毎年9月24~30日を「結核・呼吸器感染症予防週間」として、各地で啓発活動が行われている。令和8年9月27日は日曜日ということもあり、公開イベントなども行われたところだ。


参照:結核・呼吸器感染症予防週間(政府広報オンライン)


 予防接種と経営、地域医療連携をテーマにお話をさせていただく機会を頂戴し、医療関係者の皆様(主に開業医)に情報提供をさせていただいた。私が参加したイベントでの学びも含めて、概要をここではご紹介したい。



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主な予防接種の接種率と地域医療の課題解決の関係性

 厚生労働省で公表されている「インフルエンザ」「新型コロナウィルス」「結核」「高齢者用肺炎球菌」の定期の予防接種の実施率の3年間の推移を以下のようにグラフにした。


厚生労働省 定期の予防接種実施者数をもとにHCナレッジ合同会社にて作成


 新型コロナウィルスについては令和6年度から定期接種となっているが、対象者の約19%で実施されている。以降、年々実施率は下がっており、10%を割り込む可能性もある。高齢者用肺炎球菌の予防接種についても、令和6年度は大幅な減少となっていることが分かる。

 予防接種については、いろんな考えの方もいるので接種することを強制するものではないが、科学的な根拠も示されており、そのリスクについても明示されていることを理解していただき、防げる病気は防ぐ・重症化予防につなげる、ための行動を考えていただく機会をまずは作っていくことが必要だと感じている。




 防げる病気を防ぐことで、住民にとっての経済的負担及び身体的負担の軽減になることはもちろん、医療従事者や救急隊員にとっても負担軽減につながる。私自身、ここ3年くらいの間に病院から無床診療所に転換する医療機関や、人員不足で病棟を休床や閉鎖せざるを得ない場面を見ることがあった。人口減少に伴い、患者数減や医療従事者減などやむを得ない事情もある。こうした事態は各地で増えてくると思われる。ここで考えておきたいのは、入院を受け入れるキャパシティは減少する、ということだ。人口減少は進むが、高齢者の割合は高まることから、入院に至らないように、防げる病気は防ぐための予防接種を推進していくことがより重要になり、医療機関経営の観点からみると、予防接種は医療従事者の負担軽減にもつながるといえるだろう。




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かかりつけ医機能に期待される重症化予防、予防接種の推進

 かかりつけ医機能報告が本年1月より開始されているが、2号機能の報告の中には予防接種への取組状況の報告が求められている。また、診療報酬におけるかかりつけ医機能を評価する地域包括診療料/地域包括診療加算においても、予防接種の実施・相談対応が求められている。 




 慢性疾患の重症化を食い止めることがかかりつけ医機能を有する医療機関には求められることになっているが、新型コロナウィルス感染症などに罹患することで、致死率は上がることが分かっている。かかりつけ医機能としては、基礎疾患を有する患者への積極的な提案、相談対応が求められていることがよくわかる。




 人口減少が多くの地域で進んでいく、ということは、新たな患者を増やしていくのは難しい時代になっていく。そこで重要なのが、かかりつけ医機能を発揮して、受診頻度が下がっても通い続けでもらうことだ。そのためには通院している患者の加齢にあわせて、対応できることを定期的に検討していくことが必要だ。在宅医療や予防接種などがそれだ。

 入院医療の不足するキャパシティをカバーすること、継続受診率を維持・継続していくことは整合性がある。新たな地域医療構想においてもテーマになり得るのではないだろうか。


参照:令和8年度診療報酬改定後の現状と新たな地域医療構想の始まりを控えて



地域内の医療介護事業者同士だけではなく、異業種との連携で啓発活動を

 すでに基礎疾患を有している患者、入院している患者であれば医師や看護師から予防接種について直接的に情報提供をすることはできる。退院時サマリーなどで予防接種に関する履歴の情報や紹介先医療機関や介護施設での予防接種勧奨もできるだろう。難しいのは、受診しない地域住民に対する啓発活動だ。そもそも病気になっていないため、予防接種の必要性を感じていないことなど考えられる。そこで、受診していない住民へのアプローチの検討も重要だ。実際の経験や考えられることから、以下のアプローチなど効果が期待できそうだ。


【健診での広報】

健診の機会を利用して案内をする


【介護支援専門員からのアプローチ】

要介護認定を受けている利用者のケアプランの立案するなど、関係性が深いことから接種に至る可能性が期待できる


【郵便局等を利用した広報】

ゆうちょ銀行の口座を持っている高齢者が多く、オンライン診療受診施設として今後拡大する可能性がある

また、街中の電気屋さんなどでは、高齢者の自宅にあがって電球を交換することもあることから予防接種に関する情報提供のチャネルとしての可能性がある


【中小企業の経営者へのアプローチ】

中小企業では団塊の世代の皆さんの定年退職時期を迎え、新規採用に苦戦をしている。そのため、定年退職後も雇用延長で長く働いてもらうケースが増えている。さらに、健康で長く働いてもらうためにも、健診と予防接種を推奨していくことにメリットがある。保険者や商工会議所、自治体の中小企業支援窓口などを通じた広報など可能性がある


【その他】

・街の電気屋さん:高齢者が多い地域では、ご自宅に上がって電球の交換をすることなどもある


 予防接種対応ができる医療機関は医療情報ネット ナビイで確認できる。業種を超えた連携を通じて、住民・医療従事者の経済的・身体的負担の軽減を図り、結果としての医療費抑制と医療機関の経営の持続可能性を高めることにつながればと思う。