本年10月から、一部の後発医薬品のある長期収載品(特許の切れた先発医薬品)を希望する患者に対する選定療養(従来は認められていない混合診療について、患者本人が追加費用を負担することで医療保険適用外の治療を医療保険適用と併せて保険診療を受けることができる療養の種類の一つ)による一部自己負担を求める新たなルールがはじまる。対象となる長期収載品は1095品目に及ぶ。一般誌では、ヒルドイドが話題に上がっているが、中にはヒアルロン酸注射であったり、てんかん治療薬なども含まれている。
改めての確認だが、今回の新たなルールでは院内処方をする保険医療機関と保険薬局がその対象となる。ただし、入院中の患者については対象外だ。重要な視点としては、「医療上必要」があるかないか、ということ。端的にいえば、医療上必要があると判断される場合は、後発医薬品がある長期収載品で患者からの希望があっても全額保険給付となる。なお、後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、当該保険医療機関・薬局において後発医薬品の提供が困難であり、長期収載品を調剤せざるを得ない場合には、患者が希望して長期収載品を選択したことにはならないため、保険給付となる。
また処方の段階で医師が後発医薬品可としても、保険薬局の薬剤師において、患者が服用しにくい剤形である、長期収載品と後発医薬品で効能・効果等の差異がある等、後発医薬品では適切な服用等が困難であり、長期収載品を服用すべきと判断した場合には、医療上必要がある場合に該当することとなる。そのため、長期収載品を保険給付とすることを可能とする。また、当初患者が後発医薬品について希望していなかったものの、調剤時に選定療養について説明した結果、患者が後発医薬品を希望した場合に、後発医薬品を調剤し、保険給付とすることが可能だ。
実際の患者負担のイメージは以下の通り。こうした新たなルールが始まることで、長期収載品を処方し続けるケースについては、指摘が入りやすくなる可能性が考えられるところ、院内処方をしている医療機関においては、後発医薬品の整備もあることながら、説明など改めて確認しておきたい。
ところで、今回の新たなルールは、後発医薬品の使用促進を通じた医療費抑制策の一環ともいえるが、医療機関においては新たな悩みもある。
後発医薬品の安定供給についてはまだ課題もあり、そうした現場の混乱に対する医療機関の負担に対して、後発医薬品使用体制加算等の評価を引上げで対応している(後発医薬品調剤体制加算については据え置き)。しかし、本年4月の薬価改定が思わぬ影響を与えている。後発医薬品の使用について、数量割合で85%以上を達成しているものの、カットオフ値(全医薬品のうち、後発医薬品に置換可能な割合。後発医薬品+後発医薬品のある先発品/全医薬品で算出して、体制加算1であれば50%以上必要)の要件を満たすことが困難になっている状況をよく耳にする。
薬価改定により先発医薬品の価格が下がってしまい、後発医薬品と同額または下回る薬価の先発医薬品については計算対象から除外する、このルールが原因となっている(薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和6年4月17日適用))。置換のできる他の後発医薬品(AG、オートジェネリックなどへ)がないか、後発医薬品のある長期収載品への見直しなども含めて検討が必要になる。
後発医薬品の使用促進は経営的側面でも重要性を増しているといえる。