先頭集団を走り続けることになるもの。

年金問題など度々問題視されるが、もともと年金は人口増加を前提している。年金に限った事ではないが、多くの施策は人口増加が前提となっている。緩やかな減少であれば、時間もあって方向転換の余裕もあるが、今はその余裕がない。皆保険・社会保障を現実社会で確実に守るためにも地域医療構想や働き方改革が急がれるのは急斜面を駆け下りる必要があるためだ。紹介受診重点医療機関、地域包括ケア病床、かかりつけ医機能などに期待される機能と役割、そして自院の地域における役割について、人口問題や他業界の話題を我が事と置き換えて、今後について考える時間を意識的に持っていくことも必要だ。

参照)

公表が続く「紹介受診重点医療機関」、確認しておきたい「連携強化診療情報提供料」の意味。

外来医療に関する評価の焦点② ~かかりつけ医機能を地域で発揮する視点と診療の継続性向上に必要な患者の協力~

健康寿命を3年延伸することと被用者保険の適用拡大が意味するところ


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