医師の偏在対策・外来診療の適正化など、春の建議を読み解く

5/26/2024

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令和6年5月21日、財政制度等審議会による「我が国の財政運営の進むべき方向」が財務大臣に答申された。毎年6月に閣議決定される骨太方針に対する提案ともいえるもので、通称「春の建議」といわれるもの。今回の春の建議で注目されるのは、医師の偏在対策にかなり踏み込んだ内容となっている点だといえる(参照:令和6年度の春の建議に向け、医師偏在対策・市販類似薬に関する自己負担割合の見直しなど提案へ)。来年度から始まるかかりつけ医機能報告制度も見据えた外来診療の在り方についても言及している。春の建議における医療関連の注目ポイントを簡単に確認しておきたい。

〇医師の偏在対策について
外来医療計画がはじまり、外来医師多数区域での新規開業に対する不足する医療サービスへの対応の要請などが行われてきているものの、開業件数は増加の一途をたどっている。その一方で、勤務医不足は顕著な状況が続く。そこで、勤務医に対する診療報酬上の評価の在り方について検討することを提案してる。この点については、特に地方都市においては、開業医の高齢化もあり24時間対応等が困難になっていることもあって、病院が在宅医療やかかりつけ医機能を担うケースもあることから、医療機関が地域で期待されている機能や役割を踏まえて医師を評価する仕組みが必要と私も感じている。


先に述べたように外来医療計画においては、医師多数区域での新規開業に対しては当該地域で不足する医療機能を担ってもらうように要請をすることができるものの、いわゆる開業規制といえるほどの強い効力はない。そこで、今回の春の建議では「新規開業規制」という強い表現で対応を迫っている。

合わせて、医師不足地域と過剰地域に診療報酬上の差を設ける(診療報酬の1点当たり単価に差をつける)ことを提案している。この点数の単価を変えることは現行ルールでも可能だ(参照:医療費適正化に向けた議論を確認 ~後発医薬品の推進、入院から外来診療への移行の促進など~)。しかしながら、長い目でみるとだが、地方都市は人口が減り、都心は人口が高止まりし、高齢化が進み、そのボリュームは大きくなる。要するに、都心部の方が医療のニーズは相対的に高くなる。医師の偏在対策については、入院医療のピークを迎える地域が多くなる2030年までの「今」行うべきことと、「将来」に向けて行うべきことを分けて考えることが必要だと思っている。

〇外来診療の適正化の視点
医師偏在対策にも関連することだが、来年度より始まるかかりつけ医機能報告制度に向けた提案もされている。地域医療構想が進展した結果、病床が減り、患者が療養する場が在宅・施設へと拡大された。そこで、病床の役割分担のように、外来診療についても役割分担を促そうというもの。



また、地域医療構想は今年度で当面のゴールを迎え、新たに2027年度から新たに地域医療構想がはじまる。現状の地域医療構想では、病床数は診療報酬改定による重症度、医療・看護必要度の度重なる見直しなどもあり、想定通りに減少することとなったが、役割分担についてはうまくいっているとは言い難い。今後、診療所も含めた地域医療構想のスタートを考えると、さらなるステークホルダーが増えることで実行力に疑問符が付く。そうしたこともあってか、地域医療構想における知事の権限強化がうたわれていることに注目したい。

〇セルフメディケーションの推進で患者自身の「自助」を
骨太方針2023において、長期収載品に関する扱いについて検討することとなり、いよいよ選定療養を用いた長期収載品の一部患者自己負担が始まる。市販類似医薬品についても、保険給付範囲を見直すことが次のテーマだ。



この見直しが実際に始まると、まず影響が出るのは後発医薬品メーカーだと考えられる。そもそもの受診頻度が下がることが考えられ、処方自体が減る。また、リフィル処方箋が浸透してくれば、OTCを扱う薬局の薬剤師によるOTCやサプリメントなどの提案などもあるだろう。OTCは先発医薬品メーカーがほとんど作っている。後発医薬品は処方があってこそ。後発医薬品メーカーの業界再編を促すことにつながると思われる。
また、薬局においてもOTCのラインナップや医師との連携が重要になってくる。ひょっとしたら、病状が安定している患者に関しては、医師よりも薬局薬剤師による管理の重みが増してくるようになるのかもしれない。健康サポート薬局などの意味合いに注目が集まる。


春の建議では、他にも医療機関の経営情報データベースにおける職種別給与情報の入力義務化や公立病院改革の推進、生活保護受給者を国保及び後期高齢者医療制度に加入させて医療費適正化の実行力を高めることなど提案されている。6月上旬に閣議決定される骨太方針2024にどういった影響を与えるのか、注目をしたい。

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