令和6年度の春の建議に向け、医師偏在対策・市販類似薬に関する自己負担割合の見直しなど提案へ

4/18/2024

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令和6年4月16日、財務省は財政制度等審議会 財政制度分科会を開催し、骨太方針2024に向けた提言となる「春の建議」に向けた議論が行われた。すでに多くのメディアデモ報道されているように、医師の偏在を解消するための施策として、地域別の診療報酬や都心部での開業規制などについて議論され、提案される見通しだ。医師偏在対策に以外にも注目しておきたい議論があるので、合わせて確認していきたい。


〇医師偏在対策について、「地域別診療報酬」と「開業規制」、「勤務医の開業抑制策」

具体的には、診療所が不足している地域の診療報酬を引上げ、診療所が過剰となっている地域の診療報酬を引き下げる、というもの。医療費適正化計画を推進するため、という明確な理由があれば法的根拠があるため、現状でも実現しようと思えばできるものだ(参照:医療費適正化に向けた議論を確認 ~後発医薬品の推進、入院から外来診療への移行の促進など~)。また、既にスタートしている外来医療計画の運用を厳格化することで、診療所の新規開業の抑制もしくは、当該地域で不足している機能を求めることもできる(参照:リスタートとなるか?外来医療計画 ~これからの新規開業、高額医療機器の導入で注意したい視点~)。このいずれも、都道府県知事の裁量によるところもあるため、地域医療構想の推進も含めて、知事の権限を強化することも議論されている。


実際に医師不測の地域での業務をよく行っている身としては、一見すると合理的に見えなくもないが、私は非常に注意が必要だと思う。確かに「今」は医師の偏在が大きな問題になっている。しかし、今後は決してそうとは言い切れない。人口は都心に集まってきていること、そしてこれから都心では65歳以上の人口が大きく伸びてくることを考えると、医師偏在対策は「現状」に対する緊急対応と「将来」に向けた中長期的な対応の2つの戦略が必要ではないかと考える。緊急対応が継続すれば、都心では診療所が少なくなり、病院での対応が中心となるものの、地域医療構想の進展で病床数は減少していることから、医療崩壊が起きてしまうかもしれない。「今」と「今後」の対応を分けて慎重に議論が必要だ。


また、医師偏在・負担軽減対策として勤務医が開業することを少しでも減らすための病院に対する診療報酬の適正化についても提案される見通しだ。地域によっては、病院が在宅医療やかかりつけ医機能を担う必要もある。診療所単独では困難なチーム医療によるアプローチもしやすいため、重症化対策などの主に医療依存度の高い患者に対する評価の拡充や、働き方改革に資する一連の取組のアップデートが期待される。


〇医薬品に関して ~地域フォーミュラリの取組はひと段落?市販類似品の負担も検討~

医薬品に関連するところで注目したいのは大きく3つ。まず医療費適正化の観点。おやっ、と思ったのがフォーミュラリについて、「これまでに取り組んできた主な事項」に記載されていること。診療報酬等による推進ということは特に記載はなく、むしろ、取組済み、と感じ取られる印象だ。



なお、医薬品取引に関してはフランスにおけるクローバック制に関する現況について紹介されている(参照:日本版クローバック制導入の可能性は?)。妥結率に関する届出は医薬品の取引状況を報告することが今回から始まるが、次回改定では、クローバック制を参考にした過度な薬価差を得ている医療機関・薬局に対する診療報酬・調剤報酬の減算などのペナルティにまで発展することになるか、今後の動向を注目しておきたい。

市販品類似薬に関する自己負担割合の在り方、薬事承認されている者の薬価収載されていない医薬品等に関する選定療養等の保険外併用療養制度の拡大活用なども議論されている。公的保険でカバーされる領域の縮小と自己責任・相応の負担を求める内容だ。




他にも、外来・在宅までを含めた新たな地域医療構想の推進の必要性、かかりつけ医機能報告制度における診療実績の収集と公表、生活保護受給者の国保への加入など、多くのテーマが掲げられている。骨太方針2024の議論と合わせて、注視していきたい。

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